第5話 魔王、軍団を執る5

もう一つ、住はというとこれは素直に驚いた。

俺が食糧が無さそうだとスルーしていた岩場の洞窟だったのだが、中に入って見ると多少開けた空間に、ミニチュアのサグラダファミリアのような建築が収まっていたのだ。

聞けば、これも茸の菌糸を成長させて作ったものだそうで幾重にも重なった階層が洞窟いっぱいに広がり、アシンメトリーな生物的なフォルムは有機的な美を持っていた。

第二ザンテ城この技術で造ってもらえないかな。


とまあ彼らの生活はこのような感じなのだが、火も使えないのに割と文明的な生活は出来てるという印象だ。

しかし話を聞いている内に魔王の配下としてはある致命的な問題があることに気づく。


「そう言えばこの村の政治や裁判はどうなってるのだ?」


「セイジ?サイバン?」


またもや首を傾げる茸小人達。


「いやほら、生活していると何かしら問題とか起こるだろう?誰かの物を盗んだとか、人を傷つけたとかさ」


「????」


全く合点がいかない風に相談を始める茸小人達をしばし待つ。


「あの~マオウさま・・・」


「うん?」


「何でそのような事をするのですか?」


・・・・・・そうだね。何故だろうね。どうして人を哀れにもそんな事を繰り返してしまうのだろうね。

やはりそんな愚かな人類は滅ぼしてやらねばならない。


思わぬタイミングで人類絶滅の思いを新たにしてしまったが、こういった具合で魔王軍の尖兵として必須な邪悪さという物が一切感じられない。

どうやって教育した物か。

いやそもそも教育して良いのか。

忠誠心が本物なのは間違いないのだが。でなければ俺に近づけもしない筈。


しかしまぁ、茸小人達のおかげで食糧問題にある程度の目途がついたのは良かった。

いまいち腹にたまらない茸だが、慣れれば乙な物・・・な気もする。

ともあれ食糧確保の時間が減らせるならこれからは探索により時間をかけることが出来る。

茸小人達には内政系の仕事でもしてもらって帝国を内から支えてもらおうではないか。

足場を固めてからこそ、これからの世界探索にも気合が入ろうというものだ。


「くははは!!恐怖に震えるがいい人間供よ!貴様らの世界を茸の海に沈めてくれようぞ!!」


・・・・・・やっぱり茸神かもしれない。

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