身体障害者就職活動奮戦記

越後亭耕太

プロローグ

 平成二十四年十二月二十九日。世間は年末休暇の話題で持ちきりであった。明日、三十日は仕事納め。どこの会社でも業務が停止する。就職活動も会社が休みになれば、もうすることは無い。来年度は良い求人があるだろうか?今年は散々だった。と不安と不満を抱えながら、ただ部屋でゴロゴロと過ごすしかなかった。

 その時、携帯電話が鳴った。相手は今年最後に面接した会社からである。飛びつくように携帯を取り、電話に出る。

「検討の結果、採用と決まりました。来月から勤務して頂きたいので、必要な書類などご用意下さい。」

 一瞬、頭が真っ白になった。すぐ我に返り興奮気味に返答する。

「ありがとうございます!すぐにでも契約に伺います!必要な物もすぐに…。」

 相手にもこちらの興奮具合がわかったのだろう。落ち着かせようと静かに対応する。

「契約は来月ですので焦らなくとも大丈夫です。都合が良ければ来月の六日に、にこれから言う物を持ってきてください。まず印鑑と…。」

 契約に必要な物をメモにとり、契約に伺う時間を決めた。電話の最後に、改めてお礼を伝えた。

 やったぞ!就職が決まった!

 踊り出さんばかりに興奮が冷めない。やった!やった!と部屋で吠え続けた。

 約一年間に渡る就職活動が終わったのだ。これ以上の嬉しい出来事は無い。


 これは、私が身体障害者となって過ごした、「障害者の就職活動」の記録である。

 健常者の方々も就職活動は苦しい昨今、障害者の雇用の現状とその難しさについて、ここに書き綴っていきたい。

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