第5話 気を使っているんだよ

「ケーキばっかり食べさせると不機嫌になるからさ~気を使ってるんだよ」

「そうなの?」

「小説にさぁ~、ポロッと本音が出てるよね……たまに」

「うん、まあね」

「だから、ケーキとかは他の人と食べに行こうと思って~」

「うん、そうしてくれよ」

「だから今日は、このお店にした」


 まだ新しい感じの洋食屋さん。


 入口のおすすめメニューに目を通す。

『オムライス』『ロコモコ』などがおすすめらしい。


 店内に入ると客は私たちだけ、年配の女性が水を運んでくる。

「あの~、おすすめなんですか?」

 彼女お決まりの第一声だ。

「じゃあ、オムライスとロコモコセット、あとアイスの大きさどんなですか?」

「セットのデザートはなんですか?」

 とりあえず、アイスの大きさや、デザートの内容が一番気になるのだ。

「で、いい?」

「うん、好きなもの食べなよ」

「うん♪」

「アイス2個お願いします」

「アイスは食事と一緒でお願いします」

「ごはん少なめにしてください」


「ごはん少なめ♪コレでいい?食べられなかったら嫌だからね、ちょっと気を回したつもり♪」

(できれば、アイス1個で、ごはん食べてくれないかな……)

「あずきアイスってどんなだろうね?」

(たぶん、想像通りのアイス……紫っぽいヤツ)

「あっ、こっちのほうが美味しそう、すいませ~ん、ロコモコやめてハンバーグ・ビーフシチューセットに変えてください」


「こういう食事がいいの?夕食って感じなのがいいの?」

「そうだね、ケーキ主食よりいいね」

 内心、食べれるかな?オムライスとセットと思っていた。

 多分セットにしたのは本日のデザートが付いてくるからだろうな。


「調べてきたんだよ、オムライス美味しんだって」

「そうなんだ」

「うん」


 オムライスが運ばれると、分厚い卵が美味しそうである。

「あっ、アイスもお願いします」

(アイスなんだな……)

「うん♪うん♪美味しいよオムライス、今日は野菜も食べてみよ」

「めずらしいね、野菜そんなに食べるの、嫌いでしょ」

「うん、嫌い、でも今日は食べてみる」

(いいことだ)

 ハンバーグ・ビーフステーキセットが運ばれ、アイスが運ばれると4人掛けの席のテーブルがいっぱいになった。

 私がハンバーグを一口食べると

「ちょっと交換する」

 とお皿を変える。

「お肉美味しい!食べた?」

(いや、今交換したから、食べてるわけない……)

「オムライス美味しいね~」

「美味しいね」

「うん♪こういう食事がしたかった?」

「そうだね、久しぶりに外食をしている気分だよ」

「うん、申し訳ないけど、今度のお店には一緒に行けないの」

「ん?」

「あのね、時間がね~夜はホットサンドしかないの、だから今度のお店は他の人と行くね」

「いいよ、行っておいで」

(全然、申し訳なくないよ)

「今、べつに申し訳なくないって思ってるでしょ?」

(その通りである)


 オムライスが戻って行かない……すでにサプリを飲みながらアイスとデザートを交互に食っている。

 この量を残した……いや食べたほうか……。

「サラダと春雨は食べよ♪」

(オムライスは……)

 結局、1.8人前は食べた。

「美味しかったよね♪」

「うん、美味しかった」

「満足した?」

「あぁ、美味しかったよ」

「うん♪気を使って良かったよ」

「俺、ダイエットしたいんだけど……」

 私の腹を撫でて満足そうな彼女の笑顔。

 気は使っているらしい……。



 と、ここで終わりたいのだが……私の携帯が鳴った。

「アタシ出る?」

「なんで?」

「出ないから」

「いや、出るよ」

 躊躇した理由……『通』からであったのだ。

「おう!久しぶり!変わりはないか?」


『お湯ラーメン2(通) 通 身内に悩む』に続く。

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