ON THE BEACH

ふたりして振り向くと、デッキチェアで日光浴をしているビンテージのアロハシャツ姿の男が、気だるそうにサングラスを外す。


WTHA(ワールド・トレジャー・ハンター協会)会長ウィリアム・ウォード・ウォルター、通称トリプルビルその人の登場である。


「トリプルビル!?」

あたしとROXY、ユニゾンで声が揃う。


「ほう?君達はあまり仲はよろしくないという報告を受けていたが、正しくはなかった様だな?」


『いえ、むしろその情報は正確無比ですわ。』

心の中で上の台詞を飲み込んだ。きっと彼女の方も同じくだろう。

だからと言って、仲が良い訳で断じてない。


「そんなことより、何故こんな所でのんびりくつろいでいるんです?」

ROXYが尋ねる。


「違うと仰りましたが、ならば何故あたし達ふたりを同時に呼ばれたのか、その理由も知りたいですわ。」

あたしも、彼女にかぶせる。


「ふたりの美女から質問攻めとは光栄だな。」

会長は白い歯を見せて苦笑いをしながら、白いサイドテーブルのフローズン・ダイキリのグラスに手を伸ばした。

フローズン・ダイキリはかの文豪ヘミングウェイが愛したカクテルで、海の男の象徴でもある。

だけれど、無精髭の容貌のトリプルビルならむしろ、海賊の愛するラム酒の方がお似合いな気がする。


「まあよかろう。まずは遠くからご苦労だったね。」

流石、最初に労いの言葉を掛けてくれるあたりは、その辺の大雑把なトレジャー・ハンターどもとはちょっと違うわね。



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