第3話 溺死事件の謎

 翌日の放課後、都市伝説研究部部室にて。

 「溺死事件について、私のちょっとした伝手つてのおかげで、ある程度のことはわかったわ」

 玲子は腕組みをし、梨沙は前で手を組んで、冬子の言葉に耳を傾けた。

 「被害者は20歳、大学生の女性。刺し傷のような目立った外傷はないものの、腕や足には草葉で切ったような切り傷が無数にあり、また、背中や肩の辺りには、川底に強く押しつけられたようなあざが複数残っていた。死因は窒息によるもので、死後一週間ほど経過した状態で発見された」

 「その女性の外見とか、発見された時の状況はどのようなものだったんですか?」

 「今から話すわね。発見時の格好は半袖のTシャツにショートパンツ、靴はスニーカー、髪は茶で長髪、両耳にはイヤリングをしていて、現場付近の、川よりも歩道寄りの繁みには被害者の所持品と思われるスマートフォンと、ブランド物のポーチが一つ落ちていた。財布や高級品は盗られていない。ポーチの中に煙草とライターが入っていたことからおそらく喫煙者。被害者は深さ20cmもない川中に仰向けで倒れていた。衣服その他の状況から、猥褻わいせつ目的の加害とは思われない。被害者についてはこんなところかしら。それから、一つ不可解なことがあって……」

 冬子は言葉を区切ると、一度声を落としてから続けた。

 「現場付近の坂道には、犯人のものと思われるらしいわ」

 「つまり、どういうことだ?」

 「考えられる可能性の一つは、犯人は現場に何度も足を運んで何かをしていたということね。複数の足跡が別日に残されたものだとすれば、おそらくそういうことになる」

 「証拠隠滅のためであれば、一度足を運べば十分ですよね」

 「そもそも、何度も現場に通えば、それだけ犯人として怪しまれる危険性が高まることになるよな」

 「そのリスクをおかしてまで、犯人は何をしていたのか。この点は、私は非常に重要なファクターであると直観しているわ」

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