ああ、これは文学だ。

ダメ人間とは何か。
ダメ人間を演じてやり過ごすことが日常化した男の、冴えない演技。
それを見抜く彼女。共感、連体感、奇妙な絆。やがて付き合い始める二人。

会話文は極力少なく、主人公の一人称モノローグでひたすら書き殴った本作は、だからこそ心情描写に特化していて、殻をかぶって生きて行く信念?のようなものが伝わって来る。

それは強がりでもある。身を守るための保身でもある。ダメ人間というキャラ作りをして集団の中のポジションを決めておけば、人付き合いが楽になるからだ。
それは彼女も同じ。できる女を演じ、明晰に振る舞うことで自分を作っている。
なればこそ、二人は分かり合えた。
そんな心の機微を読み取れたとき、作者の意図に気付く。

「これに同感できる読者(あなた)も、ダメ人間だなぁ」ってね。

これはそんな純文学。
人の心を書き連ねた、一般文芸。