第24話

「祐佳里さん、落ち込んでいない?」

「ま、なんとか」

 それでも、莉紗に対して敵意を持っていることは確実だった。

「ごめんな」

「何が?」

「祐佳里に嫌われるような役回りを押し付けてしまったこと」

「気にしないで。ま、こーいちの周りの女は全て敵でしょ。先輩方も、学校の女子生徒全員」

「さすがにそこまで……」

 もててないよ! 俺は苦笑する。

「じゃ、部屋で祐佳里さんにラブいところを見せつけてあげましょ」

「ラブいって、何だよ、それ」

「恋は盲目。愛する彼氏彼女だけに通じる、危険なまでに淫らな言葉」

「あくまで言葉だけだよな。問題起こさない程度にしてくれ」

「とりあえず、お邪魔します」

 やけにめかした格好の莉紗……胸元の大きなリボンといい、緋色の宝石が埋め込まれた髪飾りといい、虹色に染め抜かれたミニスカートといい、凄く攻撃的な印象。勿論、それ以上に彼女自身という戦闘力は祐佳里にとって脅威以外の何物でもないだろう。

「ここに祐佳里以外の女がいるのは住居不法侵入罪の処罰対象……お姉ちゃん、わかってる?」

 怪訝な声と表情で威圧感を醸し出そうとする、祐佳里。

「勝手に転がり込んだのはどっち? ここはこーいちの部屋よ」

「正確には、花村家ですから」

 お互い譲らず、……漫画とかでは火花が散っている、と表現されるであろう修羅場。

「祐佳里、俺は莉紗が好きなんだ。ぞっこんラブなんだよ」

「言い回しが古いわね」

「莉紗が突っ込みいれないでくれよ」

「祐佳里、そんなぉ兄ちゃんを困らせないでくれよな。いい子だから、ぉ兄ちゃんの恋愛を応援してくれよな」

「というわけでくっついちゃうよ、ねー、こーいち。」

 身体を密着させてくる祐佳里。大きな胸が当たって、俺の頬が緩む。

「ぉ兄ちゃんから離れてください」

「祐佳里さん、私、こーいち公認の彼女よ。あとは孕まされるだけ」

「何を危険なこと言っているんですか。……ぉ兄ちゃん、祐佳里となら、問題が起きても結婚という責任がとれるよ」

「わ、私と結婚しても問題ないでしょうが!」

「問題大アリだよ。すぐに身体でアピールする痴女なんだもの」

「それはあなたも一緒でしょ」

「私は、まず幼い頃の馴れ初めからだから、健全だよ」

「大事なのは今のこーいちの気持ちよ。大きい方がいいんだからね」

 莉紗は胸を張って言う。

「それじゃ、俺が胸にしか興味ないような言い方じゃないか」

「胸しか自信がない、っていうことだね」

「ち、違うわよっ! こーいち、何か言ってよ」

 お、俺に話しを振るなよ。

「えーっと、思いやりのある優しいところ、かな」

「テンプレートそのまま使用、って感じだね、ぉ兄ちゃん」

「そんなんじゃないって。いい人なんだよ、莉紗は。祐佳里のお姉さん……って感じになるから、仲良くしてくれよな」

「優しくしていたことなんて、あったっけ?」

 意外な反駁は、莉紗の口から漏らされた。

「最初に逢ったとき、バスの中」

「そうだったわね」

 納得して貰えたみたいだ。

「俺は莉紗と付き合うから、なんというか、お前がいると浮気している気になって自分が嫌になるから、俺たちの恋を見守っててほしいんだが」

「最っ低」

 突然に、祐佳里が言う。

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