ノウハウ編 第5話 よいセックスのマインドセット

習熟が必要な物事は何でも「基礎」が一番大事である。セックスでも同様だ。


これまで書いてきたように、日本ではお粗末なセーフセックス信仰と窮屈な倫理が支配しているため、この「性の基礎」が社会的に共有されていない。



実は女の子から「パートナーのセックスがお粗末すぎて何とかして欲しい」とこっそりと相談をされることは本当に多い。


釣った魚に餌をやらない日本人男性は多いが、ある意味で彼らは「正しい餌のやり方」、つまり性を通じた正しい男性性と女性性の育み方を知らないのだ。



昔はそういう女の子に「じゃあ俺が」と言ってセックスを教えこんであげたりしていたが(第10話参照)、そうしていたのは、女の子は身体で一度「良いセックス」を知れば、その後の人生の異性の判断基準を持つことができることを知っているからだ。


行為の最中はいろいろやらなければならない男からすると、女の子は不思議なまでに理性の部分ではセックスのことを客観的に捉えることができないが(自分がどうされていたか、どうなっていたかは理性的にほとんど覚えていない)、身体本能のほうではどの男が自分をどう抱いたかを極めて正確に覚えている。


そして、一度「正しいオス」に抱かれれば、その次にいい男を抱いた時に本能の部分で「これがいい!」と判断できるようになるのだ。


日本のような社会では、多くの女の子がそうした基準を持つことはなかなか困難なことだ。



ただ、相手の男のセックスに不満を抱いている女の子は多すぎるので、彼女らの要望に応えていては身がもたない。また、自分や相手のパートナーのことを考えると、人間関係上の問題もある。流石に自分のタイプから大きく外れた子を抱くことも難しい。



さらに、女の子にとって、相手の男をちゃんとセックスが上手い男に育てられるかどうかは良い人生を送るための重要なポイントになる。そのことを自分で学ぶのも大事なことなのだ。


若さや容姿を盾に、縁があった男を使い捨てするよう女の子は、最終的にロクなことにならない。


自分で相手の男と良い関係を作っていくことができないので、自分の市場価値の低下とともに段々と付き合う男の中身のグレードが落ちていって、場末のスナックにいそうな乾いた女性になるか、妥協で結婚した男との生活にくたびれたおばさんのようになってしまう。


本編の様々なエピソードで見てきたように、相手の男と性に向き合うことで、女の子の人生にも様々な恋愛模様が描かれて生き生きと成長していくのだ。



そういうわけで、今は「パートナーのセックスがヘタクソすぎる」という不満を訴える女の子には、基本的にコンサルティングとして個別に話を訊いてアドバイスをするようにしている。


カップルによって事情はいろいろあるが、問題のパターンはいつも決まっていて、処方箋アドバイスは同じ解決法のアレンジバージョンでしかない。


みんな難しく考えすぎているが、実は性の本質を堪能できる「気持ち良いセックス」というのは誰にでもできることなのだ。



性の癒やしや内面の成長の糧となる「気持ち良いセックス」で大事な要素は、下記の要素だけだ。


・自分と相手のマインドセット

・環境

・周期とタイミング

・食生活

・ベーシックなテクニック

・相性


たったのこれだけなのだ。


せっかくなので、ここでご紹介しよう。



◯ 自分と相手のマインドセット


生物学的な観点で言うと、セックスは女の子が男を「良い遺伝子の提供者」かどうかを試す営みだ。


女の子はより好みをしなければセックスの相手が見つからないということはまずないが、男の場合はセックスをする相手を見つけるだけでも一定の労力を必要とする。


いかに男女平等を重視する社会になりつつあると言っても、この「性の掟」は変わらない。



女の子は男と性的な関係になると、自然と子を持つのに適切な相手かどうかを判断しながら関係を作ることになるが、男側は必ずしもそうではない。


女の子と違って、男は生理的な授精可能な時期が長いため、子や正式なパートナーを持つ役割や責任から逃れ続けることができるからだ。


妊娠した女性を捨てて養育費も払わずに逃げる男の話はどこにでもあるし、また2割を超える高い生涯未婚率でも伺える通り、日本では女性と向き合えない幼稚な男が多い。



逃避とは麻薬のようなもので、自分が良い経験を得られないことを周囲や与えられた運命のせいにし続けていれば、自分の課題に向き合わずにエゴや自分の欲望に浸って生きていくことができる。


ただ、女の子は生理や妊娠可能年齢などで常に「母になる身体」と向き合わざるを得ないため、どこかでこの逃避をやめようとする人が多いが、男の場合はこうした事情がないために欺瞞によって逃避し続ける人が多いのだ。


彼らは、イケメンじゃないと恋愛ができない、社会が悪い、時代が悪い、会社が悪い、親が悪い、彼女が悪いと言って自分の問題から逃げ続けている。


世の中の男全員が自分の問題に向き合えるようになるというのも理想にすぎないので、女の子はこうした「負け犬」を掴まないことが重要だ。



負け犬は所得や社会的ステータスとは関係なくどこにでも存在していて、女の子が彼らと付き合ってしまうと、セックスで満足できないのはもちろん、彼らの逃避に巻き込まれて浮気されたり不倫された挙句捨てられてしまったりする。


負け犬でも異性として相性が良いことは当然あるので、相手を好きになってしまうこともあるだろうが、彼らと中長期的な関係を築くのは非常にリスクの高い人生選択になる。


20代ならリカバリーも効くが、30代を過ぎて負け犬の男と中長期的な関係を持ってしまうと、その後の人生後半戦全体に影響してしまう。そして、こうした失敗をしてしまう女の子は非常に多い。


だから、上に書いたように、良いセックスを経験して「正しいオス」を見極められる本能の基準を持つというのは大事なことなのだ。



男の場合もパートナーを選ぶ際のマインドセットの基準は同様で、性をお互いに愉しんで育み合う中長期的なパートナーを得たければ、逃避をやめて現実を見るようになった女の子、または現実を見たいと願っている女の子と付き合うのがベストだろう。


そういう子は性にも積極的なので、ある意味とてもわかりやすい。


自分の性と相手にちゃんと向き合うことがより良いセックスと人生をもたらしてくれるのだ。

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