第10話 複雑な気持ちなんだよ

「転職先が決まりました」

「良かったね」


 私の転職が決まった。

 ということは、働くのである。

 ヒマでは無くなるのだ。


 好きな日、好きな時間、好きな場所で逢っていた彼女にしてみれば問題なのである。


 嬉しいよ~(就職決まって良かった)

 悲しいよ~ (気軽に逢えない)


 なんか素直に喜べない……。

 複雑な心境であるらしい。


 総じて現在は、心配なのだそうだ。

「桜雪ちゃん、一言多いから……、うまくやっていける?おとなしくしてるんだよ」

 出来そうにないよ~心配だよ~。


 身内の不幸などもあり、1週間ぶりの彼女との食事。


「6月から仕事だね~」

「なんか心配だよね~」

「なんか~すぐ辞めちゃいそうな気もするんだよ~」

「就職しても逢おうね~」

「残業多いの~ノー残業デーとかあるのかな~」


 えらく心配しているのだ。


 彼女とピザを食べながら、海を眺める。

「これ、思ってたのと違う……美味しくない」

「なに頼んだの?」

「マルゲリータと冷製パスタ」

「これトマト入ってる!」

「マルゲリータだからね」

「はい、あげる♪」

(ほぼ1枚きたよ……)

「パスタ美味しくない……」

(半分は食べたようだな)

「ピザもう食べないの?」

「うん……トマトが、そのまま……」

 彼女はトマトが苦手である、トマトソースは大丈夫なんだと思う。

 マルゲリータにはトマトの薄切りが乗っていた、コレが残念だった。

 トマトをどかすと、生地にトマトソースとモッツァレラとバジルだけ、寂しい感じがする。

 いや、まぁマルゲリータはそういうシンプルピザだとは思うが。

 結局1切れ食べなかった。

 良かったSサイズで。

 パスタは美味くは無かった、油っぽい冷製パスタってなんだよ。


「ジェラート……コレ入ってる……」

 コレとはフレークだ、彼女はコーンフレークが嫌いである。


「コレ食べて」

(フレークオンリーで差し出した……2カップあるよ)


 結局、この日の夕食は ゴディバのアイス ジェラート2個 パスタ半分

 アイスは多いが、小麦粉食ってたし、まぁいいか。


「就職しても、逢おうね」

「うん、でもね、しばらくは給料安いから贅沢はできないよ」

「メロンパン食べながら海で食べるとか、少しでも逢いたいよ」

(日本語変だな……)

「なんで、メロンパン?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る