7話

アタラが言う事でそれが外れた事がない。


 前回以降、異世界に行くと、ちょくちょくシュンと会えるようになった。


 どうやらアタラは未来予知でもできるらしい、そう思っていたんだけど、それは先日、ちがうよ、と笑顔で否定されてしまった。ただ、アタラが笑顔でなにかを言うとウソをついているように見えるから不思議だ。


 まさか不良少年とつるむようになるとは思わなかったよ、ともこの間ぼやいていたけれど。




 シュンはといえば。


 彼は『家族』と上手くいっていないらしいことを話してくれた。家族とはケンカばかりで、学校では『レッテル』を貼られているんだそうだ。よく分からなかったけど、シュンが辛そうな事だけは理解した。

 オレはアウトローなんだと、苦笑いしていた。


 他の人はシュンを怖がるというけど、わたしには優しくしてくれた。最初の頃はすごまれる度に、怯えたけど、最近ではそれがただの照れ隠しなんだと分かるくらいになってきたからというのもある。


 基本的にすごく優しいのだ、シュンは。


 それに、一度会わせてくれた『家族』だって、すごく優しかったように思う。ものすごく『歓迎』してくれた。きっと、シュンがけんか腰だから、いつも収集がつかなくなっちゃうんじゃないだろうか。


 わたしは少しだけ『家族』が羨ましくなった。




 その時、ちょうど一緒に『カフェ』でお茶をしていたんだったか。


 シュンはこんな所きたことねーよ、って始終きょろきょろしていた。


 たしか、アタラはいなかった。用事があるんだと言って、一二時間ほど席を外していたのだ。


 じゃなきゃ、あんな話は出来なかった。


 あの時のわたしは、正直、すこしおかしかったんだと思う。


 シュンが自分のヒミツを話してくれたお返しに、どうしても自分のヒミツを話したい気持ちに駆られたのだ。


「あのね、シュン」


「ん、なんだ?」


 シュンは慣れない紅茶を、顔を顰めながら流し込む。


「あのね、わたしね…信じられないような話をすると思うんだけどね…」


 シュンはげらげら笑う。


「アンタがおかしいのはいつもの事だよ。気にすんな」


「う…じゃあ、言うけど。わたし、実は異世界から来たの」


 シュンがぴたりと動きを止めた。


「あ、なんだって?」


「い、異世界から来たの」


 わたしも釣られて硬直してしまう。


「だれが?」


「わたしが」


「どこから」


「い、異世界…?」


 シュンはまじまじとわたしを見つめると、ひとこと言った。


「中二病か?」


 『中二病』のイミが分からなかったけど、否定する。やっぱり信じられないか、と肩を落とした。


「もしかして、ホンキなのか?」


 シュンがわたしに問いかける。


 その言葉に勢いよく頷く。


「ほんとう、なのか…」


 信じてくれたか、とわたしは瞳を輝かせて、シュンに顔を寄せた。


「信じてくれるの?」


「お、おう。アンタがそう言うならな。…カオが近いって」


 なぜか頬を赤くしながら、わたしを避ける。


「あるんだろーな。『異世界』とやらも」


 シュンが真剣な顔をしてわたしのことを見つめた。


「いつか、連れてってくれよ」


信じてくれた事がうれしくて、わたしは何度も何度も頷いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る