最高の贅沢 ヨハン・シュトラウ・・ZZZ ウィーン

 特に意識しているわけではないけれど、不思議と何度も訪れることになる街がウィーン。


 やっぱりご縁?行くたびにこの街を好きになっていきます。

(まあ何度行っても好きにならない街もありますが・・)


 旧市街はシュテファン寺院を中心として放射状の道がリンク(旧市街の外周の道で路面電車が走ってマス)まで伸びていて分かりやすいし、サイズも散策にはもってこいの小ぶり?のサイズ。


 そしてシェーンブルン宮殿の素晴らしいこと。


 宮殿といえば日本ではパリのベルサイユ宮殿が有名。でもベルサイユはフランス革命時に貴重な宝飾品等が かなり持ち去られているらしくちょっとガランとした印象。

 それに比べるとシェーンブルン宮殿はそういった美しさがそのまま残っているで、ハプスブルグ家の往時の輝きを 存分に味わうことができます。是非ご覧アレ。


 また、食事も意外といっては失礼ですがけっこうイケます。

 ウィンナ・シュニンツエルや肉団子のスープは特筆するほどではないけれど、日本人にとっては 食べやすい味。スイーツも有名なザッハートルテやデメルのチョコレートなど粒揃い。

 

 でもウィーンといえばやはり音楽。

 その中でもアレ良かったなあ・・と思いだすのが教会の一間で行われたこじんまりとしたコンサート。


 これホテルのおじさんのオススメだったのですが、最初はちょっとアララ・・と不安になったのを覚えてます。


 まず事前に場所をチェック。有名な場所じゃありませんからネ。


 そこは教会だと聞いていたのですが、そこにあったのはどう見ても旧市街によくあるただの古い共同住宅。確かに案内の張り紙はあるもののとても教会には・・。


 うーん、おじさん大丈夫?


 まあコンサートが行われるのは確かなので、ジタバタしてもしょうがありません。とにかく場所はここ。


 さて、皆さん集まっていざ会場へ。古い建物の中に入ってもやっぱり教会のようには見えません、どうみても集合住宅のただの 一階ロビー。

 Yさんたちの間にも”えっ、ここ?”みたいな空気が流れています。背中に刺さる皆さんの視線。後ろ見るのが怖い・・。


 でもそのとき視界の先に矢印の書いた張り紙 発見。良かった・・ここデス。


 たどり着いたのはこじんまりとした礼拝堂のような空間。

 なるほど建物内にある教会ね(多分・・)


 ステージを囲む ように半円形につくられた客席は100席に満たないほど。ほぼ満席。


 拍手とともに演奏者の登場。ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラの三重奏(だったと思う・・)

 近い。 すぐ眼の前にお三方。


 演奏が始まってからはまるで別世界。石造りのホール?のおかげで素晴らしい音色。そのどんな細やかな音も途切れることなく紡がれ、心に織り込まれて曲は進みます。


 息をするのも惜しいような瞬間の繰り返しの後、最後に美しい音がホールに 吸い込まれるように小さくなってゆき、ローソクの灯がふっと消えるように静寂が訪れます。


 あまりの素晴らしさに言葉もなく一瞬拍手も忘れるほど。他の皆さんも 同じような状態で、一瞬間があって大きな拍手。そしてスタンディングオベーション。


 たどり着くまでの”ここ?”という不安は何処へやら、こちらの一行も 大感激。

 

「やっぱりこういうコンサートを観てこそウィーンに来たかいがあるわよね」

 全くデス。


 こういった普段着で聴ける演奏会が 数多く催され、音楽を気軽に楽しめるのってイイなあ。さすが”音楽の都”。


 あ、ホテルのおじさんアリガトウ!


 こういったカジュアルなコンサートに 対して、ウィーンフィルやオペラ座はドレスアップしたハイサークルの世界。

 きちんとメイクアップして表紙を飾る”音楽の都”としてのメインキャラクターです。


 以前、あるテレビ局のウィーンフィルの公演収録にご一緒したときのこと。


 テレビ収録のお供ということで貴重な定期演奏会を拝見。

 席はバルコンと呼ばれる仕切られた一角。一階のアリーナ席より一段高いところにあるのでチョット優越感を感じマス。

(イヤー小市民・・)


 さすがウィーンフィルといったパフォーマンス(音楽評論家Fさんの言葉です)の前半が終わりインターミッション。


 これも楽しみにしていた時間。バースペースでFさんと まず乾杯。周りはかなりの込み具合。


「九月ですからね。皆さん久しぶりの再会です。ヴァカンスはどう過ごしたとかの話で盛り上がって いるんですよ」

 うーん、なるほど。プチ社交界。

(ちなみにウィーンフィルの定期演奏会は9月から6月までです)

 


 ワインも進みFさんの舌も滑らか。


「昔は今より音楽を気軽に楽しんでいたようですね。コンサートの好きなところだけ聴いて、あとはこうやってバーに来て話し込んだり。それで、後ろから出入りできるバルコン席は昔から人気があったんです」

 良き昔だなあ。


 ちょうどほろ酔いの入り口あたりでインターミッション終了。僕も昔の人の気分でリラックスして後半を楽しめそう。


 ところが、後半の部が始まってしばらくすると、なんとも心地よくなってきて・・そう、 睡魔。 リラックスしすぎ?

 考えてみれば、昨夜もFさんやウィーンフィルの関係者に付き合ってカナリ遅かった。そこにさっきのワイン。 そして素晴らしく心地良い演奏ですから眠くなるのも道理。


 でもせっかく用意していただいた席です、いくら気軽に楽しむといっても眠りに落ちてしまうのはさすがに マズイ。ところどころ船を漕ぎながらもなんとか完走?いたしました。


 テレビ局の収録スタッフと別れてFさんと楽友協会を後にします。

 九月ですがウィーンはすでに肌寒く秋の気配。もうすっかり眼は醒めています。


「Fさん、すみません、後半チョットうとうとしてしまいました。せっかく貴重な席をとっていただいたのに」


 正直に申し上げました。まあ、お近くの席でしたし。


「いいんですよ、イガラシさん。極上の音楽を聴きながらウツラウツラするのは、最高の贅沢だと昔からいわれているんですよ。素晴らしい経験じゃないですか!」


 Fさん、お気遣いありがとうございます!

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