第11話「思惑通りには運ばない」ううん…。

4月18日


親戚のほとんどが被災地に住んでるんですが、電話回線のパンクを心配して、連絡を頻繁にとるのは遠慮しております。


でも、彼女らは避難所でも安心して眠れない、と言って車の中で(それも倒壊した家の近くで!)夜明かししたとか。


交通網が回復し次第、うちに来てもらおうと思っています。


自分が救われるかなんてわからないけれど、せめて身内のことは引き受けねばと、家族の意見が一致しました。



普段TVなんて見ないのに、災害時は気になってニュースをつけっぱなし。


電話の応対をする親の声が、小さくなっていくのを不安に思ったり、耳を澄ませていたりします。


助けに行った親戚が、熊本入りしたとたん、交通網が全滅して、閉じ込められてしまっています。


九州に住んでいる人々がどんな悪いことをしたというのだ!! と、大自然に腹が立ちます。


ああいけません、韓国人がまた「日本に神罰が下った。わーい」と言って祝杯をあげるのでしょう。


苦しい時ほど、顔を上向けねば!!!

4月19日

当方のニャンコ、今年で14歳である。


食欲がない様子なので、母の車で動物病院へ連れて行ったらば、


なんと熱が40,8℃ある。高熱だ。


「食欲がないはずです」


とクールなお医者さま。


今回は耳が「ほあほあ」あったかい、とかの兆候が全くなく、やけに水をがぶ飲みするな。


やけにわたくしの後をついてまわるな。


そう思っていたんである。


弱弱しくソファのひじ掛けにうつぶせているのを見て、甥っ子が


「もうすぐ死ぬんじゃない?」


と言ったという。


子供の少ない経験から言うのだ、その線は色濃い。


体重も2,2キロに減ってガリガリなのを指摘されたが、食べないのだから減るはずよ、と思うばかり。


急きょ検査、レントゲン、血液検査で、癌の転移はないが、腎臓がガタがきてると……


困るのは、猫にとって腎臓は最も弱い部位で、取り替えがきかない。


そして腎臓をやられる、というのはいわば、老衰が進んでいるという証拠なのだった。


がーん。後三か月は持つと思っていたのに。もう10日しかもたない、と言われた。


まあ、食べないでもつはずはない。


先生は

「人間だってひと月も食べないでもちますか?」

と追い打ちかけるから、つい本音から。

「わたくしはもちましたよ。そのあと病院送りになりましたけど」

と言ってしまった。


先生はポーカーフェイスをくずさず、



「それは別のお話として……」


はい、別の話でした……。


スイマセン。



うちのニャンコは、このままでは尿毒症になり死を待つのみ。



延命治療をしますか? あきらめますか?



……正直、家で看とる(あきらめる)という選択もあった。


現在わたくしは借金をする身であり、わずかな収入から分割で返す、と約束したばかりである。相手は母。


また入院((延命)となると、5日で3万は軽くかかるから、良好状態に必ずなるとは保証されない以上、ここは慎重に……。



「お願いいたします」



次の瞬間、そう言っていた。母もわかってくれたし、わたくしは借金は返す。日ごろの行いがニャンコをも救う……。


そして入院。


帰って来い……。明日腎臓疾患向けのニャンコ餌をもって、面会に行く。


治療は点滴をさんざん打って、血液中の毒素を尿と一緒に排泄させる、それしかないそうだ。


人間ならば人工透析するが、猫の人工透析はない。


そういえば、被災地で人工透析の機器が、えらい目に遭っていた画像をTVで見たのが脳裏に映る。


それを思うと、被災地の方々に「がんばってください」とはいいがたい。がんばってもらわねば危険は増すばかりなのだが、その疲労、疲弊を思うと無責任に口にしていい言葉ではない。


しかしわたくしは自分のニャンコに言うのだ。


「必ず帰って来い」


と……。


これが、当事者とデジタル放送で目にした人間の違いだ。


同日


今日はいろいろと、思惑通りにいかない日だったな。



「別に嫌な事ばかりとは限らないんで、うらはらと言ったほうがいい」



「甥っ子が遊びに来て、一緒に遊んでほしいとねだる。まあ、遊んだけど」



「彼らに被災地の親戚がどうとか、言っても仕方ないし。ニャンコが死にそうって言ったら、やっぱりと思われるだろうし((甥っ子その1のYが「もうすぐ死ぬんじゃない?」と予言した)」



「おまけにわたくしは借金を重ねて猫を病院に入れているので、自由がきかない、そんな現実を彼らに知らせてもどうなるものでもない」



「今日もソファのカバーを引っ張ってトランポリンをしてあげたので、息を切らせていた、ら」



「なんだね?」



「妹が(甥っ子たちのママ)突如不機嫌になって、(ほら、弟君が咳してる。埃がたつじゃないの!)と言い捨てて出て行こうとするから、今日は家に来た時から咳してたよと言ったら、(まあ、どうしたの?) と甥っ子その2のKにたずねるが、いつもの風邪じゃないの? と思った」



「彼女はどうも、わたくしが甥っ子と仲良くしてると、物言いがきつくなるんだ」



「人間関係に手一杯な日だった」



「父は、思いついたときに、相手の都合も考えず、食事時になって何度も祖母はまだか、熊本飛行場は発進できるようになったぞ、と中途半端な情報でこちらを悩ませる」



「実は熊本入りは可能になっても、熊本から出航はまだなんだと、母が言いきかせてた」



「母ねえ、孫にお菓子を与えすぎでないかな」



「妹は妹で、わたくしが一人違うアイスを食べていると(なにこいつ!)って目で見てくるけれど、わたくしの食費から出てるんだよ? とくに毎日食べてるわけでないし、母は甥っ子のおやつのついでに、わたくしに気を遣ってくれてるだけだから」



「普段はおやつもめったに食べないし、お茶だって今日夕食後に久々に入れて飲んだ。これはわたくしがルピシア(お茶専門店)でもらってきた試供品だから、とやかく言われる筋合いではない」



「大体、胎児のためにカフェインを摂らないっていってたじゃんか。恨めしそうに見るなよ。ヨーグルトとヨモギ団子を母からもらったろう」



「お土産もたっぷりもらって行ったでしょう」



「やっぱり、三人の子持ちとなると、独身のわたくしがうらやましいのかな」



「大きな子供だ、あんたは」



「甥っ子その2のKもそんな目でわたくしを見てるよ」



「砂場で一緒に遊んでればね。滑り台も裸足で滑って、おしりが熱くなったわ。アシックスのジャージが破けないか心配だった。同時に、子供たちと遊ぶにはジャージは必須と感じた」



「言ってみれば、いいことも、めんどうごとも、いっしょくただった」



今日はなんて日だ!


     ☆☆☆


コメントをいただいた。



「世は全て事もなし」

 ※ある意味、平和を満喫した結果かと?



コメント欄にて、返信済。



「平和もしんどいと言えなくもない」

ある意味、努力と忍耐が必要です。


     ☆☆☆


なんだろな~(笑)


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