第17話

「死ねば? 不純異性交遊なんて企図する変態さんは」

 そう、さらっと言われる俺。幾らクールなキャラクターでも、死ね、なんて言われると俺もがっくりくる。

 しかも、それが、まだ告白もできない想い人だったら。

 ……諦めました。

 もう、ただのお隣さんですよ。怖い……。

「祐佳里……、ぉ兄ちゃんはもう駄目だ。最後に子供でも残して……」

 俺はもう、頭が真っ白になって前後不覚、とんでもないことを口走ってしまったようだ。

「妹とくっついたら本当に殺す!」

 凝視する七星の目には殺気が宿っていた。それを見て俺は、ふと我に返る。

「そうだ、話題を変えよう。で、七星も学校行くのか?」

「……部活よ。別に、あんたが学校に行くというのが聞こえたからって着替えたわけじゃないんだからね」

 俺の作戦……という程のものではないが、とりあえず話題を逸らすことに成功した。というより、何、その変な回答?

「わかってる?」

「はいはい」

 俺は適当に応える。

 それにしても、七星の制服姿、である。学校のマドンナ、いつも遠目に見ていた理想の少女がそのままの姿で目の前いる。というか、さっきまでその大きな胸に顔をうずめていました。

「なに、ジロジロ見ているのよ?」

「い、いや、何でもない。部活なんでしょ」

「そうよ」

 鋭い目つきで七星が凝視してくる。いや、俺のことを見ててくれるのはうれしいのは確かだが、どうにかいつものカワイイ七星さんでいてくださいよ、ねえ。……そう言えないくらい、目も逸らすこともままならないほど彼女の“刺す”視線が痛い。

「祐佳里の方をもっと見てよ、ねぇ」

 祐佳里は俺の顔を自分の方へ向けさせると、

「七星さんよりかわいいでしょ。あんな怖い人、追い出してよ」

と言うのだが、その七星のほうを見ると俺は萎縮してしまう。

「あなたたちが変なことしなければ、ね」

「しないよ!」

 七星の言葉に俺は抗議するも、

「信用ならないわね。だから、あんたの行動をチェックしているのよ」

と言って、俺の方に目を向けていたのだが、時々、目を背け始めた。

「なんなのよ、ソレは? どうにかしてよ」

 顔を真っ赤にして、あさってのほうを向いたまま、俺……のやや下の部分を指差す。

 そりゃ、早朝一番に七星という美少女を見たから……。

「仕方ないだろ、生理現象なんだから。というか、着替えるから、七星は出ていってくれよ。祐佳里もちょっと向こう、行っててほしいな」

 ま、着替えている間にこれも収まるだろ、という打算もあったが、何よりちょっとだけの間でも一人の時間が欲しかった。ただ、昨日祐佳里がやってきたその時から、俺には、ちょっとハイテンションすぎて付いていけない所があったからだ。

「祐佳里、ぉ兄ちゃんの裸、みてみたいな。ご所望とあらば、私のも」

「こっ、この変な妹さんを監視しとかなければならないから、私も、ここに居るわ」

「な、何言っているんだ。祐佳里は今に始まったことではないが……七星は、お願いだから祐佳里を連れて外に出てくれ。頼む、手を掛けるが」

「しょうがないわね、貸しよ。祐佳里ちゃん、出て行くわよ」

「はーい。ぉ兄ちゃん、早く出てきてよ」

 貸しよ、貸しよ、貸しよ。七星のその言葉が、俺の頭に響く。これって、七星との間に一つの関係が出来たってこと? なんて思ってちょっとデレていたりする自分の頬を軽く叩く。熱、持っていた。たぶん、少なからず赤くなっていた事だろう。そんなことをつゆ知らずか、七星は祐佳里を連れて、ドアの外へ消えていく。

