心清らかな貴族の娘と、残忍な一族の優しき若者。二人の出逢いのその先は…

タイトルと序章に「神話」の要素が取り込まれているので、「異世界ファンタジーなのでは?」と思いながら本文を読み始めると……

いきなり迫力ある格闘シーンに引き込まれる。

そして、一癖も二癖もある個性的な登場人物が背負う物語に魅きつけられる。特にヒロインが清楚で可憐、それでいて、芯の通った頭の良い女性として描かれているのが好印象。

背景となる不思議な世界観。中国マフィアを思わせる一族は、残忍かつ狡猾でありながら驚異的な美貌を誇る、という設定は乙女心をときめかせる要素ともなり得る。

階級社会での様々な群像劇が繰り広げられる中、マフィアの末っ子である若者と貴族の娘であるヒロインの焦れったいほどの純愛に感情を揺さぶられ、禁忌を繰り返す謎の組織の不気味さに背筋を凍らせ……

これでもか、と言うほど娯楽要素が詰め込まれた物語は、流れるように美しい文章で語られる。まさしく「シンフォニア」の名にふさわしく、様々な音が共鳴しながら創り上げられる深い楽曲に耳を傾けるように、物語の世界に浸って頂きたい。

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