第8話 7日の予定

「 あなたの話は理路整然としているからつまらない 」


 彼女はそんなことを友達に言われたそうだ。それ以来、人と話をすることが苦手になってしまったらしい。

 大学からの帰り道、深刻な表情でそう話した彼女に私は、


「理路整然としてるとか、言われてみたいよ」と真面目に答えた。


 論破と言うことをしたことがない私にとって、それは、はたして褒め言葉にしか聞こえなかった。


「あの顔は、褒めてなかったと思う。絶対に」


 寂しげにそう言うかぎり、彼女にとってそれを言った友達は大切な存在だったのだろうと思った。


 飛行機雲を見上げた空は、2日間をかけて徐々に晴れではなくなり、雨こそ降らないながらも、分厚い曇が空を覆っていた。


「7日の放課後時間ありますか」


 何か話題を変えようと昨日のテレビ番組を思い出していると、彼女が不意にそういうので「大丈夫です」と即答した。


「七夕をしましょう」


「風情がありますな」


 彼女は照れを隠す時、不機嫌を隠す時、意図せず敬語になる。今回は前者であることを確信しつつ、その日はいつもの交差点で彼女と別れた。


 私は急いでバイト先に連絡をした。

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