第6話 不都合な真実と都合の良い解釈

義経の絶叫が館に響く。

「ごめんね、義経ちゃん」

ペロっと舌を出す、静ちゃんである。

「ご苦労であったな」

お礼にお金をいただき、館を後にする。

クルッと館を振り返り、もう一度

「ごめんね~、また逢えたら、謝るからね♪」


その頃、義経は縄で縛られ、亀甲に固められていた。

白い肌にふんどし一丁、赤い縄が肌に食い込む22歳。

義経、2度目の酒での失態である。


「よいぞ~、よいぞ~」

秀衡ひでひら、ご満悦の境地である。

ふんどし一丁のご老体である。

「No~、No~!」

義経の絶叫が館に響く。

「ベン・ケーーーー!サブローーーー!」


「いかがなされた、御館様おやかたさま失礼つかまつる」

寝室に飛び込んできたのは、

佐藤三郎嗣信さとうさぶろうつぐのぶ』『佐藤四郎忠信さとうしろうただのぶ』佐藤兄弟である。

御館様おやかたさま…………」

「はっ!」

秀衡ひでひらの表情が強張る。

強張ったふんどしが緩む。

嗣信つぐのぶ、違うのじゃ、誤解じゃ」

御館様おやかたさま…………私のことは……」

涙ぐむ嗣信つぐのぶ(佐藤 兄)。

それを見て『え~っ』てなってる忠信ただのぶ(佐藤 弟)

兄者あにじゃ……まさか……御館様おやかたさまと……そういう」


悪い間で、三郎とベン・ケーが千鳥足で寝室へ入ってくる。

「ウィ~、殿~、ヒック、どうしました?」

「Oh~Boy、Eccentricエキセ~ントリック! HAHAHAHAHA! Enjoyエンジョイシテマスカ?」

「エンジョ~イしてねぇよ! ヘ~ルプ!ヘルプミーじゃ」


秀衡ひでひらが性癖を晒し

義経が貞操の危機を脱し

嗣信つぐのぶが傷心し

忠信ただのぶが兄を汚物のような眼でさげす


ベン・ケーは酒のせいか、KYのためか、Boyが愉しそうに見えていた。

三郎は

(これで、褒美(口止め料)倍率ドン!)

とガッツポーズである。


静かに、おごそかに、各々が思いを内に秘め、自室へ戻った。


「殿!やったな!」

「なにがじゃ!やってはおらんぞ!断じて!やっても、やられてもおらん」

泣き顔の義経である。

「そっちじゃねぇ!そっちはどうでもいい!」

「どっち?じゃあどっちの話なのじゃ」

「いいか、これで平家討伐に名乗りを挙げれるぜ」

「どういうことじゃ?」

「北の王、男色家だんしょくか、あまり名誉なことじゃねぇ、奥州17万騎、手に入れたも同然だ」

「そんな簡単なもんかの~男色くらい、知られたからといって困るかの~、寺にはおったぞ、結構」

「あの動揺をみただろ?知られたくねぇんだよ」

「それは、嗣信つぐのぶに見られたからであろう」

「威厳の問題だ、とにかく明日の謁見が楽しみだ、金でも兵でも構わねェ」

酔ったベン・ケーが寝返りうって、ふすまに大穴を開けたころ、三郎の高笑いが館に響いた。

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