第10話 魔王、生贄を探す2

「オーバーキル過ぎるだろ・・・」

粉々になったドラゴンの煙を眼下に収め、頭を抱える。

最低レベルの魔法でこの破壊力なら食べられる状態の獲物を確保するのはまず無理だぞ。

何か間接的に獲物を得る方法はないものか。

『魔王の威厳』の効果は魚達にも有効だが、逃げられないような場所に追い込めば雲雷系の魔法で漁まがいのことができそうじゃないか?例えば湖だ。

今度は近くにあった湖に狙いを定め、魔法を発動する。

雲雷系第一位階ヴァルプリス!」

湖に落ちた雷は湖中に放電し、感電した魚達を浮かび上がらせた。

「いよし!!今度こそ・・・」

しかしながら放電した雷の力は湖を一瞬で煮え立たせ、魚たちを骨も残さない程ドロドロに溶かし、湖を魚のエキス入りの泥水に変えてしまう。


半日の内にドラゴンを粉砕し、湖を地獄絵図として顕現せしめる魔力は魔王の御業にふさわしいものだが、その胃袋には1カロリーの足しにもならない。


いい加減この進行の遅さは問題だと思うんだが・・・

神の視座で見ている存在がいたら飽きてリセットされかねんぞ。

冷たい視線すら感じる気がする・・・


空きっ腹のせいか詮無いことを考えてしまうが、「狩猟」が駄目なら「採集」しかあるまい。

一旦拠点に戻り考えをまとめよう。

前世が都会っ子だったので、森にある何が食べれるのかという知識が全くない俺としては、正直どうやって探せばいいのか見当がつかない。

茸は有毒が多いと聞くが、何かの果実なら食べれるだろうか。

そもそもこの世界の植生が前世と同じなのかもよく分からない。

見た感じではあまり違いがないようだけど。


そんな風に辺りを見回すとふわりとタンポポの綿毛が飛んできたので、何気なく手で払い飛んできた元に目をやると、木の根元に数株のタンポポが生えていた。

俳句でもやるならそこに詩情の一つでも見出す所かもしれないが、俺の頭に浮かんだのは昔何かの本で読んだうろ覚えの知識だった。

「タンポポって食えるんだよな・・・」


草wって・・・異世界に来て初めての魔王の食事が草wって・・・いやwwじゃなくて・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る