第3話 探索

「どこから出ればいいの、これ?」

私と男子生徒はしばらくその場に立ち尽くしていた。


「とりあえず開けてみようぜ。」

顔見知りか、先ほどの呼び出しの共犯者だからか分からないけれど、とにかく初対面ではないらしい。

何もしないでいても仕方がないので片っ端から扉を開けてみることにした。


扉には“給湯室”のような表示がなく、“No.~”といった数字がふられているだけだった。しかもその順番はバラバラでNo.21の隣にNo.85があり、その隣はNo.3になっていて規則性がまるでない。分からないものは気にしないことにして、次々に扉を開けては閉め、開けては閉めを繰り返していると別の廊下に出る扉を見つけた。

入ってみると先ほどの廊下とあまり変わったところはなく、少し薄暗く心なしか扉の数が多く感じる。


「そういえばさ、店員さんとか他の説教くらってた奴らはどこいったんだろうな?」

言われてみれば最初の部屋を出て以来全く人に会っていない。

不安と恐怖がジワジワと押し寄せてくる。

早く出口を見つけなければ。


私たちは必死に扉を開け、出口を探した。

前の廊下にはなかったような広めの部屋が多く、講義室かあるいは会議室として使えそうな大きな部屋もあった。

しかし外に繋がる扉はおろか、新しい場所に出られそうな扉すら見つからなかった。

その代わりに今までにない表示がされた扉があった。


“No.55 ここは開けるな”


「どうしよう?」

私は堪らず隣にいる男子に言った。

「ここ開けなきゃ、どうしようもないじゃん。」

「でも、開けるなって書いてあるし・・・」

ここを出たいのはお互い分かっている。けれど、入りたくなかった。

自分たち意外には誰もいない、無機質で異様な空間に「開けるな」と書いた扉。

開けてもいいことは絶対にない。私はとにかく入りたくなかった。


しかし、そんな私をよそに彼が動いた。

少し迷いながらも、決心したようにドアノブに手をかける。

「俺、入ってみる。」

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