第13話「ハードワークな日々は続くよ、どこまでも」


後輩のバイト君がどんどん辞めていく。一ヶ月も経てば長い方で、速い奴は数週間で辞めていく。おまけにベテラン勢も辞めていき、どんどん人が減っていく。そして、とうとう副店長に相当する人も辞めてしまった。副店長は母親の介護をしないといけないというのが理由で辞めた。でも、実際は店長に嫌気が差したからだと夜勤の先輩がこっそり教えてくれた。店長と副店長は友人同士で同じ女同士ということもあり、仲が良い印象があったが、本音はどうも違うらしい。副店長だけではない。後輩のバイト君がどんどん辞めていく原因は全て店長にあった。人使いの粗さ、失敗すれば店内であろうと構わず怒鳴り倒す、途方もないノルマ制度。




嫌気がさした連中は何も言わず、給料も貰わず去っていく。この店は給料手渡しなので給料日に自分で取りに来る必要がある。彼らはそれを蹴ってまで辞めていくのだ。ある時、筆者は休日でグースカと眠っていた。そこへ突然携帯が鳴りだした。店からの着信だった。



俺「はい」



店長「小夜子くん?〇〇君、来なくなったの!すぐにシフト入って!」



俺「……わかりました」




こうなるとせっかくの休日がパーだ。何度この経験をしたことだろうか。嫌な思いをしつつ、準備をした事を今でも思い出す。だが、これはまだいい方で夜中に電話をかけてくるときもある。しかも時間が深夜3時とかだ。




俺「なんですか、こんな時間に」




店長「明日、小夜子くん夕方勤務だけど、朝8時~夕方17時まで入って。私、しんどいの。昨日の夕方から入ってるのよ?」




そんなの知らねえよ。大体、あんたがバイトに怒鳴り散らしたりするから悪いんだろ。つか、俺にこんな時間にごめんねの謝りも無しか、コラ。




と、すごく腹が立つ思いをしつつも了承し、仕方なく言われた時刻に入っていた。あまりにも眠いときは着信を無視。音量もバイブも切って携帯を無音にさせ、そのまま寝た。次の日になって「すいません、寝てました」と嘘をついたことも。




バイトは結局ほとんど辞め、かろうじて残った人間は新人ばかり。副店長もいない今、ベテラン勢は筆者と夜勤専門の先輩だけである。この場合、夜は仕事をまわせても、朝~夕方は大変になる。普通はこの場合、店長が踏ん張るものだが…彼女にそんな根気はなかった。そこで筆者が投入されることになる。最終的に朝8~夜20時まで入り、その後、夜22時~朝8時まで入るというムチャクチャな勤務時間になる。休みは週一回、それ以外はほとんど上記の時間で働く羽目になる。ハッキリ言って労働基準法違反も甚だしい。後輩がほとんど辞めたので年数的に長いのは筆者になり、バイトリーダー的な立場になるが、褒められもせず、時給も上がらず、文句ばかり言われる毎日。




休みは何もできず、家に帰ったら夜まで寝るだけだった。一度、嫌味で店長の前で酒を大量に買ってやった事もある。ストレスばかりが溜まる毎日が続く。

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