第6話 東の草原での戦い






 メイシアと共に襲い来る大勢のモンスターとの戦いは粗方片付いた。ボクの攻撃力と防御力は高いし、メイシアは攻撃力と速度が高くて攻撃範囲も広いからだ。


「モンスターを引き寄せるなら、もっと奥へと行かないと迷惑になりますね。行きましょう」


 メイシアに手を握られて奥へと連れて行かれる。この辺りのモンスターは殲滅しているので、もう少し余裕はあるし話ながらでもいける。


「人はあんまり居ないっぽいけど、なんでかわかる?」

「ほとんどの人は既にチュートリアルを終えて、通常フィールドの方へ行っているからですね」

「そうなんだ」

「ここは練習用のフィールドですから、仕方ないです。βの時は行き来ができなかったので、製品版でも同じでしょうし……」

「じゃあ、ここは早く抜けた方がいいのかな?」

「そうとも限りません。こちらの敵は“普通”ならボスを除けばノンアクティブモンスター……こちらから攻撃しないかぎりは攻撃してこないモンスターばかりですから。それに見ての通り、モンスターがリポップ……再び現れる時間が早いですからね。通常フィールドではこうはなりません」

「なるほど」


 ボク的にはレベルを上げる為にここに居るのがいいのかも知れないね。ポップが早いなら数をこなせるだろうし、拳なら消費はないから。こんなふうに身体を無茶苦茶に動かすのも結構楽しいし。


「このチュートリアルフィールドに出て来る敵はウルフ、アント、プルルの3種類です。これ以外は確認されていません」

「プルル・ジョゴスは?」

「おそらく、ボスだからなのでしょうね。東の草原の奥には見ての通り、森が見えます」


 確かに視界の端の方に森っぽい何かが見える。かなり離れているようでここからじゃよく分からない。


「あの森って?」

「あの森にはウルフが沢山生息しています。そこではウルフ同士が連携して襲い掛かってきます。視界も悪い上に強化もされていますので大変ですよ」

「そうなんだ。行ったの?」

「はい、行きました。ですが、プルル・ジョゴスに邪魔されましたけれど」

「森の前にいるの?」

「そうですね。森の前はプルルが大量にいて、そこで出てきました」


 街の手前は色々といるみたいだけど、その奥から生息場所が固まっているのか。


「ここを出ること自体は街の手前で狩っていれば事足りるんですけどね。奥の方はβ時代のフィールドを訓練用フィールドとしてそのまま使っているようです。はっきり言って、強いですよ。装備も何もありませんし、さっさと通常のフィールドに行った方がいいです」

「でも、いいアイテムとかがあるかも知れないんじゃない?」

「一度、召喚石を使って蹴散らしたらしいんですけど、良い装備は無かったようです。経験値も低くなってるみたいですし、ポップ数が増えています」

「良い事ないね」

「ですね。ですが、ボスは偶に良い物を落としてくれるらしいですけど、確率はかなり低いですし、強いですから」

「まあ、そうだろうね」


 そのまま進んで行くと、寄ってくるモンスター増えてきた。それらを蹴散らしながら進んでいくと視界一面に溢れる大量のプルルが現れた。


「ここで一定時間か、一定数かはわかりませんが……大量に倒したら出てきました」

「じゃあ、やろうか」

「はい」


 それから二人で倒しながら話していく。


「そう言えばメイシアは魔法とか取っているの?」

「光魔法を少々。戦闘の手引きをすればスキルや魔法が貰えますからね。やらない人も多いようですが、やっておいた方が得です。ここ限定ですから、向こうに行けばできなくなります」

「そうなんだ」

「ええ」


 寄って来たプルルを蹴り飛ばし、飛んできたプルルを殴る。街の前に居たのはどれも一撃で倒せたのだけど、ここの敵は二撃入れないと倒せない。


「戦乙女の効果が切れたようですね。掛け直しますね」

「お願い」


 しかし、戦っていると身体の動きの無駄が減ってくる。格闘戦はそれなりに面白い。でも、人形がないのでボス戦闘は辛いかも知れない。


「あ、でましたね」

「1000体くらい?」

「ですね」


 大量のプルルが集合して巨大化していく。そして現れたのはプルル・ジョゴス。相手は不気味なうめき声をあげる。HPバーは6本。どう考えても強い。回りからは大量のプルルが押し寄せてくる。


「エンチャント・セイクリッド」


 メイシアが槍とボクの拳に光属性を追加してくれる。これで火力が増強された。ボクも開幕の一撃にドラゴンブレスを口から一気に放出する。金色の光に飲み込まれてプルル・ジョゴス以外の敵が消滅する。


「メイシア!」

「はい!」


 メイシアが前衛として突撃して敵の攻撃を受け持ってくれる。その間にウエストバックから取り出したマジックポイントポーションを飲む。


「不味っ」


 青汁よりもさらに酷い苦みが口の中を襲ってくる。それでも確かにMPが回復していく。こんな不味いもの、吐きたい。けど、飲まないと回復しないので仕方ない。これで後は放置すれば魔竜の心臓で回復してくれるだろう。


「ランスアタックっ!」


 槍を持って突撃し、プルル・ジョゴスを貫いていく。普通なら物理攻撃が効かないプルル・ジョゴスだけど、エンチャントのお蔭で物理攻撃も有効になっている。だから、ボクも殴って回復したらブレスを放って叩き潰す。

 みるみるうちにヒットポイントバーが削れていく。メイシアとボクが交代で戦う事で回復もできたので比較的簡単に倒せた。ドロップしたのはアクアシューズだったけれど、とりあえずこれは使わずに置いておく事にしてどんどん倒していく。やはり、経験値が多く美味しく感じる。まあ、2レベルになったせいか、数%しか増えないんだけどね。



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