計画的無計画

 前回、両親に対する暴言を吐いてしまった私だが、思わぬところで仕返しが待っていた。

 二年制の私の学校で、呑気に学校生活を送っていた私。

 友人と遊び呆けたり、ラブラブな生活を満喫したりと、ろくに小説も書かずに過ごしていた。

 二年目を迎えた頃、母が電話口でこう言ってきた。


「あんた、在学中にデビュー出来なかったら、実家に帰ってきてもらうから」


 一ミリたりとも想定していなかった言葉に、私は唖然とした。

 誰がこの生活を捨てて、田舎へと戻らないといけないのか。あんなところに未練など全くなかった。

 私はデビューはしなくとも、何かしら仕事を見つけ自活するのだろうと思っていた。ところが母には、私が仕送りもなく一人で生計を立てられる人間だとは露ほども思っていなかったのだ。


 これには相当参った。

 ちなみに、両親には教師との付き合いは知らせていなかったのだが、母はなぜかそのことに気づいていた。

 これが母親特有の第六感というやつだろうか。自分の子供のことならばどんな変化も見逃さない。確かに、本人に自覚がないのに「顔色が悪い」と不調を言い当てたりしていたこともあった。

 しかし残念ながら、私も立派な人の親だというのに、この特殊能力は備わっていないように思える。

 これから発動するのだろうか。それとも先天的なものなのだろうか。素直に母の偉大さだと認めないあたり、私には一生縁のない能力なのだろう。


 卒業までになんとか状況を打破しなければ、私は教師と離れ離れになってしまう。

 さて、どうしたものか。

 ここでがむしゃらに小説に打ち込まないのが私だ。

 理由としては、現実的ではないこと。自分の実力はよくわかっているつもりだ。さらに、そこに時間を費やして教師と過ごせなくなるのが嫌だった。

 そこで私の出した結論は。


 既成事実を作ろう。


 そこから私は、子作りに精を出した。

 こいつ、バカなのか? と思うだろう。今なら私もそう思う。

 育てることを想定せずに、ただ一緒にいたいというだけで子供を作ろうというのだ。ある種の方々から徹底的なお叱りを受けるだろう無責任さだ。しかし安心してください。結果オーライで申し訳ないが、子供たちは幸いにもすくすくと育っております。


 もくろみ通り私は妊娠し、両親は認めざるを得ず、中退して教師と結婚することになった。

 こうして私は遊びたい盛りの十代最後を結婚と出産で締めくくった。後に周囲と自分とのあまりの状況の差に後悔することになるとも知らずに。


 一度も働かずに母となる世間知らずの私。当然貯金はなく、そもそも生活するために何をしたらいいかすらわからなかった。

 買い物ひとつもろくに出来ず、安いものを買うという発想もなく、家計を圧迫してはよく怒られた。


 ここまで見ると、いかにテキトーで行き当たりばったりな人生かと思うだろうが、案外私はこの生活を楽しんで生きていると思う。

 例え滅茶苦茶で後悔したとしても、状況を受け入れざるを得ないと腹をくくってしまえば、なんとかしてしまうのがB型のいいところだ。

 なんだかんだで、今でも旦那とは仲がいいし、両親との関係も良好だ。子供に至っては、最初は苦労したが若いうちから子育てが終了するので、後にたっぷりと遊べると思えば、今から楽しみでならない。

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