侵略者

 その日は、突然訪れました。


 彼らは、人の半分ほどの身長に、皮膚は緑色でブツブツだらけ…。目は、黒猫のように黄色い眼球、鋭く尖った瞳孔をしていました。地球の、凶暴で、そして気味が悪い生物を全て足し合わせたような姿でした。

 所謂エイリアンです。


 彼らが何処から来たのか分かりませんが、世界各国の政治機関に、突然姿を現しました。言葉は通じず、金切り声のような、悲鳴のような言葉を発します。

 驚いた国々は非常体勢を敷き、警察や軍隊は早急に彼らを射撃し、1度は難を逃れました。


 しかし、その後も彼らは毎日のように政治機関に訪れました。幸い、各国家機関には2匹ずつぐらいの数で訪れたので対応には無理がなかったのですが、日に日に彼らは凶暴になり、国家機関の建物の中に入り込もうとし始めました。

 警備はもっと厳重になり、人々は不安を覚え始めました。



 そしてその数日後、今度は人と同じ容姿をした、しかも地球の言語が話せるエイリアンが地球に訪れました。彼らはとても紳士で、しかも美男子達ばかりでした。

 彼らは言います。


「今、この星を苦しめているエイリアンがいます。私達が退治する方法を知っています。是非、この星の代表に会いたい。」と。


 地球人は喜んで彼らを国連に招待しました。

 そして彼らは各国の代表、重要人物を収集させました。


 国連の人達は救いを求め、こう言いました。


「貴方達が何処から来たのか知りませんが、感謝します。早速、奴らの退治方法を教えて下さい。」


 すると紳士な彼らはこう答えました。


「今、集まって頂いた人々が、この星を代表する重要人物らでしょうか?」

「はい。その通りです。貴方達に協力する為、財政家や学者など、その全ての人物を集めました。」

「そうですか…それはありがとう御座います。」


 会話は、とても短いものでした。

 そこまでの会話をすると彼らは黙りこくって、ゆっくりと、持って来たカバンを持ち上げ、その中身を取り出しました。


「これは、とても強力な爆弾なんです。」


 彼らが取り出したものは、それ程大きくもない、爆弾のようなものでした。


「おお!それで奴らを退治する事が出来るんですね?」

「…いえ、退治されるのは、貴方達です。」


 地球人が「え?」と聞き返す暇もなく、次の瞬間に国連の建物は跡形もなく吹っ飛んでしまいました。勿論、そこにいた人々全てを飲み込んで…。


 世界はあっけに取られてしまいました。そして地球人は、明日からどうして良いのか分からなくなりました。

 しかし、それと同時に緑色をした彼らも姿を消しました。理由は分かりませんが、結果的に彼らを退治出来たのかも知れません。どうなったのか分かりませんが、国連や重要人物が吹き飛ぶ事で、緑色の彼らは消えていなくなったのです。

 地球の人は当惑しましたが…もうこれ以上、侵略者がいない事に安心しました。




 そしてここは、とある惑星…。

 ここの住人は人の半分ほどの身長に、皮膚は緑色でブツブツだらけで、目は黒猫のように黄色い眼球に、鋭く尖った瞳孔をしていました。地球の、凶暴で、そして気味の悪い生物を全て足し合わせたような姿でした。


「結局…失敗に終わったか…。」

「彼らに侵略を伝え…彼らの兵器力で応戦して欲しいと伝えるだけだったのに…。そんな簡単な事が失敗に…。本当に申し訳御座いません…。」


 これは、この惑星の大統領と軍隊の会話。


「止むを得ん…。私達が、彼らの言語を理解出来る科学力を持っていないのが原因だ…。君達のせいではない。むしろ、亡くなった者達に対して申し訳なく思っている…。」

「しかし…これで彼らは…奴らに支配される事でしょう…。」

「それも止むを得ん…。残念だが私達には、そこまでの攻撃力がない…。奴らの本隊が地球に上陸するのも時間の問題…。そうなると、私達の手には負えん…。それを事前に防ぎたかったのだが、地球人が対応してくれなかった…。しかし、私達も最善を尽くしたのだ。君達を彼らの星へ送る事自体…危険を顧みない行為だったのだ。それだけでも充分じゃないか?私達はベストを尽くしたのだ。」


「しかし彼らは何故…私達に応答をしてくれなかったのでしょうか…?」

「うむ…。それが今でも悔やまれる部分だ…。何故彼らは、平和的な対応をしてくれなかったのだろう…?何故彼らを救おうとしている私達を…殺したのだろうか…?」


 …と、そこに、この惑星の科学者が駆けつけて来ました。


「たっ、大変です!今、重大な事が分かりました!」


 科学者は、今にも腰を抜かしそうな表情でした。


「どうした?何が分かったのかね?」

「はい…。実は、彼らの生態パターンを分析していたのですが…こんな事が分かったのです。彼らは、見た目で判断する行動を行います。つまり、自分と似ているものを善と見なし、自分とかけ離れて見えるものを悪と見なす傾向があるのです…。」

「何と!?そのような生態が彼らには…?一体、見た目で何が分かると言うから、そのような行動を…!?」


 この星の大統領は腰を抜かし、大きく落胆しました。


「ならば我々では、彼らを助ける事が出来なかったと言う事か…!?我らの善意や犠牲は、全く意味がないものだったと言う事か!」


 科学者の言葉に大統領だけでなく、軍隊、そしてこの星の住民全てが涙しました。




 そして数日後…。

 ここは、地球に程近い宇宙…。大きな宇宙船が、数十隻ほど集まっていました。


「ここか…地球と言う星は?」

「はい…全てが私達の星に似た…住みやすい、そして、扱いやすい星です。」


 この会話の主人公らは、人と同じ容姿をした、しかも地球の言語が話せるエイリアンです。

 彼らは、数時間後には地球に到着するほどの距離にいました。


「数日前にこの星の偵察に来たのですが…何と彼らは私達を歓迎し、この星の重要機関にまで招待してくれました。それだけではなく、世界中の重要人物を1度に集めてくれました。目的は…どの人物を殺せばこの星が侵略しやすくなるかを偵察する物ものでしたが…何と彼らの計らいで、全ての人物を殺す事に成功したのです!」

「ははぁ…それは愉快…。しかし…彼らは何故そんな行動を取ったのだ?」

「それは良く分かりませんが…爆弾と一緒に自爆した調査員の通信報告によると…彼らと私達は、見た目がよく似ていたそうです。そして、私達を見て大歓迎をしてくれたそうです。」

「似ているから歓迎??そんな馬鹿な…。」

「私もそう思うのですが…しかし驚いた事に、私達の侵略を見抜き、事前に地球を救おうとした緑色の奴らを…地球人は攻撃したそうなのです。偵察隊はそれに便乗し、今回の作戦を成功させたと言う訳なのです。」

「うむ…信じ難い話だが…このような喜ばしい結果が出たと言う事は…そうなのかも知れんな。ましてやあの忌まわしき緑の奴らを退治してくれたとは…。奴らは常に、私達の侵略の邪魔をする。まぁ…どうでも良い。これからはこの星を立派な植民地にし、我々の好き放題にしようじゃないか!」

「はい!今、この星には重要人物がおりません。重要機関も動いておりません。早急にそこを支配すれば…私達は1度に武力と奴隷を手にする事が出来ます!」

「はっはっは、その通り!これだけ簡単に落とせた星は他になかった。我々は何も失わず、何も破壊せず、全て我らの物にする事が出来た!素晴らしい!」


 こうして数時間後、地球はエイリアンに支配されてしまいました。

 地球人の、よくある、しかし馬鹿げた習性によって…。

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