「ぉ兄ちゃん、まだーっ?」

「私を待たすなんてたいそうなご身分ね。このナマケモノが」

 ドアが閉まったその瞬間から、いやマジで、間髪入れずに俺を待つ言葉と、そして俺を罵る言葉が降りかかる。容赦ないな、七星。

「今着替えている所。そんなにせかすなよ」

「グズね。しかも、デリカシーもない。そんなんだからもてないのよ」

「ぉ兄ちゃんには祐佳里がいるから、もてなくても問題ないよ」

「そうよ、……ってそれは問題。少なくとも、私が、魅力的だと思えるような男性になって欲しいわね、ね、ね、絶対よ」

「はいはい。もう少しかかるから、静かにしておいてよ」

 そんな声に混じって、

「こんないたいけな子を外で待たすのは、関心せんな」

「魔法少女のごとく、一瞬で変身するであります。勿論、そのバンクシーンこそが見所でありますが」

先輩方の声が混じってくる。

 取り敢えず、ズボンを穿きシャツを着たので、慌ててドアを開ける。

「ぉ兄ちゃん、社会の窓……」

「何がしたいの?」

「だから、早く早くって皆が言うから……」

「せめて、変態と勘違いされない格好にしなさい」

「そうですぞ、変態紳士は二次元の中にのみとどめておくべきものであります」

「ま、浩一のことだから仕方ないように思うけどね」

「ぉ兄ちゃん、でも祐佳里は嫌いじゃないから、ね。変態……特殊性癖でも受け入れるよ」

「だから、違うって。慌てただけ! で、先輩方まで何でいるんですか?」

 更に増えた二人の客人……金平先輩と佐々木先輩は、ちらちらとこちらを見るなり視線を逸らし、そして必死に笑いをこらえていた。

「浩一、なんでもない」

「そうですぞ。ふふっ、いや、至って普通であります」

 そういいながら、俺の下半身を指差してくる。

「しまってください。何を見せてるんですか。言わなくてもわかるでしょ」

 七星は顔を真っ赤にして、目を逸らしがちに言う。しかし、何度もこちら方を見て確認しているようだが。

 俺は、……あああああぁぁぁぁぁ。そういうことか。彼女たちと反対を向いて、ファスナーを閉める。

「鈍いのよ。こっちも恥ずかしいんだから、早く気づいてよね」

「はいはい、すみませんでした。もう恥ずかしいから、その話、しないで」

「家の中じゃ、全部出していいんだよ。中身まで」

「祐佳里殿、かなり過激でありますな。放送では真っ白になるシーンですな」

「だから、その話はしないでくださいって」

 俺の抗議などいざ知らず、俺を『変態』に貶めようとする彼女たち。

「でも、未だに祐佳里のこと、襲ってくれないんだよ。男として、ちょっと残念だよね」

「祐佳里、追い出すぞ」

「それはダメ」

「じゃ、もうそういう話はしないでくれないか」

 祐佳里は、口を尖らせながら言う。

「しょうがないな、もぉ。でも、いつでも襲っていいんだよ」

「しないって」

 俺は嘆息する。

「死ねば? 不純異性交遊なんて企図する変態さんは」

 そう、さらっと言われる俺。幾らクールなキャラクターでも、死ね、なんて言われると俺もがっくりくる。

 しかも、それが、まだ告白もできない想い人だったら。

 ……諦めました。

 もう、ただのお隣さんですよ。怖い……。

「祐佳里……、ぉ兄ちゃんはもう駄目だ。最後に子供でも残して……」

 俺はもう、頭が真っ白になって前後不覚、とんでもないことを口走ってしまったようだ。

「妹とくっついたら本当に殺す!」

 凝視する七星の目には殺気が宿っていた。それを見て俺は、ふと我に返る。

「そうだ、話題を変えよう。で、七星も学校行くのか?」

「……部活よ。別に、あんたが学校に行くというのが聞こえたからって着替えたわけじゃないんだからね」

 俺の作戦……という程のものではないが、とりあえず話題を逸らすことに成功した。というより、何、その変な回答?

「わかってる?」

「はいはい」

 俺は適当に応える。

 それにしても、七星の制服姿、である。学校のマドンナ、いつも遠目に見ていた理想の少女がそのままの姿で目の前いる。というか、さっきまでその大きな胸に顔をうずめていました。

「なに、ジロジロ見ているのよ?」

「い、いや、何でもない。部活なんでしょ」

「そうよ」

 鋭い目つきで七星が凝視してくる。いや、俺のことを見ててくれるのはうれしいのは確かだが、どうにかいつものカワイイ七星さんでいてくださいよ、ねえ。……そう言えないくらい、目も逸らすこともままならないほど彼女の“刺す”視線が痛い。

「祐佳里の方をもっと見てよ、ねぇ」

 祐佳里は俺の顔を自分の方へ向けさせると、

「七星さんよりかわいいでしょ。あんな怖い人、追い出してよ」

と言うのだが、その七星のほうを見ると俺は萎縮してしまう。

「あなたたちが変なことしなければ、ね」

「しないよ!」

 七星の言葉に俺は抗議するも、

「信用ならないわね。だから、あんたの行動をチェックしているのよ」

と言って、俺の方に目を向けていたのだが、時々、目を背け始めた。

「なんなのよ、ソレは? どうにかしてよ」

 顔を真っ赤にして、あさってのほうを向いたまま、俺……のやや下の部分を指差す。

 そりゃ、早朝一番に七星という美少女を見たから……。

「仕方ないだろ、生理現象なんだから。というか、着替えるから、七星は出ていってくれよ。祐佳里もちょっと向こう、行っててほしいな」

 ま、着替えている間にこれも収まるだろ、という打算もあったが、何よりちょっとだけの間でも一人の時間が欲しかった。ただ、昨日祐佳里がやってきたその時から、俺には、ちょっとハイテンションすぎて付いていけない所があったからだ。

