CONFIDENTIAL TALK

「フフ。まあいい。一般的に知られている常識などそんなものだろう。」

会長も同じような言葉で、あたし達を諌めた。


「それより、その書籍のお話の続きを聴かせて下さい。」

自分の知らない未知なる存在が気になって仕方なかったので、あたしは話の先をせがんだ。


「そうしよう。その匿名なる者が発表した書籍は三冊ある。まず1614年の『友愛団の名声』、その翌年『友愛団の告白』が世に出た。この二冊は秘密結社・薔薇十字団について記されている。そして、さらに翌年の1616年、特に人々の耳目を集めた、薔薇十字団の創始者とされるクリスチャン・ローゼンクロイツなる謎めいた人物の生涯を描いた寓意小説『クリスチャン・ローゼンクロイツの化学の結婚』が発刊された。この三部作が発表されるや、当時のインテリ階級の人々の知的好奇心を大いに刺激し、ヨーロッパに一大センセーションを巻き起こした。」


「今聴かされても、充分刺激的ですよ。」

あたしも大いに魅了されたひとりになった。

なんだかSt.バレンタイン学院に通っていた頃に戻って、世界史の授業を受けている気分になってきたわ。


「ふーん17世紀にも面白いことを考える人がいたのねぇ。」

ROXYすらも感嘆の声を漏らす。


「確かに・・・いわばブームの仕掛け人的な先駆けよね。」

あたしも、彼女の隣で大きく頷いた。


「全くだ。実はこの三冊の内『化学の結婚』の初版本を、先程話した私の曾祖父がパリの蚤の市で手に入れ、現在はこの私が私の父より譲り受けて所蔵しているのだ。」

会長がさらに驚きの告白をする。



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