第28話 装備の更新





 契約を交わしてから、管理者用の空間から通常のゲーム空間に戻してもらった。後は現実で郵送されてくる契約書にサインして、送り返したらいいだけだ。

 さて、ゲーム空間に戻ったら部屋の中にはアイリが居た。彼女は宿屋の部屋に備え付けられているテーブルの上に紅茶を用意してくれていた。


「お帰りです、パパ。どうぞ」

「ただいま。ありがとう」


 差し出された紅茶を受け取って香りを楽しんでから飲む。紅茶はよくわからないので、アイリの趣味になっている。今日はダージリンのようで、いい香りがする。


「ふぅ~」

「お味はどう、です?」

「とっても美味しいよ」

「当然、です。ちゃんと仕込まれた通りに入れた、です」

「えいらね」

「えへへ~」


 アイリのスキルにはメイドのスキルもあり、結構高いからか入れ方の知識とかもあるようだ。


「アップルパイもあるです」

「ありがとう」


 アイリと二人のおやつタイムを行う。アイリはメイドとしボクに仕えてもいるので、なにかと世話を焼いてくれる。ボクが食べている間に放置している髪の毛を櫛で綺麗に整えてくれたり、髪形を整えたりといった身嗜みもやってくれる。ボクは適当にしちゃうので、助かる。


「はい、あ~ん」

「あ~んです」


 ご褒美にボクの残ってるアップルパイをあげると、嬉しそうに食べる。アイリは何度言っても自分の分を用意しないので、ボクの分を食べさせてあげる。それが嬉しいのだと思う。

 おやつタイムを終えたのでボクはキリング・マンティス対策として戦力の強化を図る。といっても、ドラゴンブレス以上のものはないので、ぬいぐるみや人形の方を改造する。でもその前にアップデートした時からステータスを見ていないので、確認してみる。



 Name:ユーリ

 Race:金竜〔幼体★★★★★〕

 CLASS:人形師Lv.2

 HP:4500+10000

 MP:2000+10000

 ATK:1800+700

 DEF:1200+300

 MATK:1200+200

 MDEF:1200+10

 STR:400+200

 VIT:400+500

 AGI:400

 DEX:1600

 INT:400

 MID:400

 LUK:400+300

 Skill:竜麟・金竜Lv.4、魔竜の心臓Lv.4、人形作製Lv.4、人形操作Lv.8、金属操作Lv.2、苦痛耐性Lv.10、直感Lv.5、幸運Lv.10、金竜の幼姫Lv.2、AI作成Lv.1、竜属性魔法Lv.3、火属性魔法Lv.3、水属性魔法Lv.3、風属性魔法Lv.3、土属性魔法Lv.3、闘竜技・金竜Lv.2、物理軽減Lv.6、連携魔法Lv.3、機人整備Lv.3、竜魂転生Lv.1、死霊魔法Lv.1、即死無効、死体収集Lv.1、腐敗無効Lv.1、デスペナルティ無効、切傷転移Lv.1、自爆Lv.1。

 CP:50

 装備:うさぎとオオカミのぬいぐるみ(攻撃力200、防御力100、耐久力80)

    床闇のワンピース(防御力200 スキル:ドロップ自動収集、身体能力増加Ⅰ(50%)、闇属性魔法Lv.2、自動回復向上Lv.1、闘争心増加Lv.1、自動修復Lv.3、暗視)

    疾風のブーツ(移動速度10%上昇)

    プルルの指輪(MDEF+10)

    飢餓のアクアグローブ(水属性の魔法の効果を10%上昇、空腹度の減り具合上昇・小)

    五体の家族人形 ランクC 耐久200/200(人数におおじて様々な効果を得られる)


 称号

 プルルキラー:プルル系統に対してダメージ50%増加。ダメージ軽減50%。ドロップ率10%上昇。VIT+500

 物理破壊者:STR+200、ATK+500。相手の物理耐性、物理障壁を無効化し、相手の物理防御力を50%削減する。

 上位存在討滅者:レベル差が10離れるごとにステータスが1.5倍される。

 死を愛する者ネクロフィリア:不死系に対する攻撃力100%上昇、防御力50%軽減、クリティカル50%上昇。不死系からの好感度50%上昇、天使系からの好感度50%低下。不死系に好かれる。

