第11話 マクドナルドにて

「桜雪クン、それマックのクーポン?」

「あっ、主査さん、貰い物ですけど」

「そうなの?私マック好きなんだよ」

「そうなんですか、じゃあ今日行きますか?」

「ホント?いいの?じゃあ奢るよ」


そんなことで、夕食はマックになった。


「主査さん、なににしますか?」

「そうだな~、フィッシュバーガーにするよ」

「じゃあ、俺はテリヤキで」


席について、職場の雰囲気がどうのこうのと話していると

「お待たせしました、テリヤキバーガーセットです」

と店員が私の前にトレーを置いた。

すると、主査さん……

自分の前にトレーを置き換えて食い始めた。

(えっ?)

「いや~、マックは美味しいよね」

「あっ……そうですね……」

(え~、自分の注文忘れてるのだろうか……気が変わったのか……)

「お待たせしました、フィッシュバーガーセットです」

(どうするんだろう)

ちょっと手を付けるのを躊躇していると

「どうしたの?食べて、食べて、遠慮しないでさ」

「あっ、はい、いただきます」

私はフィッシュバーガーを食べた。


「いや~久しぶりに食べたよマック、今日は付き合ってもらってありがとね」

「いや、御馳走様でした」

「うん、気にしないで、また行こうよ、いつでも誘って、奢るから」

「あっはい、ぜひ」


翌日

「というわけでさ~」

「マジですか?まぁ、うっかりってことじゃないですか?」

「いや~食ったら気づくでしょ」

「思い込みってヤツですよ」

「いや、トレーを自分のトコに移動させてたからね、あの瞬間、ちょっと怖かったよ俺」

「忘れっぽい人ですからね」


これは、前ふりの話である。

12話はこの続きを書きます。

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