極限まで突き詰められた知略・暴力・謀略バトル

じゃんけんに負けると頭が爆発する。
確かにこのムチャクチャな事象は作品のキモであり、読み手を興奮させる要素のひとつだ。単なるトーナメント・バトル小説ではないことがわかる。

だが『鏖都アギュギテムの紅昏』の魅力はそれだけではない。
なぜか。それは、この戦いが運否天賦の「じゃんけん、ぽい」だけで勝負がつくような単純でナマッチロイ話ではないからだ。

命を賭けて舞台にあがる十六人の罪人の多くは、『相手が何を出そうとしているのかを察知できる』。そして、それぞれが常人離れした『身体能力』と、神器の如く凄まじい特殊能力を秘めた武器『神聖八鱗拷問具』を持っている。

すると何が生まれるのか。
直接暴力(殴るし、斬る)だ。そして拷問具の能力を軸にした究極の読み合い、騙し合いが生まれる。
「じゃんけん軸 × 暴力軸 × 拷問具軸」による壮絶な戦いだ。
さらには、死合の舞台の外であっても平気で行われる諜略の数々。
陰謀渦巻く牢獄で催される暴力と知恵の極限勝負。そういうことだ。
じゃんけんバトルなどと甘く見てはいけない。

そんな狂った死合に挑む、十六人の罪人の個性も素晴らしい。
誰が見てもヤバイ奴。それが十六人もいるのに、全員にそれぞれ違うヤバさがある。

そして、そんな狂った世界を創る、作者の筆力と超絶的な語彙力。
アギュギテムの世界そのものが、必ず読み手の心を掴むだろう。