 死霊魔法、即死無効、死体収集、腐敗無効、切傷転移、自爆を習得。


「なにこれ……ネクロフィリアって、死体を愛して変なことをやる危ない人じゃ……」

「? パパは変なことを言いやがる、です。称号はパパがやってきたことに対して世界から付与されるものだ、です」

「やってきたこと……?」

「説明をみたらわかるぞ、です」


 アイリに言われて死を愛する者ネクロフィリアについて触れて、詳しい項目を表示させる。


 死を愛する者ネクロフィリア

 死という概念そのものを欲し、愛するという広いニュアンスの意味を持つ。

 死体愛好者、嗜虐愛好者、自殺愛好者、屍姦、死体性愛、死体収集者、死体解体者、死を楽しむ者。以上の称号の内、いくつかを収集する。またそのうちのどれか二つの回数が500を超えること。


 どうやら死を愛する者ネクロフィリアは複数の称号をあわせた手に入れた上位称号みたいだ。

 ボクが入手した称号は嗜虐愛好者、自殺愛好者、死体収集者、死体解体者だった。

 被虐愛好者は被虐体質の上のようだ。被虐体質の習得条件は自ら身体を傷つける回数が100回で習得できるみたい。その数が300を超えると被虐愛好者になるみたい。

 自殺愛好者は自殺回数が100以上で自殺志願者を習得する、300回で愛好者。ボクは500回を超えている。

 死体収集者は死体を100以上集め、アイテムストレージやコンテナ、家や宿に収集する。いっぱいコンテナに仕舞ってある。こちらも500を超えている。

 死体解体者:複数の人類種を解体する。



 おのれ運営っ! って言いたいけれど、うん……やっちゃったね。いっぱい素材として自分の死体を集めたせいだ。これは仕方ないかもしれない。


「これ、かなりやばいよね。不死系に好かれるってのもあるし……」


 正直、スケルトンはともかくゾンビは嫌だ。


「大丈夫です。殴り飛ばせばいいだ、です」

「なるほど。まあ、置いておこう。今は人形を作らないといけないし」


 ネクロフィリアに関してはこの際無視しよう。そんなことよりも人形を用意しよう。


「アイリ、ボクはこれから人形を作るよ」

「わかったです。アイも手伝うぞ、です」

「じゃあ、お願い」


 ボクの死体をコンテナから取り出して解体しようと思う。そう思ったのだけれど、すでに破損していた身体は解体されていた。髪の毛とかもちゃんとわけられている。生皮まであったので、そっちは廃棄ボタンがあったので処分していおく。いくらなんでも自分の身体の皮を使うとかないからね!


「アイ、解体されているみたいだけど、知ってる?」

「全部アイがやっておいた、です」

「そっか、ありがとう」

「ん~」


 撫でながら褒めてあげると、嬉しそうにしてくれる。アイリはボクのサポートの子だから、とっても嬉しそうにしてくれている。

 よし、ボクも頑張っていこう。

 さて、何を作ろうか……ぬいぐるみでもいいし、フィギュアタイプでもいい。まずはぬいぐるかな。今まではウルフのぬいぐるみを作っていたけれど、別のでもいいと思う。どちらにしろ、ドラゴンブレスの威力アップが必要だ。


