第5話その森に棲むもの

 黄乃国が所属する大陸には霊獣と呼ばれる動物が多くいる。特に森は野生動物ととも彼らの大事な住処だ。霊獣は、はじめから霊獣としては生まれない。素養のある野生動物が条件をもって育つと霊獣に進化する。人で言うなら魔導士には素養がある者が訓練しないとなれないのと似ている。白色や黒色に変化する動物が多いが外見上の特徴は何色であれ虹色の艶をまとう。


 霊獣たちは人とのコミュニケーション能力が高い。魔導の力を持つ者との契約によってその力は世界に生かされる。魔導士も動物たちに彼らの力を生かしてもらう。人と共存し魔導力の秩序を守る関係が成り立っているのだ。ナカハラと契約するコテツのように空を飛ぶ騎獣として契約をすることが多いが、沙慈のように魔法道具として契約をする動物もいる。契約中は霊獣たちは不老不死に近い状態になり簡単には死なない。


 ただ霊獣が承諾せずとも魔法道具に無理やり閉じ込めその力を使うことも技術的には可能だ。その場合、道具の中で魔導のパワーを酷使され動物に意志の自由はない。その霊獣の寿命が来ると道具の寿命も終わる。動物にとっては牢獄に幽閉され死をまつだけの状態。よってそのように霊獣を使うことは国際条約で禁止されている。霊獣の密猟は大抵魔法道具絡みのの不法取引が目的だ。


 しかし、象に関しては別途厄介な問題が起きていた。野生動物のサバナ象やマルミミ象とよばれる象が進化すると霊獣の白象になる。だが霊獣であるかどうかは関係なく密猟が多発する種なのだ。このままではあと10年内にこの大陸のゾウは全ていなくなると研究者たちは言う。


 密猟品で生まれた資金は決してよい使い方はされていない。テロ活動の資金源になるのがほぼだ。懸念する利乃国などは象牙材の国内取引禁止を世界に呼びかけている。しかし、和乃国、華乃国など根強い文化背景がある国は見て見ぬふりをする。黄乃国内でも象牙販売推進派と長期目線の自然保護派とで内紛が起きる。周りの国も同じような事情をもつ。そんな国際情勢をこの大陸は抱えていた。

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