「祐佳里、ぉ兄ちゃんの裸、みてみたいな。ご所望とあらば、私のも」

「こっ、この変な妹さんを監視しとかなければならないから、私も、ここに居るわ」

「な、何言っているんだ。祐佳里は今に始まったことではないが……七星は、お願いだから祐佳里を連れて外に出てくれ。頼む、手を掛けるが」

「しょうがないわね、貸しよ。祐佳里ちゃん、出て行くわよ」

「はーい。ぉ兄ちゃん、早く出てきてよ」

 貸しよ、貸しよ、貸しよ。七星のその言葉が、俺の頭に響く。これって、七星との間に一つの関係が出来たってこと? なんて思ってちょっとデレていたりする自分の頬を軽く叩く。熱、持っていた。たぶん、少なからず赤くなっていた事だろう。そんなことをつゆ知らずか、七星は祐佳里を連れて、ドアの外へ消えていく。

「ぉ兄ちゃん、まだーっ?」

「私を待たすなんてたいそうなご身分ね。このナマケモノが」

 ドアが閉まったその瞬間から、いやマジで、間髪入れずに俺を待つ言葉と、そして俺を罵る言葉が降りかかる。容赦ないな、七星。

「今着替えている所。そんなにせかすなよ」

「グズね。しかも、デリカシーもない。そんなんだからもてないのよ」

「ぉ兄ちゃんには祐佳里がいるから、もてなくても問題ないよ」

「そうよ、……ってそれは問題。少なくとも、私が、魅力的だと思えるような男性になって欲しいわね、ね、ね、絶対よ」

「はいはい。もう少しかかるから、静かにしておいてよ」

 そんな声に混じって、

「こんないたいけな子を外で待たすのは、関心せんな」

「魔法少女のごとく、一瞬で変身するであります。勿論、そのバンクシーンこそが見所でありますが」

先輩方の声が混じってくる。

 取り敢えず、ズボンを穿きシャツを着たので、慌ててドアを開ける。

「ぉ兄ちゃん、社会の窓……」

「何がしたいの?」

「だから、早く早くって皆が言うから……」

「せめて、変態と勘違いされない格好にしなさい」

「そうですぞ、変態紳士は二次元の中にのみとどめておくべきものであります」

「ま、浩一のことだから仕方ないように思うけどね」

「ぉ兄ちゃん、でも祐佳里は嫌いじゃないから、ね。変態……特殊性癖でも受け入れるよ」

「だから、違うって。慌てただけ! で、先輩方まで何でいるんですか?」

 更に増えた二人の客人……金平先輩と佐々木先輩は、ちらちらとこちらを見るなり視線を逸らし、そして必死に笑いをこらえていた。

「浩一、なんでもない」

「そうですぞ。ふふっ、いや、至って普通であります」

 そういいながら、俺の下半身を指差してくる。

「しまってください。何を見せてるんですか。言わなくてもわかるでしょ」

 七星は顔を真っ赤にして、目を逸らしがちに言う。しかし、何度もこちら方を見て確認しているようだが。

 俺は、……あああああぁぁぁぁぁ。そういうことか。彼女たちと反対を向いて、ファスナーを閉める。

「鈍いのよ。こっちも恥ずかしいんだから、早く気づいてよね」

「はいはい、すみませんでした。もう恥ずかしいから、その話、しないで」

「家の中じゃ、全部出していいんだよ。中身まで」

「祐佳里殿、かなり過激でありますな。放送では真っ白になるシーンですな」

「だから、その話はしないでくださいって」

 俺の抗議などいざ知らず、俺を『変態』に貶めようとする彼女たち。

「でも、未だに祐佳里のこと、襲ってくれないんだよ。男として、ちょっと残念だよね」

「祐佳里、追い出すぞ」

「それはダメ」

「じゃ、もうそういう話はしないでくれないか」

 祐佳里は、口を尖らせながら言う。

「しょうがないな、もぉ。でも、いつでも襲っていいんだよ」

「しないって」

 俺は嘆息する。

「あー、それにしても昨日はあまり寝付けなかったな」

 部屋の柱に取り付けられた鏡に映るのは、まるで隈取りでも入れたかのように目の隈が入っていた。

「それはね、祐佳里がぉ兄ちゃんに気持ちいいことしてたんだよ」

「祐佳里……」

 そうすると祐佳里は手を横に振って、

「ちがうちがう、ただ、ぉ兄ちゃんの布団に潜り込んで、身体をぎゅーっと抱きしめたり、頬をすり寄せたりしただけだから」

「同じだろ。そんなことされてたから、眠りにつけなかった訳か……。あのな、祐佳里。好きでいてくれるのは嬉しいけど、あまりに変なことはしないでくれないか」

「いいでしょ、好きなんだから。誰かさんみたいに……」

 祐佳里がふいに言葉を止める。七星の眉間に皺が寄り、恐ろしい形相を放つ。

「どうしたんだ、七星さん……」

「行くわよ、花村。もう、こんなの付き合っていられない」

 彼女は腕を掴むと、ドアの外へと向かっていく。なんとかカバンを手に取ったものの、俺は彼女に引きずられる形で部屋を後にする。

「あ、待ってよぉ、ぉ兄ちゃん。祐佳里を放っておかないで」

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