第18話 念願のお店

「シップなんか持ってないよね~」

「どしたの?」

「いや…腰が…」

 何があったのか…彼女は腰を痛めたようである。


「これ頼まれてた団子」

「ありがと~う」

 そう、先週末から電話で頼んでいたのだ。

「御団子、予約できますか?1本からできるんですか…じゃあ1本…はい…桜雪で」

(俺の名前なのね…まぁ俺が取りに行くんだからいいけどね)


「前から行く、行く言ってたお店行く」

(ラップ?)

 お店へ移動中、団子と栄養ドリンクという奇妙な組み合わせを食べさせられ、飲まされ、途中にコンビニスイーツを薦められた。

「ブルーベリー好きじゃない…」

(なぜ買うの?)

「今、何で買うのって思ったでしょ…それは新商品だから♪」

(その考え方が…理解できないんだよな~)

「コンビニの店長に顔覚えられた…新商品いつも買いにくるから」

(うん…目立つんだよね…行動がね…普通のややアッチ側なんだよな~)


 雨が降りそうな空模様。

「変わった傘持ってるね~」

「うん、あの店で買ったんだよ」

 私は傘を何本も持っている。

 お気に入りは、青い傘…すでに25年所持している。

 高いだけあって壊れない一級品である。

 もう1本はオレンジで柄が猫の形をしている傘。

 この2本がお気に入りだ。

 オレンジの傘を持って、プラプラと歩く…。

「相変わらず歩くの早いね~」

 振り返ると、なんだか怠そうに歩く彼女がいる。

(そうだった…腰痛めたんだったな)

 なんかヒールの音も普段と違うような。

 いつもは、カコッカコッと歩くのだが、今日はガコッ…ゴトッと重そうな音が不規則に響く。

(腰痛めても、ヒールで歩くんだな…うん…彼女らしい)

 歩きタバコ…でガコッゴトッと店の前へ。


「おすすめはなんですか?」

(久しぶりだな~相変わらずの聞き方)

「じゃあ玄米カレーと小…?のパスタ」

小柱こばしらですね…」

(はしら読めなかったのね…ところで小柱こばしらってナニ?)

「小柱ってなんですか?」

 聞いてみた。

「貝の…」

「貝柱ですか」

「そうです」

「じゃあソレくださ~い」

 彼女がソレに決めたようだが…。

「えっ?貝だよ…食べれる?」

「う~ん……じゃあこっちにする、野菜パスタ」

「トイレでコレ食べてくる~」

 スモークささみ…コンビニの。

 うん、どうしてもお店のメニューじゃ満足しないね、どこに行っても。


 玄米カレー、少なめだ…良かった。

「どうしたの…あんまり食べないね~」

「うん…団子が結構ね、食う前からゲップでてるし」

「あ~炭酸飲んだから?」

「炭酸飲んでないよ」

「ん?ドリンク飲んだじゃん」

「栄養ドリンク?アレ炭酸じゃないよ」

「ん?」

(炭酸だと思ってたの?…たまに怖いよ)

「アイス足りない…頼んでいい?」

「いいけど…結局セットより高くなるよね…」

「ねぇ~、ホントだよね~」

(アンタのせいだよ…ねぇ~って騙された的な感じ…誰になの?)


「美味しかったね~、念願のお店にやっと来れたね」

「そうだね」

(アレ…そういえば昨日もメールでカレー食ったって言ってなかったかな?)

 今日はちゃんとカレー食べてる…偉い?

 とかメールがきてたような…。

 まぁ、御飯を食べてることはいいことだ。

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