それでも彼女は娘として生きることを選んだ

38歳、独身、女性。派遣社員。

人生ゲームだとどうですか。ついてないな、って感じでしょうか。
でも世の中にはそんな人ごまんといるわけです。

ピンクのピックと青いピックと何本かのおまけと。
不動産と総資産とすごろこくのマス目と。
石油を掘り当ててやったーとかいう人生なんて、現実にはないわけです。

そんなことは誰でもわかっている。
わかった上で、カタログを眺めるみたいに、綺麗な花嫁を羨んだり、妬んだり、他人の資産が並んだ番付に圧倒されたりする。

人生と乖離した、現実からふわりと浮いた概念を、ボードの上でこねくり回している。



でも彼女はそんなボードのマス目を飛び越えて、自分のための、現実の人生を選んだ。そんなふうに見えました。

優しくはない、でも気の良い年下の恋人。一緒に暮らしているお母さん。一番美人で才色兼備だった友達。一緒に夢を追い掛けたけど、途中で降りてしまった友人。駒じゃない。現実の人間を持て余して、選びきれなくて、置いて行かれたような感じがして、でも。

でも彼女には自分の守りたいものがちゃんと見えていた。それは世間からは理解されないことだけど、生きていく上でとても尊いことだったと思います。

確かな人間観察と、人生に対する深い洞察。すごく好きな作品です。