ユメのセカイ ー彼は毎晩少女(たち)のため戦うー

川内 進斗

プロローグ


 もしも誰かと同じ夢を見ることができたら、そんなことを考えたことはないだろうか?

 それが自分の好きな人だったら……古文では夢に出てきた人物は自分の事を想っている人だと言われている。

 

 もしも好きな人と毎晩同じ夢を見ることができたら……それは二人だけが生み出す物語となるだろう。

 実にロマンチックな話である。


 



 では、日本中の人が同じ夢を、それも毎晩見ていたとしたら……。

 それはもはやロマンを通り越して恐怖である。

 夢というものがもう一つ現実となるのだ。


 


 それはそれでいいじゃないかと前向きに考えられる人もいるかもしれない。

 逆にそんなことあるはずがない、と切り捨てる人もいるかもしれない。




 だが考えてほしい。

 あり得ないからこそ、本当に起きたとき、それは人間の神秘などでなく、“第三者によって意図的に作られた夢”であると考えることが妥当ではないか?


 


 自分の生きる世界が誰かに作られたものだと知り、恐怖しない者はいないだろう。


 


 勿論、その可能性に気付いた者に現実世界で何かしら行動を起こされれば、そんな夢という名のもう一つの世界は簡単に滅びる。





 では両世界の記憶が互いに引き継がれなかったらどうだろうか?

 夢というのは実に厄介である。

 見た夢の大抵のことは忘れてしまう。




 夢での出来事を現実では忘れ、現実での出来事を夢の中では忘れる。



 これはもう夢と現実、2つの世界は互いに干渉しない独立した世界だと言えるだろう。

 

 干渉しないのだからその間では何も問題は起こらない。

 幸せなことである。 


 ここで、互いに干渉しないなら創る意味ないじゃないか、と釘を刺されるかもしれない。

 

 確かにそれはそうだ。



 だが、考えてみると我々が生きている地球、はたや宇宙は何のために生まれたか?

 たぶん目的などないのではないか?


 ただ生まれたという結果があるだけ。



 …………きっとこの夢の世界の創造も、そんな宇宙や地球と同じだと思う。




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