小説の本質への問いかけ

プロットというものがあるということを知ったのは、笠井潔の評論でだったと思います。
そこでは、ストーリーとの比較によってプロットを説明していました。
ストーリーとは、物事を時系列にそって語っていくこと。
プロットとは、時系列を無視して表現したいことを主軸にして語る順番を再構築すること。
わたしたちの意識はそもそも時系列に物事を認識していくのだから、プロットをたてるというのはわたしたちの自然的な意識に対して何がしかの亀裂をいれることのように思っていました。
極端な例をあげれば、バロウズのカットアップ・フォールドインはストーリーに対して文法レベルまで戦略的な組み換えを行い、自然的意識に深い炸裂をいれてそこから遠い地平への逸脱を目指すということになるかと思います。だからそれもまた、プロットという戦略のひとつのありた方だと思えるのです。

時系列=ストーリーという現実から、いかに逸脱し表現を行うかということに、小説というものの本質が潜んでいるのではないかと思うこともあります。
プロットを固定するというのは、逸脱する方向を封じることによってさらに何を語ることができるのかと問われているように思いました。
ここに、語ることの本質への問いかけがあると思います。

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