可愛らしいチャットグループ名の下に隠された、悲痛な叫びと現実

Web小説では珍しい、非常に完成度の高い本格派ミステリ。

様々なベリーのハンドルネームを持つチャットのメンバー12人が、オフ会のため集ったペンションで殺人が起き、帰る手段も絶たれてしまう。
急遽本名の公開を取り止めたメンバーだったが、現場に残されたベリーの見立て通りに、次々と事件が起こっていく。

作中ではメンバーのニックネーム(ハンドルネームに非ず)しか明かされず、誰がどのベリーなのか分からないまま話が進む、というのが本作の肝です。
読み手は誰が誰なのかに想像を巡らせつつ、立て続けに起こる事件に直面していくことになります。

一見何の繋がりも見えないメンバーたちを繋ぐミッシング・リンクが、少しずつ解かれていく様には鳥肌が立ちました。
そして、謎が明かされた際には、その背景の理不尽さに思わず涙が滾り落ちてしまいました。

また、日本社会への問題提起という側面もこの作品には込められていると感じます。
タイトルに織り込まれた作者さんの想い・祈り・願いに、誰しも自らを顧みずにはいられないでしょう。

ミステリ好きも必ず満足できる出来映えで、読後感もよく一押しの作品です。 とても面白かったです。
紙とペンを用意し、メモを取りながら読み進めるのがおすすめです。

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