第10話 王都帰還

「う~ん。どうしようかな?」

蒼太の悩む声がこだまする。

破滅級魔法を使いド派手にトラント廃坑から出てきて、王都へと帰ろうとしていた蒼太たちであったが、帰り際に重大な問題に気が付いたのだ。

ハクの姿で王都に入ったら大騒ぎになってめんどくさいことになるよなぁ~。」

 そうなのである、なにせ白は幼体といえど龍皇なのだそんな怪物が街に入ってきたとなると大騒ぎ間違いなしなのだ。なにか解決できる方法はないかな?

白のスキルにこういう事態で使えそうなのはなかったしな…。とりあえず俺のスキルで何か使えそうなのはないかな~。

 10分後…


 20分後…


 30分後…

「あった~!!!つかれたぜ。」

蒼太がスキルの多さに挫折し探すのをあきらめかけたときにそれはやってきた!


・恩恵

 持っているスキルを他人に与えることができる、与えれるスキルは対象の種族とレベルによって決まっている。


・擬人化

 人型でないものも人の形態をとることができるようになる。


この2つを使って白に擬人化を与えたらばれ難くはなるだろうからいいだろう。

「白! 今からお前に擬人化のスキルをあげるからそれを使って人型になってくれ!」蒼太はそう言って恩恵のスキルを使い白に擬人化のスキルを渡した。

 というかなんで人族なはずの俺が擬人化なんていうスキルを持ってるんだ?本当に。


「しっ!!静かに!」蒼太は今隠れている森の中の近くの道を比較的大勢の生き物が歩く足音が聞こえたので。シャルティに静かにしておくように言った。白は足音が聞こえた瞬間に静まって警戒体勢をとっている。

蒼太はシャルティを守っておくように白に言い街道沿いへと近づいていった。


「なあなあ。本当に魔王なんか出たのか?」

街道沿いの森の茂みに隠れている蒼太の耳に入ってきた声は昨日まで一緒にいたクラスメイトのものだった。クラスメイトの一人は疑問を騎士と思われる人物にぶつけている。その問いに騎士は「はい、この世界で唯一破滅級魔法を使うことができるのは魔王だと言われていますので。」と答えていた。

茂みに隠れている蒼太は期せずして、この世界の事についてを、メフィアから以外の情報を得ることが出来そうなので、一人小声で歓喜していた。

「そんなに破滅級魔法って強いのか?」クラスメイトはさっきの説明にピンとかなかったらしく、騎士に聞き返していた。

「はい、強いです。人族の使える一番階級の高い魔法は災害級ですが、破滅級はその上です。最高位の魔法と言われています。しかし、魔王は最近発生したと思われておりますので、まだレベルは低いと思われているのでそのように緊張せずとも大丈夫ですよ。」騎士の返答には蒼太知らないことが多く含まれていた。

破滅級の上の階級の魔法は知られていないのか。ならいざというとき以外は使わないほうがいいかな。そして魔王に破滅級魔法?トラント廃坑で破滅級魔法を使ったのは俺だったから魔王なんていないと思うんだけどな。


蒼太がそんな事を思っている間にクラスメイトと騎士団の行列は最後まで蒼太に気づかないままトラント廃坑の方へと通りすぎていってしまっていた。蒼太は少しでも情報を得ることが出来たので満足し、白とシャルティのいる場所へと戻っていった。

蒼太が白とシャルティのもといた場所に戻るとそこにはシャルティと綺麗な純白の髪をした幼女がいた。

「ダレェエエエエーー!!」



「蒼太!私だよ!白だよ!」白い髪の幼女は蒼太に向かって叫んできた。

「本当に白なのか?龍の姿じゃなかったか?」蒼太は思ったことを白に向かっていった。

「もう!蒼太が擬人化のスキルをくれたんでしょ!」

「本当に白なのか!」蒼太はやっとわかったようで白を抱き上げた。


「さて、王都へ帰るか!」蒼太の言葉にシャルティと白は返事をして森から出て街道へ戻った。


王都のギルドは大騒ぎとなっていた。ゴブリンの耳を規格外の量もちこんだ冒険者がいたのだ。その話は冒険者の間ですぐに噂として広まっていった。その噂の中心である蒼太は現在、王都の冒険者ギルドのギルドマスター室にいた。

なんで俺こんなとこにいるんだ?

