11:『突入準備 II』

「先ず、突入メンバーが先行して現地に向かう。狙撃班はその援護で、観測種スポッターは付けない。で、例の凄く狭い入り口に到達したら……塞ぐ。」


 塞ぐ?と頭の上で疑問符を浮かべる。


「作戦の開始は早めにと言われたが、終了は何も言われていない。だったら、こちらでじっくり調するまでだ――ということ。調査と実験を平行して行う事になるかな。」


 岸川先輩は、にやりと口の端を歪めて言った。

 沙織先輩が手を上げる。

「歩美、そこまで行くのにの人数……個体数?も増えるんでしょう?それまでが大変なんじゃない?」

「あ、だいじょうぶ。何故かは知らないけど、個体数はその場所の半径100メートルくらいからほぼ一定なんだ。だから極端に多くなっているとか、そいうことはない。それに、あいつらに取り囲まれて殉職……なんてアホはもういないでしょ。」


 後半の物凄く不謹慎な発言に、遼介は眉を寄せる。だが、咎めることはしない。

 茶道部に入部してからというもの、死生観というものがすっかり冷め切ってしまった。部員が殉職しても、現実世界に何の影響も無いからという物もある。しかし、一番の理由はにいちいち構っていられないからだ。

 『孤島』にいる以上、ノルマとしてを一定数処理しなければいけないし、その数というのもかなりえげつない。

 沙織先輩や小竹先輩、田所先輩が多めに担当してやっとクリア出来るといった状況だ。だから、部員が減っても「ノルマが大変になるな」と思うだけでなにもしない。むしろ、その死体ををおびき寄せるための撒き餌にすることもある。

 もちろん、それを捌くのもほかの部員達だ。


 岸川先輩が言った、「取り囲まれて殉職」というのは、今年入部した一年生の三人目の犠牲者のことである。任務に当たっている最中に発狂し、岸川先輩の制止も聞かずに滅茶苦茶に走り出して、結果に取り囲まれ、狂ったように笑いながら死んでいった。

 ちなみに二人目は沙織先輩の観測手スポッターをやっていた子で、沙織先輩の冷静すぎる物言いに逆上し、先輩に銃を向けて――撃たれた。沙織先輩に。

 当然と言えば当然だ。だが、その時の沙織先輩の冷静さは異常だった。なにしろ、死体を担いでピックアップポイントまでやって来たのだから。


「それでは、突入メンバーを発表する。先ず一人目は――小竹純香。」

「あいよ。ま、そうだと思った。」

 小竹先輩が肩をすくめて言った。怖いとか、そう言う感情はないらしい。

「二人目は、町田由岐。室内戦闘になるかもしれないし、そうで無くても取り回しがしやすいソードオフのイサカは有用だ。期待してる。」

 由岐は肩をびくっと震えさせ、「り、了解……」と小さな声で言った。

「三人目は、林利子。数で押されそうになった時、グレネーダーがいるとやっぱ心強い。後、衛生兵としてもよろしく。」

「了解。」

「んで、最期の四人目は――高野遼介、君だ。」



 


 

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