第7話 魔王、眷属を得る2

襲いくるスライム達に蹴りや突きを食らわせるがやはり先程と同じ触感がするだけで腐らせることが出来ない。

一旦距離を取って乳房、ではなくスライムに接触した部位を確かめるとスライムの粘液が腐食していくのが見て取れた。


「腐食の能力が相殺している?!」


今し方気付いてしまった戦慄の事実に対する恐怖を心の隅に追いやり、現状把握に努める。


「向こうに溶かされることもないが、こちらも腐らせることが出来ないのか」


ならば魔法でと言いたい所だが、この広範囲に広がるスライム達を斃すには森ごと焼き払う覚悟が必要だろう。

再びオーバーキル問題だ。


見渡せばスライム達は増え続け、立木や倒木を飛び石のように残すことを除いては完全に地面を埋め尽くす程に増殖している。

恐らく今この瞬間も分裂して数を増やしているのだろう。

各個体も更なる成長をとげて、ついさっき子牛程のサイズだったものが成牛程になっていた。

このまま放置すればどれ程の大きさにまでなるものか。


ほんの数分前まで気色悪い多足生物呼ばわりだった虫達とわずかに残った安全地帯に避難する。

意図した訳でもないがこうなれば運命共同体のようなものだ。


「くそっ!!何か手は無いのか!」


悪態を吐いてもスライムだけを的確に排除する方法は浮かばない。

じりじりと勢力を増やすスライム達に対して後退あとずさるしか対処法がない。

いよいよ退却する場も無くなり、足場になる大岩を残すのみだ。


「仕方ない。空中へ逃れるか」


そう思い浮遊の魔法を使おうとした瞬間。背後の岩の隙間から染み出た一匹のスライムが俺に覆い被さってくる。


「・・・っ!?」


背後からのその攻撃に気付かなかった俺は、為す術も無くスライムの渦へと巻き込まれていった。

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