betta

 クルーザーを持っている知り合いが家に来て、ペットの淡水魚を見ていった。「海水魚はやらないの?」「大変そうだからやらない」「三日に一度――」海に行って海水を汲んできて換水すれば大丈夫、と知り合いはワインに口をつけた。三日に一度と言っても浜までは歩いて二十分近くかかるので正直しんどそうだ。「熱帯魚が捕れたらあげるよ」可愛い魚が捕れないのか、その話は流れたままになっている。


 今日になって夢を見た。私はバケツを持って浜まで来ていた。波打ち際から海水を掬うと横たわって死んでいるような赤い魚が何匹か入ってきた。たまに縦になって泳いだと思えばまた横たわって動かなくなる。そのバケツの中に一匹だけ色鮮やかで透明のひれが棚引く魚を見つけた。錦のベタだ。歩いて帰るときは海沿いの国道を越すと直ぐに家だった。右に折れて堤防に行くと、砂浜はないけれど海が広がっている。曇り空が海の上に続いていた。私が見る夢は大抵が曇りか夜だ。「わざわざ歩いて行かなくてもここで海水が汲めたのかな」夢の中でそう思った。

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