~ハウツー編~

1.まずは自分と自分で打ち合わせをしよう

 前回までは「自分が電子書籍の制作活動を始めるまで」について、自分の経歴などを含めてお話しさせていただきました。おかげさまで大変多くの方にご興味を持って頂けて、自分としましても恥を忍んで打ち明けてみた甲斐があったかなと自負しております。


 ですが単純に「作り方が知りたい」という方々にとっては、少々迂遠な話ばかりで退屈させてしまったのではないかと反省もしております。

 そこでここからは、電子書籍を作るために何を始めたらよいか、まず何から手を付ければ良いかなど、自分の経験を通してお話していきたいと思います。


 これまでの導入編を読んでいない方が、こちらの実践編だけ読んで頂く分にも全く問題有りませんし、そう読めるものにしていきたいと思います。


 さて、何から始めるかについてですが、「まずはとにかく作品を書け」という方も居るとは思いますが、自分は経験を通してそれは少し違うなと思いました。


 作品を販売するということは、作者としてだけではなく、として責任をもって立ち回ることも要求されます。

 作者である自分にどんな原稿を要求し、どんな販売路線を確保していくか、事前の打ち合わせをしっかり行いましょう。

 僕もよく脳内で編集自分と作家自分をそれぞれ脳内に作って一人脳内会議を毎日のように行ってます。


 まず自分が書きたい作品が、何をするためのものなのか――例えば何かのコンテストに応募するためなのか、友人に見せるためなのか、販売物を作るためなのか。

 弘法筆を選ばずとは申しますが、我々は弘法ではないので、筆と紙はむしろ選んだ方がいいのではないかと思います。


 また、書く媒体によって記法や書き方のペースも大きく変わってきますし、内容が変わってしまうことも多いです。


 例えば「カクヨムで毎週更新するために書いたものを書籍化する」というのをイメージしましょう。

 読者の注目を集めるため、毎週更新を心がけようとするかもしれません。更新することに必死になるあまり、多少納得がいかなかったり整合性の取れない文章で、話を進めてしまう、なんてこともあるでしょう。

(僕は実際、以前にこの失敗をしてしまったので、Web小説を書くときは事前にかなりの準備期間と書き溜めを要すると感じました)


 自分が取った方法と同じように、まず1冊分を書き上げてみて、公開は後追いで順次行っていく、という形式も考慮に入れていいものだと思います。

 ただし読者のダイレクトな反応を取り入れづらく、Web小説のリアルタイム性が損なわれるとか、長期連載するかどうか読者の反応を見てから考えたい、と言った場合にはまずWeb連載をしてみて読者の獲得を優先することも考え方の一つでしょう。


 また、「昔書いた応募用の作品を書籍として販売したい」という方も、まず「Web公開を行うか否か、行うとしていつ行うか」は事前に慎重に吟味してみてください。先述した通り、既に多くの見込み読者を持っている方なら、いきなり販売から始めることも可能だと思います。

 しかし無名の一介の作家が、いきなり作品だけを出したとしても、集客や宣伝で大変な苦労をすることになるかと思います。作品そのものを使って作品の宣伝をするというWeb公開の戦略は、リスクを伴うものの充分賭けてみる価値のある方法論でしょう。


 詳しくは後述しますが、販売サイトの規約によっては「外部で公開すると契約の取扱いが変わる」ものや、逆に「販売を行っている作品の公開について規約を設けている」Web投稿サイトも存在します。

 あとで規約の存在に気付いて苦しい思いをされた、という方も知人には数多く見られます。当たり前の話ですが、たとえば「一度電子書籍として販売してしまった作品はカクヨムのコンテストに応募できない」などが代表的な事例です。


(ただし、販売した作品でも応募せず公開するだけならばじゅうぶん可能です。しかし、規約にあるとおり販売作品の宣伝を「カクヨム」内で行うのは規約違反なので、そことの兼ね合いは充分吟味してください)


 電子書籍販売は、まだ「これが誰にとっても確実な正解」という模範解答が、数少ないです。逆に言えば、自分だけの正解を探し出す余地は、数多く残されていると思います。

 自分の体験談を始めとして、Webで自分の活動の詳細を公開されている方も多いと思いますし、仲間が増える分には歓迎したいので、大体の人は聞けばけっこう色々と答えてくれると思われます。




 まとめとして


1.自分が書きたいものがどんな連載、どんな媒体に適したものかよく考える。

2.ただいきなり公開したり販売するのではなく、目的に合わせて公開する。

3.販売にしろ公開にしろ、まず利用しようとするサービスの規約をしっかりと確認する。


以上のことを心がけるのが、作品を書くよりまずは第一だと思いました。

次回は原稿作業に入るうえでの意外な注意点をまとめていきたいと思います。

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