リアルと妄想

わ→たく。

プロローグ

プロローグ

「みなさんおはこんばんちわ〜」


この声は僕の好きな声優さんの水瀬みなせゆんさんの声だ。


「ゆんゆんこと水瀬ゆんで~す。よろしくお願いしまーす」


かわいいマスクにロリっぽい声水瀬さんは僕のアイドルだ。


ある年の誕生日の際にはソロデビューをはたし『明日のつぼみへ』という元気をくれる曲を出してくれた。

この曲は今までキャラソンでしか水瀬さんの歌声を聞くことが出来なかったが本人の歌だからかっこかわいい歌声を聞くことが出来るし、なんといってもサビのところが共感できる曲だ。

このCDは僕も当然アニメショップで予約して買ったし、カラオケでは毎回歌っている。


僕は今、その声優さんが出演しているラジオ番組に出演している。

その名は『ゆんゆんの放課後の宮殿日誌!』だ。

銀文庫というかの有名なライトノベルの出版社で連載させていただいている『放課後の宮殿。』という僕の小説にちなんだ名前らしい。


「この番組は私と同じ珍しい苗字の水瀬優みなせゆう先生最新作の『放課後の宮殿。』のアニメ化に先立ち作者の水瀬優先生とお送りいたします。先生、よろしくお願いします。」


僕は目の前で淡々と台本を読み進めていく水瀬さんに口をぽかんとあけ眺めていると突然ふられ慌てて「よ、よりくしおねがいしゃます」と返事をしてしまった。

幸先の良いスタートを切ることは出来なく今まで水瀬さんの顔しか見ていなかったのでどこまで進んだのかも分からずあたふたしている。


すると、話しながら水瀬さんは僕の台本に「ここです」や「緊張してるなら一度深呼吸!」と書いてくれた。

書いてくれた通りに深く深呼吸をし、高鳴る鼓動を沈めた。


「そろそろ、先生も慣れてきた頃かと思いますので始めていきましょうか? それでは『ゆんゆんの放課後の宮殿日誌!』ページめくりをしていきます。せーの――――」


「すみません。一回切りますね」


監督さんのまわりにスタッフの皆さんが集まり何かを話している。

監督さんは長くなると悟ったのか休憩時間をくれた。


水瀬さんはすぐさまスタジオから出て行き自動販売機が近くにある休憩場所へ向かった。

声優さんとか俳優、女優さんってテレビの前と裏では全然違う人なのかと思っている人がいると思う。


しかし、水瀬さんはテレビ YauTubeなどで見る水瀬さんと裏の水瀬さんは同じで明るくまじめな水瀬さんだった。

そんな水瀬さんは休憩所で水を飲んでいた。

僕に気づいた水瀬さんは僕に近づいてきて――――




「はい、はい。水瀬先生! キモいです。妄想に浸る先生はキモいです。妄想はいいので小説書いてください。デビュー作以来目立った作品が出てきていないんですから頑張ってください」


僕の担当の中野美梨なかのみりさん。

僕の一つ下の二十二歳独身。


ネコ耳フードのついたパーカーをよく着て手を服についている前ポケットに突っ込んでいる。

ショートな赤髪にとがった八重歯みえ、小顔で少し目が細くつり目なのが僕にとってドストライク容姿で彼氏も何人も作ったことがあるらしい。


僕の作品が目立つことのない作品ばっかりになってしまったのは自分のせいだと責任を感じ次の作品がうまく行かなければ退社を考えているらしく最近はカリカリしている。


ちなみに僕は、小説家の水瀬優みなせゆう

ネットで僕の名前を検索すると子供には見せられない動画が流れるけど僕は違う水瀬優なのでよろしくお願いします。

自分で言うのもなんですが、これと言った特徴はありません。

面接などで長所を聞かれると答えられない本当にただの小説家です。

見た目は、髪はプールをやっていたせいかチリチリで、容姿は下。

身長も高くなく短足に太い脚。

羨ましがられるのは細いウエストくらい。

って、皆さん。変な想像だけはしないでください。

結構ネットの声とかで泣いちゃう方なので。


「大丈夫。大丈夫です! 四つのストーリーをちゃんと考えてますから。どれも一章はかけているので見てください」


中野さんは少し笑みを見せて無言で手を出した。

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