「う~ん」

「どうした、です?」

「ドラゴンブレスの威力アップって、どうしたらいいのかなって考えていてね」


 隣のアイリはウルフのぬいぐるみを取り出して抱きしめながら、ベッドに座っている。ボクは椅子だ。


「パパはぬいぐるみでドラゴンブレスを撃っているですが、普通にドラコンの方がいいのです」

「ドラコンか……なるほど、言われたらその通りだね」


 ドラゴンブレスを放つにはやっぱりドラコンの形がいいってことか。当然と言えば当然だね。じゃあ、その形でやってみよう。


「ドラゴンの形ってどんなのかな?」

「それなら、おじいちゃんに頼めばいいと思ぞ、です」

「わかった。いってみよー」


 アイリと手を繋いでおじいちゃんの下に向かう。おじいちゃんは滝に打たれているようで、ボク達も一緒にやることになった。今日の鍛錬はまだだったのでやるのは丁度いい。





「それで何用じゃ?」


 ボク達は滝から出でから川の傍で身体を拭きながら、おじいちゃんに話していく。


「ドラゴン形態を見せて欲しいんだよ」

「みせろ、です」

「ふむ。よかろう」


 おじいちゃんは川の中に入ると、身体中から黄金の光を発して光の柱を生み出す。その黄金の光の中から100メートルクラスの巨大な金竜が現れて咆哮を放つ。


「――――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!」


 咆哮だけで世界が震え、水と地面が吹き飛んじゃった。ボクはアイリを抱きとめながら必死に耐える。二人で必死に見詰めているその金色に光り輝く竜は神様といえるような圧倒的な存在感と力を示している。


『フム、この姿になるのも久しぶりであるな。どうだ?』

「カッコイイ……」

「強そう、です」

『で、あろう』


 おじいちゃんはボク達に褒められてとても嬉しそうに顔を河原につける。その状態でボク達と色々とお話していく。


「そういえば、ボクの死体を食べたキリング・マンティスが真っ赤なオーラに包まれてたけど、どうしてなのかわかる?」

「そりゃ、金竜を食べて竜の力を手に入れたからじゃ」


 あのオーラはやっぱりボクを食べたせいか。食べることで竜の力を得て強化されたってことは、限界まで強化したらどうなるんだろうか?


「おじいちゃん、もしいっぱいドラゴンを食べたらどうなるの?」

『そうじゃな……竜族を喰らえばその力を手に入れられるが、それはつまり竜族へと近付くことを意味するのじゃ。もとの力を超えるほど喰らえば竜族へと進化するじゃろうな』

「へぇ~へぇ~」

「パパ、あくどい顔をしてるぞ、です」

「おっと」


 キリング・マンティスが竜族になるということはだよ? ボクの竜族に対する特攻が有効になる。できるかぎり食べさせない方向でいくけれど、削っていって相手が竜族になればかなり楽に倒せるかもしれない。


「それよりも、みなくていいのか、です」

「そうだった。おじいちゃん、じゃあちょっと調べさせてね」

『構わぬぞ』


 登らせてもらって色々なSSを取って計らせてもらった。その後は布を購入し、訓練所にある人形師用の工房へと移動する。

 そこで布をボクの血で染め上げてから、髪の毛を糸として縫い合わせる。支柱としてボクの骨を削って竜の形をする。心臓部分には竜玉を入れてその周りには綿のかわりにプルルのゼリーを衝撃吸収用にいれる。それと喉の部分はそのまま応用させてもらったし、竜玉からの導線として筋肉繊維も使わせてもらった。

 一応、竜玉はボクの力を注ぐことで元の力を増幅して貯めて置けるので、コストパフォーマンスがよくなった。腐敗防止も効いているので、生体人形っぽくなってしまっている。

 こんな物騒で怖い人体実験の産物なようなものなので、外見は可愛く作る。デフォルメしたミニドラゴンにして、色的に赤色なので瞳の大きな可愛いレッドドラゴンとなる。爪もちゃんとしているけれど、二の腕に装着するタイプにした。この仕様だとほぼドラゴンの素材で作られているせいか、かなり強力になった。



 ドラゴンのぬいぐるみ 評価A

 攻撃力1300 防御力1000 耐久力500/500

 金竜幼姫の腕ドラゴンアーム金竜幼姫の吐息ドラゴンブレス金竜幼姫の竜眼ドラゴンアイ金竜幼姫の心臓ドラゴンハート


 素材となっているボクの力も上がったからか、前よりも格段に強い。それに竜玉を混ぜたおかげかもしれない。どちらにせよ新しいスキルも増えているし、前のスキルも強化されている。


