白き夜に夢みる12月のこと-1


「日本全国に寒気が流れ込み、雪がちらつくところもあるかもしれません。暖かくしてお出かけください。」


朝のニュース番組のお天気お姉さんが昨日からそう言っている。某飲食店の0円スマイルに負けないくらいの笑顔を添えて。だが、この地方においてお天気お姉さんの言うことはあてにならない。きっとこの地方は天邪鬼な性格をしているんだろうな。

もうすぐクリスマス。商店街はいっそやらなくてもいいんじゃないかってくらいな申し訳程度のイルミネーションに身を包み、勝手に盛り上がっている。俺の隣を歩くやつの心まで明るく照らしてくれればいいんだが…。


「おい、青真。ここでそんな陰気くさい顔すんなよ。この世の終わりみたいな顔してんぞ。イルミに囲まれてると余計に惨めに見える。」


そんなことを言っても青真の顔は一向に晴れない。文化祭の終わりからどうも様子がおかしい。いつもなら突っ込まれそうなことを言っても反応がない。反応があっても「うん」とか生返事しか返ってこない。今日はそんな青真を心配してか、紫苑と朱里に頼まれて青真を町の中心部に連れ出してきたんだ。


青真の悩みのタネは翠だろう。青真がこんな風になっていれば1番に気遣いそうな翠が、青真の様子に気づかないほど悩んでいる。この2人の間に何かがあったのは明らかだった。クラスメイトの何人かですら気づいているほどだからよっぽどだ。



俺は青真を喫茶店に誘い、ウェイターに案内された席についてコーヒーを注文してから、青真にいきなり本題を切り出した。


「なぁ、最近青真様子が変だぞ?何かあったんだろう?話せよ。」


そう言っても青真は口をもごもごさせてはっきり言葉を出そうとしない。そこに俺は追い打ちをかける。


「…どうせ翠のことだろ?文化祭の後からなぁんか変だもんな、お前ら。紫苑や朱里でさえ気づいてるぞ。」


この言葉が扉を開く鍵になったようだ。青真がポツリポツリ話し出した。らしくないっちゃあらしくないが、話してくれたのだからまぁいいか。



「文化祭の時、俺、つい言っちゃったんだよ。なんか、いらいらしてて、妬いてたとか翠だからという。それに俺、翠のこと……。」

「え?悪い。最後聞こえなかった。」

「だから、その…、俺、翠のこと…。」

「だから、聞こえねぇって。」

「俺、翠のこと好きだって言いかけちゃったんだよ!なのに翠、なんの反応もないし、どっちかというとよそよそしいし…。」


俺は一瞬あっけにとられた。なんなんだ、こいつらは。とんでもなく鈍すぎるだろ…。


「お、おい、青真。落ち着け…。たぶん、いや、絶対翠、お前が言おうとしてたこと、気づいてないぞ…?」

「え…?」


5秒ほどだっただろうが、俺らの間になんとも言えない沈黙が流れた。

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