星天遊戯 ~幸運値を優先的に成長させたら、他のステータスが同レベルより化け物らしい~
乙丑
第1話・冒険の準備をせんとのこと
「まったく読めねぇ……」
パソコンのモニターを前に、オレ――
お目当てのVRMMORPGをはじめようにも、まずパソコンからゲームを配信しているゲーム会社のゲームの公式サイトにアクセスして、そこからゲームアプリの基本プレイアプリデータをダウンロードしてから、同会社が販売している専用のVRギアにインストールしなければいけない。
[
日本語ではそうなのだが、中国語で書かれたタイトルでは[
中国を拠点に、世界各地のゲーム業界を
「ちょっと試しにプレイしてくれね? 俺も始めようとしてるんだけど、ちょっと都合があってさ」
と、
それにしても、『星天』って中国語だと天の川って意味でいいなら[
そんなことを考えてはみたが、そのゲームの概要が紹介されているHPのタイトルバナーには堂々と――、
[XING KONG YOU XI]
と記されており、英語タイトルだと[Celestial Online]と称されている。
先の友人、鉄門がいうには、
「日本サーバーの配信タイトルは『
らしい。まぁ本来のタイトルよりそっちのほうが覚えやすいだろうけど、すでに決まったことにツッコミを入れてもなにも始まらないな。
「中国の会社だってのはわかっていたけどさ、翻訳ないのか?」
インストールデータのダウンロードページどこだよ?
普通なら日本語対応とかそういうことシてくれるのが普通だよね?
「まぁいろいろ見ていけば大丈夫だよな? トロイの木馬とかないよな?」
中国サイトってなにかと怖いんだよなぁ。いまでも阿片窟だし……。
「しかしまぁ、三国志とかそこら辺の時代をイメージした世界観のゲームってわけね」
紹介されているゲーム画面には、剣やら魔法やらで、モンスターとか
「かと言って、紹介文が中文じゃまったく読めないからねぇ」
かろうじて読めたのはゲームのタイトルだけ。
鉄門からはメールでゲームのタイトルだけ教えてもらったのだ。
なんか同じ会社が運営していたゲームを前にやっていたらしいが、突然サービスが終了してしまったようだ。
そのためかどうかは知らないけど、ゲームをやっていたプレイヤーはデータコンバートというものでそのままのステータスで再開できるらしく、それが星天遊戯のほうで実装されるまではインストールもしていないんだってさ。
人を誘っておいてなんなんだろうか?
こういうのは誘った側が先にやっておくべきことじゃないのかねぇ。
あれですかね? 要するにどういうゲームなのか教えてもらうってことか?
人を生贄にしないでほしい。
「えっと……ダウンロードは[下戴]でいいんだっけ?」
HPの上部にあるタグリンクをマウスカーソルでなぞっていく。
そこから[下戴]という文字をクリックし、ようやくゲームのインストール方法が書かれているページに飛ぶことができた。
「まぁ以前にもVRMMORPGはインストールしているからな、それとあまり変わらないだろうし、わからなくなったら鉄門に聞けばいいか」
自分でいうのもなんだが、楽観的だなと思った。
ゲームのHPから落としたアプリデータを、今度はVRギアにインストールしなければいけない。
VRギアをパソコンにUSBケーブルで繋げ、アプリインストールの起動ファイルを開くと、
VRギアID:53656972656E
ユーザー名:mehansis
パスワード:***************
と、VRギアに登録されているアカウントIDが表示され、その下にふたつの文字列がPCのモニター上に表示された。
「ギアのアカウントIDとパスワードを読み込んでいるのか」
まぁ読み込んでいるのはあくまでギアを制作した[セーフティー・ロング]だからいいけど。
◇ギアの言語設定は【日本】となっています。
・ゲームの言語初期設定は【中国語】です。
・ゲームの言語設定を【日本語】にしますか?
・【はい】/【いいえ】
という表記が出て来たので【はい】を選択。
◇VRギアに【星天遊戯】をインストールしますか?
