第7話

「おい!」


多陀「!!!」


「お前そんなとこで何を?」


多陀「・・見ればわかるだろ」


「本気か?」


多陀「・・・」


「どうしてお前が・・」


多陀「どうしてだと?」


多陀「お前は俺の何を知ってる?」


「お前は周りにいっぱい友達がいていつも楽しそうだろ?」


「そんなお前がどうして・・」


多陀「お前は俺をそんな風にみてたのか?」


「俺だけじゃない、誰だってそう思ってる」


多陀「他のやつがどうか聞いてるんじゃない」


多陀「お前もそう思ってたのかと聞いてるんだ」


「あぁ、そう思ってたよ」


多陀「・・本当か?」


「本当だ」




多陀「・・・」




多陀「そいつはすまなかったな」


多陀「俺のことはほっておいてくれ」




「・・できるか!」


多陀「いいんだよ、ほっておいてくれたら」


多陀「お前俺のこと嫌いだろ?」


多陀「何も罪悪感を感じる必要はない」


多陀「このまま黙ってどっか行ってくれればそれでいいだけだ」


「だからできるかって!」


「とりあえず俺もそっち行くからちょっと待て」


多陀「なんで来るんだよ」


「お前を死なせないためにだよ」


多陀「・・・」


「よっと」 →なんかフェンス超えた感のある演出希望です。「ガシャン」て音とか。背景フェンスの向こうに人いたら変ですか?


「ふー」


多陀「・・・」


多陀「お前怖くないの?」


「ん?何が?」


多陀「いや、ちょっと前行ったら落ちて死ぬんだぞ?」


「あー・・ま、そうなる・・のかな?」


多陀「お前なんか変な奴だな」


「初対面じゃないけど初めてしゃべる奴にそんなこと言われたくないわ」


多陀「すまんな」


「あー、俺がフェンス乗り越える間に飛び降りたらどうしようかと思った」


多陀「さっきも言ったけどお前俺が嫌いなんじゃないのか?」


「嫌いだね」


「それ言われてお前の態度がわざとだったと改めて思ったらますます嫌いになった」


多陀「じゃ、なんで声かけたんだよ」


「助けるためだよ」


多陀「いや、俺が聞きたいのは見て見ぬフリもできただろ?」


多陀「なんで助けようと思ったんだ?」


多陀「このまま飛び降りられたら自分のせいだとでも思ったのか?」


「・・・」


多陀「お前俺のせいで孤立してるだろ?」


多陀「俺が逆の立場なら助けようなんて思わないかもしれないぞ」


「言われたんだよ」


多陀「ん?」


「俺の近くにいる奴に言われたんだよ」


「命の終わりを人が勝手に決めるなって」


多陀「・・・」


「たしかに人間なんて何様だと思ったよ」


「飛び降りるかもしれないお前を目の前にして」


「黙ってみてたらそれこそ俺も何様なんだよって思った」


多陀「・・そうか・・」


「それよりお前さっきなんで俺にあやまったんだ?」


多陀「ん?変な奴って言ったからだろ」


「いや、その前」


「俺がお前を友達がいっぱいいて楽しそうだと言った後だよ」


多陀「あぁ・・」


多陀「いや、そう思ってるなら悪かったなって素直に思っただけだ」


「だからどういうことかわかんねーよ」


多陀「俺な、最初にお前を見たときから」


多陀「お前のその人のこと見透かしてるような視線が嫌いだったんだよ」


「は?俺の視線?」


「俺は何も見透かしたりできねーよ」


多陀「そうかもしれないけど、お前はそういう目をしてるんだよ」


多陀「黙ってるけど人の嫌なとこ見えてます、みたいな」


「・・・」


多陀「俺の父親な、ろくでもない奴だったんだよ」


多陀「借金はある、働かない」


多陀「気に入らないことがあればすぐ母さんと俺を殴る」


多陀「父親が家に居るときは地獄だったよ」


「・・・」


多陀「やっと離婚が成立したけど」


多陀「あいつは時々母さんの金を当てにして家にくることがあった」


多陀「本当にろくでもない奴だよ」


「そんなことが・・」


多陀「だから逃げるように引っ越してここに転校になったんだよ」


多陀「母さんは生活のために必死で働いてる」


多陀「兄弟もいないし俺はずっと家で一人だった」


「・・そうなのか」


多陀「だから学校に居場所を作ろうと思った」


多陀「極力明るく振舞ったし、積極的に周りに話しかけていった」


多陀「心の中ではどうせ卒業までの友達だと思いながら」


多陀「それでも自分の居場所のためだと思ったよ」


「・・・」


多陀「周りも自分のために俺といて」


多陀「俺も自分のために周りといる」


多陀「それでよかった」


多陀「お前だけが俺がどう思って周りと接しているか」


多陀「見透かしてるような気がしたからお前には冷たい態度をとってた」


「そうだったのか・・」


多陀「どうやらお前がそうは思ってないみたいだとわかったから」


多陀「すまないと思ったんだ」


多陀「なんでこんな事話す気になったんだろうな」


多陀「死ぬ前にわかってくれる奴が欲しかったのかもな」




「・・・」




「お前、それ自分で気づいてて言ってるのか?」


多陀「ん?」

多陀「!!!!!!!」


(多陀の足が滑った!!)


「このまま・・あがって・・これるか・・?」


多陀「お、おう・・」


「あ、危なかった」


多陀「はぁ、はぁ・・」


「さっき言いかけたけど」


「お前ここに立った時怖いと思ったんだろ?」


「それにわかってくれるやつが欲しくて自分のこと話したり」


「死にたくないって言ってるようなもんだ」


多陀「・・・」


多陀「・・たしかにな・・」


多陀「正直今も落ちそうになってやばいと思った・・」


「ならまだ死ぬ時じゃない」


多陀「・・・」


ミサ「たとえ君にどれだけ辛いことがあっても・・」


「!!」




「・・たとえお前にどれだけ辛いことがあっても」


多陀「・・・」


ミサ「生まれてきたからには生きるしかないんだよ」




「生まれてきたからには生きるしかないんだ」


多陀「お前・・」


「これも俺の近くにいる奴の言葉だ」


多陀「さっき言ってた?」


多陀「命の終わりを人が勝手に決めるなって?」


「そう、そいつ」


多陀「なんかそいつすげーな」


「よーわからん奴だけどな」


多陀「チャイム鳴ったな、こんな時間か・・」


「おー、この音」


「なんか強制的に普段の生活に引き戻された感あるな」


多陀「たしかに」


多陀「そんなに悪くない感じだけどな」


「教室に戻るか」


多陀「そうだな」

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