好感度が見えても、理不尽な"物語"からは逃れられない

主人公の雅継は他人の好感度を見ることができる。
これがさも大したことのないかのように冒頭から口上を述べ立てるのであるが、その前振り自体がかなり面白い。
「全く赤の他人なのになぜか異様に好感度が低い」相手は絡むと理不尽な危機に見舞われそうだ、などという説明からは、物語の始まる予感しかしない。

あくまでも説明のための例かと思いきや実際そういう人物がクラスにいて、問題はその人と同じ苗字の転校生が現れて、なぜか理不尽にも好感度120%だったりした場合である――。
好感度といえば『ときめきメモリアル』以来の恋愛シミュレーションにおける必須パラメータとも言えるが、むしろ本作はそれに翻弄されてしまう物語だ。

本当は周りの人間みんなが恋愛の関係者というわけではないのに、むしろこの能力があるばかりに、その磁場から逃れられなくなってしまう。
たとえば異性と友情を育むことはできるのか、という古い問題がここでも問われる。
高い好感度。それはLIKEなのかLOVEなのか。
むしろ雅継は、そんな問いの強制から逃れようとしているのである。

(寒い冬を暖める? 恋愛系3選/文=村上裕一)

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