*アプリの基本データ量は【2927MB】となっています。
・インストールを開始しますか?
・【はい】/【いいえ】
【はい】を選択すると、VRギアにゲームデータをインストールを開始したのか、パソコンのモニターにはインストール中という文字とパーセンテージを表したバーがウィンドゥとして表示された。
「さてと、ゲームがインストールされるあいだにプレイキャラの設定をしておくか」
と意気込んだのだが、いかんせん公式HPは基本中文だ。
「だぁ畜生っ! 読めるかぁっ!」
読めれば便利だろうけど、高校の漢文のテストなんていつも赤点だったわっ!
知ってても【
それくらい苦手だ。ろくすっぽ勉強していなかった結果だな。
ただこれ幸いに、情報ウィキがあったため、そこでゲームの概要を知ることはできた。
どうやら特に大きなストーリークエストがあるというわけではなく、モンスターを倒したり、ちいさなクエストをクリアしながらキャラを成長させていき、エリアをクリアしていく。
ようするにラスボスというのがいないため、エンディングのないゲームだ。
成長させるもよし。農家や産業を楽しむもよし。とにかく自由らしい。
「ゲームのクリア目的がないってのはいいな。というか開拓系に近いんだろうか」
まぁモンスターが出てくるからそれを討伐したりもするんだろうけど。
ギアにゲームがインストールされているあいだ、プレイキャラの設定を考えておこう。
「とりあえずウィキの情報を読む限りは、ベースになるステータスは
[
の六項目か」
六項目のステータスに対して、初期設定で割り振ることができるポイントは100。
これを均等に、「16」で割り振ると「4」ポイント余ることになる。
あとは好きなパラメータに割り振ればいいなと思うのだが、どうもそれは面白くない。
それに最初から職業を選択しておいて、あとからそれに合わせてステータスを設定するプレイヤーだっている。
「そうだ! たしかあれを持ってたな」
オレはスマホの中にTRPGで使うサイコロ判定用のフリーアプリを落としていたことを思い出し、そのアプリを起動させた。
「えっと、最初は[6D10]だな」
[6D10]というのは、十面ダイスを六回振ることを意味する。
その結果で、最初がどう変化するか見ものだった。
結果――
【STR:4】【VIT:4】【DEX:10】
【AGI:8】【INT:1】【LUK:10】
という振り分けになった。
「頭悪ッ?」
INTの振り分けポイントを見て、オレは思わず吹き出してしまった。
いくらランダムとはいえ、[1]が出るか? [1/10]の確率にしてもだ。
これがもし後々影響していたとしたら……うん、その時は潔くやり直そう。
あんまりキャラデリをし過ぎるとペナルティがあるのはどこのMMOでもいっしょだけど。
その時はその時で、あまり深くは考えないでいこう。
「よし、次だ」
さっきの振り分けの合計値は[37]。まだ[63ポイント]残っている。
「TRPGだと一発勝負だからな、ポイントが使えなくなるまで振ってみるか」
ふたたび賽を振る。ダイスの結果……。
【STR:4+[10]】【VIT:4+[5]】【DEX:10+[9]】
【AGI:8+[5]】【INT:1+[9]】【LUK:10+[9]】
という振り分けになった。
「な、なんか……[
サイコロは絶対確率ではない。人の力加減でいくらでも好きな目が出るのだ。
いわく、機械でやった場合は人の力は加わらないので、確率は変わらない絶対確率となる。
その中で、DEXとLUKは連続して9か10を出している。
INTも先ほどの
――合計すると、以下のようになる。
【STR:14】【VIT:9】【DEX:19】
【AGI:13】【INT:10】【LUK:19】
――ポイントの残高は[16ポイント]。
「たしか、[
実のところ高校の時と比べて、大学とかアルバイトとかであまりゲームをやらなくなったのだが、[
もしくは、他のステータスや職業別に成長具合が変わる場合もあるかもしれないが……。
