第7話 戯れ

忙しかった非日常が過ぎると、途端に空白の時間が長く感じる。

昨日までと比べて、自宅にいる時間が長いせいか、風鈴はご機嫌である。


風鈴を踏まないように慎重に歩き、一歩立ち止まればお腹を見せてコテンと横になるため、そのまま撫でてやった。


ゴロゴロと喉を鳴らし、部屋中を走り回っては膝の上に乗り、これでもかというくらい、私の顔を舐め回してくる。


ザラザラとした舌が少し痛い。背中を撫でてやると、「にゃあ」と目を細める。


昨日までとは、えらい違いだ。

大人しく撫でられ、甘えてくる。


しかし、そんな幸せもつかのま、ガブリと顔を齧られてしまった。

一瞬何が起こったのか理解できなかったが、どうやら戯れているつもりらしい。


インターネットで調べると、噛んでくるのは舐めることの延長線上だと書いているところが多く、強く叱ったりすることはいけないそうだ。


甘噛みをされても、肩で爪とぎをしても、パソコンのシャットダウンを不意に押されても、猫は可愛い生き物だ。




これも生き物を飼うということと思い、半ば諦めた様子で今日も風鈴専用ベッドになる私だった。

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