冒険者の成長記−アルバートの場合−

樹 雅

第1話

ーー昔々、この世界が魔物によって支配されていた頃がありました。人間達は労働力または、食料として魔物達により大事に大事に管理されてきました。

ある日、魔物の王が病により弱り始めました。それを機に人間達は魔物からの支配に少しずつ抗い始めたのでした。

初めのうちは点々としていた小競り合いが、だんだんと人が集まり大規模な戦いになっていきました。しかし、人が集まり過ぎたために問題が起こりました。まず一つめは、食料の問題です。田畑があるのは敵地の近くで、そこはもう魔物により荒らされてしまった事です。二つめは人間関係でした。たとえ共通の敵がいたとしても考え方、物事の捉え方は違うのですから仕方がない事なのでした。

人々は飢えや疲れで戦いを諦め始めた時、一人の青年が周りの人々を励まし、共に戦ってくれる者を募りました。しかし、集まったのは数人でした。青年は遅すぎたのです。たかが数人では現状を打破出来るはずがないのですから。それでも諦めの悪い青年は、仲間と共に魔物達に立ち向かっていきました。正面からでは太刀打ちできないので、焼き討ちや毒殺などで勝利を重ねていきました。決して褒められた戦い方ではないし、仲間内にも反発する者もいましたが、犠牲を出さない他の方法も思いつかないし結果が出ている為、離れていく者はいませんでした。

ある日を境に絶望していた人々が一人また一人と集まってきました。青年が立ち上がってからひと月で、王城を陥落させてしまえたのでした。その後、青年は解放王・英雄王と呼ばれるようになっていました。しかし、未だ魔物の影響力が強い地域もあり青年達の戦いはまだまだ続くのでしたーー



これは、僕たちの国に語られている昔話。本当の話なのかどうかは分からないけれど、この世界には今もなお魔物達が存在していて大人達はを狩り続けている。確かに魔物達に村が襲われて被害が出るけれども、物心ついた頃に調べてみたら死亡報告があるのは狩りに行った人だけだった。狩に行く人達は、口々に根絶やしにしてやるって呟いている。その瞳は憎しみや怒りに満ち溢れてて、僕はあの人達の方が怖い・・・。大人になればあの人達の気持ちが分かるのかな。


「あー、なんでだろなぁー。あの頃の事が夢に出てくるのは。気持ちが知りたくて、冒険者を目指したきっかけではあるし、今日は見習いとしての初仕事だから繋がりはあるんだろうけどさ」と呟きつつ、ベットから起き上がらずに窓を眺めた。窓にはカーテンを閉めていたが、隙間から陽の光が漏れ、微かに道を歩く人の笑い声が聞こえる。僕は、ため息をつきながら、顔を洗いに行き、終わったらカーテンと窓を開けた。風はまだ冷えていたけれど、雲ひとつない青空に今日は暑くなりそうだな、と思えた。

身支度を終えて冒険者ギルドに着いたのは、昼前ぐらいだった。入り口の扉を開けながら、中を見回し、受付へと一目散に向かった。

「あの、見習いを同伴してくれる人を紹介していただけないでしょうか」と大きめな声で言うと、奥で作業していた女性が振り向きながら苦笑いし近づいてきた。

「ここに来るの今日が初めて、だよね。今の時間は誰もいないのよ」

「え、そうなんですか。じゃあ、何時頃に来ればいますか」

「んー、なんとも言えないかなー。冒険者って自分の都合のみで動いてるからさ、早い人は太陽が昇る前に来るし、遅い人は沈んだ後に来るし、場合によっては狩りを休みにする人だっているんだよ。だから、この後にもう誰も来ないかもしれないってこと」

「それだと、給金は、なしかもってことですか・・・」

「そうなっちゃうねー」と言われ床に膝をつき沈んでいると、金属が擦れる音が聞こえてきた。僕は扉の方を見ると、

「いやいや、そんな都合良く来ないから・・・」と受付の女性も顔向けると、扉が開き男が入ってきた。男は眼光鋭く鍛え上げられた身体であるが、どこか儚くも感じた。

「あら、ガルドじゃない。まだ街にいたの?」

「あぁ、鍛冶屋が手間取りやがってよ。まぁ、命を預けてる大切な武具だから、手抜きをされるよりはましだがな」

「そうよね、手入れ不足で危うく死にそうになって帰ってくる人は少なくないものねー」と受付の女性は溜息をついた。そして、心配そうな顔をしながらでも、と続けた。

「あなたは無茶しすぎなのよ。また一人で未攻略ダンジョンに潜ったそうじゃない。罠にでも引っかかったらどうするのよ!」

「俺が罠なんかに引っかかるかよ。まったく心配し過ぎなんだっつーの。そんなんだと老けるぞ」と、ふざけて言った直後、場の空気が一瞬に凍りついた。もっと正確に言うならば、僕の後ろの受付カウンターを中心にである。この瞬間、僕は、恐怖というものを身近に感じたのだった。ゆっくりと振り返ってみると、満面の笑みの受付のお姉さんがそこにいた。この場の空気にこれ以上耐えられそうになかったので恐る恐る質問する事にした。

「あ、あの、この人は、どちら様でしょうか?」

「ん?あぁ、このおじさんはね、ガルドっていう命知らずのばかよ。まぁ、誰かと組もうにも自分勝手な行動ばっかりでみんなからハブられてるんだけどね〜」ふと、頷きつつ聞いていた僕と目があうと、何かを思いついたようで手を合わせた。

「ガルド、この子の付き添いよろしくね。実力だけなら信頼できるし」反論しようとするガルドを一睨みで黙らせて、結論付けた。ガルドは何か言いたそうにしていたけれど重たい溜息を吐いて了承してくれました。こうして、僕は冒険者としての第一歩を踏み出す事になりました。


そういえば、まだ自己紹介がまだでしたね。僕はアルバートといいます。駆け出しですがよろしくお願いします!!


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