「う~ん、見た感じバランス取れてる……わけないか」
こういうのはたいてい[
「こうなったら、残りすべてを[
オレは、なかばやけくそ気味にそう決意するや、LUKに残りすべてのポイントを振り分けた。
最終的に――――
【STR:14】【VIT:9】【DEX:19】
【AGI:13】【INT:10】【LUK:35】
というステータスに落ち着いた。
うむ、運任せだからね。
もともとどんな
そういうふうにしようとした自分が悪いわけなのだけど、意外に悪くない。
むしろ面白いキャラメイクになったのかもしれない。
「[
しかし、LUKが高いと、どうも某国民的RPGの遊び人を思い出してしまう。
「最終的に賢者に転職するってか?」
そんなシステムがあればの話だが。
とりあえず、これを初期ステータスのベースにするとして、さて職業はどうしようか。
もともと脆弱な[
とはいえ、これは自分でポイントを振り分けるようになっているはずなので、基本的には装備品のプラス補正に目をつけておくしかないか……。
「う~ん、[
とはいえ、これをソロでやろうと思うとどうもなぁと思う。
盾持ちはどちらかと言えば、協力プレイで敵の注意をひきつける役目――いわゆるタンクくらいしか役に立ちそうにないけど。
それに、最初から職業を決めていたら、こんな運任せのキャラメイクはしない。
「いちおう[
【星天遊戯】のウィキを見ていくと、『職業一覧』というものがあった。
第一職業から第三職業まであり、経験やレベルによって枝分かれしていくようだ。
その中でひとつだけ、あまり聞き覚えのない職業があった。
「[法術士]……こんなのもあるのか」
魔[法]と魔[術]を使う者って意味だろうから、魔法使いと同じ職業だろう。
だがどうもこの職業に魅力を感じる。
メテオみたいな強力な魔法というのは、レベルや使用回数によって命中率の補正があるかもしれない。
つまりはすくない命中率を高い幸運で補う。……
「あ、ちょっとそれおもしろそう」
ニヤァと、自分でも悪い顔だなと自覚。
無数の火の玉を放ち、それらすべてがモンスターに命中する。
自分が張った罠にまんまとかかったモンスターに雷撃をお見舞いする。
――その光景、まこと爽快なり。
「というわけで、職業は[法術士]だな。パラメータはさっき決めたままにしよう」
どうせ相手のステータスを詳しくは見えないだろう。
法術士なら知能多いよなって思うだろうけど……。
逆に考えるんだ。拳で語る魔法使いが存在したっていいじゃない。
最後にプレイヤーキャラの名前だ。
コレに関してはまぁ悩んだところでしかたがないのでいつものやつにする。
「さてと、これで事前準備は全部終わったな」
名前と職業、初期ステータスに対してのポイント配分。
それらすべてをメモ帳ソフトに入力し、いつでも見れるようにVRギアのバックグラウンドに開いておく。
ちょうどギアにゲームの基本データがインストールされたようで、パソコンにつなげているスピーカーから「ポンッ」という音が部屋の中に響いた。
意気揚々とギアを頭にはめると、VRギアのホーム画面が視界に広がっていく。
◇ようこそ[薺煌乃]さま。
・現在の時刻は[16:18]です。
◇あたらしいアプリがインストールされました。
・【星天遊戯】
◇新しくインストールされたアプリに対するウイルスチェックを完了しました。
・このアプリは良好です。
という文字が表記されていき、次にインストールされているゲームのアプリアイコンがVRギアのモニターに浮かび上がった。
「えっと、アイコンをクリックしてゲーム開始だな」
ポインターをアイコンに合わせ、「アプリ起動」と発音する。
ゆっくりと視界がフェードアウトしていく。
そして穏やかな中華風のBGMが聞こえ始め、ゆっくりと電脳世界らしい、0と1の羅列が周囲をまわるかたちで、エントランスホールを囲んでいた。
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