白き雨にうたれる6月のこと-2


雨はまだ降り続けている。

どうやら筋書き通りにやらせてくれるらしい。


顔を見合わせた青真と翠は少し諦めている様子だった。

青真が口を開く。


「仕方ないなぁ、やるとなったらさっさと帰るぞ。」


その言葉を合図に駆け出した紫苑、そして俺にのまれて朱里も駆け出す。

あっけにとられる青真と翠を置き去りに玄関にたどり着いた俺と紫苑は顔を見合わせて頷き合った。


遅れてやってきた青真と翠に、紫苑が言う。


「俺と朱里で先に帰って準備しとく。白斗連れてゆっくり来いよ。」


そうして、きょとんとしている朱里を半ば強引に連れて行った。紫苑ならうまくやる。さぁここからは俺の腕の見せ所だな。


パッ、バサッ、と傘を開く音がする。紺の傘と緑に白のラインが2本入った傘が並んだ。


「あー!」

俺は叫んだ。青真と翠が振り返る。


「やべぇ、傘忘れた!」

嘘だ、カバンにはしっかりと折り畳み傘が入っている。


「青真、悪りぃ!借りるぞ。」

ポカンとしている青真から奪い取り、走り去った。


正門まで駆け、振り返ると、

あっけにとられた青真に翠がすっと傘を差し出したところが見えた。


俺の、いや俺たちの意図が分かったのか、遠くから睨んでくる青真は、翠の声に振り向き、苦笑いとまでは言わないがぎこちない笑みを浮かべている。


一芝居うった俺は、さぁて今の2人のあの距離が帰り着くまでにはどうなるものか、それをすごく楽しみにして、2人を背に1人歩き出した。


雨はもうしばらく止みそうにはない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る