 金竜の腕ドラゴンアームは攻撃力を上昇させる効果で、1000ほど上昇させている。

 金竜の吐息ドラゴンブレスは龍脈と竜脈の力を集めて攻撃力を増幅させて放つ。

 金竜の竜眼ドラゴンアイはクリティカル20%上昇。

 金竜幼姫の心臓ドラゴンハートは力を増幅して貯めておける。具体的にはドラゴンブレス一発分であるMP1000。



 どちらもとっても強くなっている。竜眼はクリティカル20%上昇とかなり使える。一応、前のもみてみる。


 ウルフのぬいぐるみ 評価はB

 攻撃力200 防御力100 耐久力100/100

 竜の腕ドラゴンアーム竜の吐息ドラゴンブレス


 こんな感じで、攻撃力は圧倒的に高くなっている。やっぱり、布と緩衝材以外を全て竜の素材にしてあるし、中心部には竜玉を置いてあるのも理由だと思う。

 後はこれをもう4個作って両腕に2個装備する。残りは予備として仕舞っておく。他にも竜玉がない状態のを沢山作る。

 こっちは攻撃力800、防御力500、耐久力300になった。竜玉がないとそれだけ弱くなるみたい。他にも一応、ウルフやプルルのぬいぐるみを作っていく。

 ぬいぐるみを作るのに一日使ったら、運営からのメールでイベントの開催がされた。何やら限定ダンジョンが用意されているみたい。でも、ここからじゃ参加できないので無視する。

 その間にボクの死体を使った実験を行う。脳死したボクの身体に人形操作用の糸をだしてそれを取り付けてみる。だけど動かなかった。

 両手と両足につけてマリオネットみたいに操る物を作って試してみたら、そちらもだめ。ボクと同じ大きさだからどうしようもない。


「パパ、竜の力を流さないと駄目、です。その身体は死んでやがるから、動くはずがねーです」

「ああ、そっか」


 糸を通して竜の力を注ぎ込む。すると人形が発光して微かに腕を動かすことはできた。でも、それだけで全然力が足りない。


「パパの力が弱すぎるぞ、です」

「まあ、そうだよね。幼竜だしね、うん」

「修行あるのみだ、です」

「頑張る」


 こうなるとそのまま等身大のボクは諦めて全ての尺図を小さくした人形を作成する。関節部分は球体にしてできる限り骨を使う。それに実物そっくりに作るわけではないけれど、似せるために分解した身体を並べてそれをしっかりと模倣する。

 削り出しも工具に加工した爪を使ってなので滅茶苦茶大変だけで精密操作には丁度いい。筋肉繊維は束ねて着けて最後は布でしっかりと覆う。前に作った家族と同じくデフォルメしたボクのぬいぐるみだけど、こっちは髪の毛とかも編み込んだ特殊しよう。

 三日かけて作り上げたこのぬいぐるみはマリオネット仕様で片手で一体ずつしか操作できない。それでも他にぬいぐるみと違って1メートルと大きいし、強く作り上げた。

 作っててなんだけど、これはキリング・マンティスでは使えないので倉庫いき。格闘戦とかもするし、片手が塞がると逃げられないかもしれないからだ。

 というわけで、もっち小さなぬいぐるみを作る。30センチや50センチぐらいにして人形劇ができるようにする。複数体作って、ミニドラゴンに乗った状態のにしたりもする。他にも色々なぬいぐるみを作っていく。


「パパ、作り過ぎだ、です」

「ん? ああ……これは確かに……」


 つい夢中になっていたのか、大量の動物や木々などのぬいぐるみがベッドを埋め尽くすほどできていた。家族五人のもあるし、エルフのぬいぐるみや熊のぬいぐるみもある。これらは全てコンテナに戻そうとしたけど、いつの間にか部屋中にアイリが並べてファンシーな空間を作っていた。直そうとしたらアイリが悲しそうにするので放置しておくしかない。








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