第17話  アイダホってアメリカ?カルチャーショック



アイダホについたのは1999年の夏だった。


空港に降りた瞬間から驚くことばかりだった。特にマウンテンホームは、私の知っているアメリカから100年位遅れている気がした。乗ったのは飛行機じゃなくてタイムマシンだったんじゃ?と思ったくらいだ。


2時間ほど何もない、真っ直ぐな道。 よく映画や絵葉書で見かける。でもそこに住むのは大変だった。

風が吹くと黄色い砂がゴーッと舞い上がり、人間くらい大きい枯れ木の束が転がってくる。遠くに走るはコヨーテ。空には鷹。


ある日バイクの集団にも遭遇した。なんとヘルズ・エンジェルスだった。

それからでっかいトラックも多かった。砂漠の道を砂嵐を巻き起こしながら爆走するトラック。


「絶対にトラック追い抜かないでね!」

スピルバーグの「激突」にあまりにも似ている世界だった。


途中のガソリンスタンドで飲み物買おうと車を降りたら、でかいトラックの運転手ばかり。小さいアジア人は非常に珍しいのか、ここでもジロジロ見られた。


人種は白人のみというくらい他の人種を見かけません。そしてほぼ金髪。そして、何より驚いたのは目があってもニッコリしたりハローと言い合ったりしない人が多いのだ。夫もショックを受けていた。


「私がアジア人だから、すごいね差別。にっこりもしないでジロジロ見られるよ」というと

「僕もだけど」


本当だ。夫もジロジロ見られている。「ハーイ」というとぎょっとする。

こんなアメリカはじめて。

ついてすぐに近くのレストラン、というかアメリカ定食屋な雰囲気の場所に入ってみた。


「これにしようかなポットローストにサラダつけてください。ドレッシングはイタリアンで」と夫が言うと

「はあ?」

なんと夫の英語が通じない。2回言ってはじめて「オーオーオッケー」とやっと通じた。

「カリフォルニア英語が通じない! おもしろいね。言い方が早過ぎるんじゃないの?」

「うん、びっくりした!日本で日本語話すより通じなかった!」


アメリカもかなりアクセントがあって北と南では随分違う。でもアイダホはかなりカリフォルニアと近いので安心していたのに。同じ国なのに州で文化もかなり違うことを学んだのであった。


北カリフォルニアは特にフレンドリーな人が多くて、とにかく話しかけられる。

(目があったらにっこり、それからちょっと話をする。)というのがアメリカ文化だと思っていた。

夫の方がカルチャーショックを受けてた。


この時の勤務は救命士で日本では飛行機だったが、アイダホではER勤務で救急車に乗っていた。病院勤務は夜勤も多くて、私はなんの荷物もない部屋でどんどんホームシックになっていった。


息子もまだ4歳になったばかり。さすがに小さいテレビだけ購入してマンガを見る日々。そして砂漠を散歩する日々。

この2年半は辛かったけれど、アメリカ人の友達もたくさん出来て、なんとなくアメリカの土地に根付く基礎になったようなき気もする。



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