 俺がギルドに倒したゴブリンの耳の換金と依頼の達成の報告に来たらゴブリンの耳の多さに驚かれって俺も528匹分もあるとは思っていなかったが。などと思っているとギルドマスターに呼ばれてここに至るというわけだ。もちろんシャルティと白も一緒だ。

「待たせたな!」そう言って扉から身長が2メートルくらいありそうなおっさんがやってきた。「わしがギルドマスターのアレクシスだ!」どうやらこのおっさんがギルドマスターらしい。

ギルドマスターが俺の対面の席に座った。

「なぜ俺はここに呼ばれたんだ?」俺は気になっていた疑問をぶつけてみた。

「いきなり本題か、まぁいいが。お前がここに呼ばれた理由は簡単だ。………お前がトラント廃坑を破壊したんだろ?」

蒼太はアレクシスの言葉に驚き、もともとしていた余裕の表情のまま固まっていた。

「まあ、そんな顔をしているってことは図星ってことだな。」

「ど、どうしてわかったんだ…」蒼太は驚きからやっとの事で立ち直りアレクシスに問うた。

「簡単だよ。ギルドに所属している冒険者からトラント廃坑が爆発した知らせは受け取っていたんだ。そして、トラント廃坑は初心者用ダンジョンだそんなところに魔王なんてものが出てくるはずか無いのは過去の記録からわかっていた。さらに、君が前代未聞の量のゴブリンの耳をもって帰ってきたからして君は相当の実力者であろうとの予測は簡単につく。後は勘だよ。あたって良かったな。」アレクシスこんな体して頭いいのかよ。それにしても不味いな。王国に情報を回されたら面倒だな。

「あぁ、君を王国につきだそうなどと考えてはおらぬよ。」アレクシスの言葉に疑問を覚えた蒼太は

「なぁ、ギルドって国の組織じゃないのか?」アレクシスは蒼太の言葉に少し笑い

「ギルドは国の組織ではないぞ!ギルドは国とは基本的に無干渉だが依頼があったときだけは受けているな。じゃから安心せい、国に突き出すなどとバカなことはせぬわ。優秀な冒険者が減ってしまうではないか!」あぁ!なるほど。ギルドは基本的にどこの国にも属さないってことか。ならこっちにとってはありがたいな。理由はアレだけどな。

「まぁしかしこれ程の実力者をFランクのままにしておくのは勿体無いので、勝手だが君のランクをBにしておくぞ!次来たときにはBランクに上がっているはずだ。ほんとは一気にSランクまで上げたかったのだが、周りの奴らに止められてしまってな。すまぬの。」勝手だな!まぁランクをいちいち上げるのは面倒だと思っていたからラッキーと言えばラッキーだからいいけどな。

「あぁ。今回の依頼の報酬金を忘れるとこだったわ!」そう言ってアレクシスは机の上に決して小さいとは言えない大きさの麻袋を置いた。「中身は……」


こうして俺たちのアレクシスとの初会談は終わった。

蒼太達がギルドから出るともうすっかり日は傾いていた。

「これからどうする?シャルティと白の服も買わないといけないし宿屋も探さないといけないからな。」

「私の服など貰えません!」シャルティは奴隷だったためか服を要らないといっているが、蒼太が説得すると、最初にシャルティと白の服あと、制服のままの蒼太の服も買ってから、宿屋を探すことになった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


もともとトラント廃坑の入り口があった、今は大きなクレーターのある場所は騎士と勇者達でごった返していた。

クレーターの真ん中の穴に向かって次々と吸い込まれるように入っていく勇者達を追って騎士団団長である俺を先頭に騎士達も破滅級魔法の恐ろしさを知っているものがいるからか少し怖がりながら穴へと入っていった。

 穴の中は天井まで抜けていたため、日差しが差し込んでいたため明かりを必要としなかったのは率直にありがたいと思った。

 その日に当てられ崩落してきたと思われる、鉱物を含んだ岩石がキラキラ光っている。「こ、これは団長!」そう俺に言ってきたのは騎士団の中でも鉱石好きとして知られている男だった。

「どうした!?」俺は魔王が出たのかと思い剣を構えながら勢いよく振り向いた。

「い、いえ。ですが重要なことです。現在ここに落ちている鉱石は大部分がミスリル鉱石です。」この男の言葉に俺は新たにショックを受けた。

「それは本当か!?」

ミスリル製の武器は魔力伝導率が高いため高性能な武器となるが、もともとの原料となるミスリル鉱石が少なくなかなか利用できなかったが今回の鉱石で改善できるかもしれない。そういう思いがアレクシスの胸にこみあげてきた。

「後で回収するぞ!」俺はそう言って奥へ進んで行ってしまった勇者たちを追いかけ始めた。

 廃坑の奥に進んでも進んでも現れるのはゴブリンばかり今回は勇者たちの戦闘訓練の意味を内包しているから、戦うのは勇者たちだ。ステータスの差か勇者たちはなんのハプニングを起こすことなく最下層まで来てしまった。最下層には大きな部屋が1個だけあるつくりとなっており、そこには死にかけて動きそうにもない魔人がいた。

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