第41話 異世界にてドラグニアに宿泊

「……参った。私達の完敗だ」


「あらあら、まさか私達が負けるなんて~天士様はお強いのですね~」


「お前、やっぱりすごいなー。なあなあ、あれどうやるんだ? 地面に当たったボールがスピンしたやつ。あれ、私にも教えてくれ」


「いやぁ、あれはテクニックがいるから教えてすぐには出来ないかもね」


 試合が終わり、すぐにドラコ三姉妹がオレの傍に来て、そう言ってくる。

 ちなみに一番下のメルティナはオレが最後に見せたあのスピンのボールが気になったのかオレの腕を引っ張り、しきりに「教えてー教えてー」とねだってくる。


「こら! メルティナ! あまりそうやってくっつくな! わ、私だってこいつに聞きたいことが色々あるんだぞー!」


「えー」


 とそんなことをやっているとディアーナがメルティナの首根っこを掴んで自分の傍に引き戻す。仲のいい姉妹だ。


「それで~皆さんはこれからどうするのですか~?」


「えっと、そうだね。とりあえず練習試合も終わったし、このまま帰ろうかと思うけれど」


 システィナさんの問いにオレが答えると、慌てた様子でディアーナが引き止める。


「ま、待て! なにもそんなに急いで帰ることはないだろう! そ、それに今から帰ったらすっかり夜になってしまうぞ! ここはどうだろうか? 我がドラグニアの国に泊まるというのは!」


「え、ここにですか?」


 思わぬディアーナの発言に驚くオレ。だが、それに構うことなく彼女は続ける。


「そうだ! 我々は強者を尊ぶ。練習試合とは言え、我らドラコ三姉妹に勝ったのだ。お前たちにはぜひ我が城でゆっくりと鋭気を養って欲しい。むしろ宿泊代など一切不要だ。ここにいる間はお前達は我らに勝利した強者としてそれ相応のもてなしをしよう。どうだ?」


 ディアーナのその提案にオレはミーティアを初めてとした皆の顔を見る。

 皆、それぞれにオレに任せるといった顔をしていた。


「いいんじゃねえか。向こうがそう言ってるんだ。世話になろうぜ。天士」


 とオレの背中を叩いたのはリーシャであった。

 確かに今から帰るとなると夜遅くなる。それにどのみち、人族の王国までそんなにすぐに戻れる距離じゃない。

 しばらく、この国で休むのもいいかもしれない。

 正直、オレも久しぶりの全力スポーツだったので疲れていた。


「わかった。それじゃあ、お言葉に甘えて少し厄介になるよ」


「そ、そうか! では、早速城の者達に手配をさせよう!」


 そう言ってディアーナがすぐ近くのドラゴン族達を呼び寄せると手配を始める。

 それと同時に試合が決着すると、観客席からはオレ達を称える声がいくつも聞こえ始めていた。


「よー! 人族代表ー! さっきの試合すごかったぜー!」


「まさか我々のドラゴ三姉妹を倒すとはなー! 見直したぜー! 人族ー!」


「天士様ー! あとでサインお願いしますー!」


 と会場に入る前とは大違いのオレ達に対する賞賛の声。

 そんな会場から祝福の声を聞きながら、オレ達はディアーナの案内に従い、この国の城へと向かうのだった。


◇  ◇  ◇


「さあ、好きな部屋を使っていいぞ。一人一部屋から二人用の部屋と様々だ! どこでも気に入ったところを使ってくれ!」


 そう言ってディアーナに案内されたのは城の豪勢な部屋が並ぶ廊下。

 軽く中を確認したが一人用の部屋でもかなりの大きさで高級ホテルのスウィート並みだ。

 こんないい部屋をオレ達だけで、しかもこのフロア貸切とのことなのでかなりの気前の良さだ。

 そのことを含めてディアーナに礼を言うが「べ、別に大したことはないぞ」と顔を背けられる。


「それじゃあ、部屋割りはどうする? オレとセルゲイで二人部屋を使って、ミーティア達は好きなふうに使って感じで……」


「おまーちくださーい!」


 とミーティアがオレの意見に待ったをかける。


「折角なのでクジで決めませんか! 部屋割り! 平等に!」


「へ? クジ?」


 急にどこからともなく箱を取り出し、そこにそれぞれの部屋の番号を書いた紙を入れるミーティア。


「これで同じ番号を引いた人が同じ部屋というので、どうでしょうか!?」


 いや、どうでしょうかと言われても……とか思っているとイノまで「それでいきましょう!」と食いついてきた。なんだろうか、この二人。変なところで気が合うな。


「それでは行きますわよー! てやー!」


 ミーティアの叫びと共にオレ達はそれぞれクジを引く。そこに映った番号は――

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