第17話「修学旅行のしおり」

 魔女ヤヒュニアによって女の子となり、克巳から克美になった大津克巳。

 そんな彼女は伊賀啓介と共にスペードの7とスペードの4のトランプ兵を倒したのだった。

 その翌日、彼女は4時間目に就学旅行のためのしおりの時間に出ていた。

「この学校は珍しいのよね。受験生に配慮してなのか旅行は夏休み前なんだから」

 それを聞いた飯塚琴美はこういう。

「京都と大阪か……地球儀のある遊園地、楽しみね」

「そこ、普通にいえないのか?」

 そういったのは大原佑輔だった。

「何となくそういった方がわくわく感が出ないかな?」

「でも、ユニバーサルなあれだろ」

「これ以上いったらトランプ兵どころか赤の女王より怖い奴がでそうだし辞めとけ」

 啓介が佑輔をそうたしなめる。

「赤の女王か。どんな奴なんだ?」

「佑輔が気になるのは分かるけど、モチーフ的にも良い印象はないわね」

 克美がそういうのに対し、啓介はこう突っ込む。

「お前にシンデレラ要素はほとんどないけどな」

「ヤヒュニアが僕をシンデレラに選んた時は、僕の境遇がそれっぽいと思ったんだけどね」

「確かにいわれてみればな。魔法で別の姿に変わってるし、王子様も居るし」

 そこに先生が割ってはいる。

「無駄話はそのへんにして、しおりを作りなさい」

「はい」

 というわけでしおりを作り直す克美達。

「清水寺に奈良の大仏か」

「啓介ってそういうのに興味あるの?」

「観光名所だっていうし、一度くらいは実物を見てみたい物だろ?」

「男のロマンといいたいなら、僕はそればっかりは同意できないよ」

「今は女の子になってる癖してよく言うわ」

 すると佑輔がこういう。

「それより、八つ橋ってやっぱあるのか?」

「そりゃあるに決まってるよ。京都なんだし」

「克美ってお金は大丈夫なの?」

「一生に何度あるか分からない機会なんだ。お金くらいちゃんと工面してもらってるよ」

 そこで啓介がこう続ける。

「お土産代もか?」

「見くびるんじゃないよ。こうみえて一万円も用意してもらってるんだから」

「一万円『も』なのが哀愁をそそるな」

「啓介の言うとおりね」

 克美は二人のからかいに対してこういう。

「からかわないでよ!」

 すると先生がこういう。

「いいから、さっさとしおりをやりなさい!」

 そして、その日の放課後。

 克美は下駄箱で啓介と合流する。

「今度はどんなのなの?」

「スペードの6と5だ。こいつらを倒せば残りは全て絵札だ」

「やっぱりエースは絵札扱いなんだね。修学旅行のためにも、負けられないよ」

「そうだな。公園に行くぞ!」

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