第45話 2088年1月21日 ローマ参画政府 ヴァチカン市 ラテラノ大学 第十会議室

ラテラノ大学内 緊迫する第十会議室 円卓の上座は空席も

無性に苛つく渕上を始めに、集う島上、天上、最上、花彩


天上、眉がついぴくりと

「何か固いわね、ねえ、」

花彩、物憂げに

「天上さん、グレートティモールのそれは聞いて良いものですか、と言うよりブローチカメラの映像有りますよね、ヴァチカンの司令室に呼ばれて資料判読するものの、何かこう、漠然すぎて、」

最上、不遜にも

「無理だな花彩、モラルの問題で見せらないし、今は語れない、多分公式には玉座パイソンパレスの焼け跡までが限界だ、」

渕上、ただ目を細め

「天上さん、第七次東南アジア紛争、そのまま放っておいて、ここローマはないですよって、しっかり暫定政府の統治すべきですよね」

花彩、ただ目を細めては

「そういう渕上さん、いつの間に司令室抜け出して、どこに行かれてたんですか、渕上さんのご指示も頂きたかったのに、」

渕上、くすりと

「こんな、きっつい、お仕事に乗れますか、とは言え茶房は行ってまへんよ、ちゃんと交換手になって、丁寧にお電話繋げましたで」

花彩、はっとしては

「あっつ、そう言えば、京なまり有りましたよ、幾つかの電信、もう、標準語澄まして使わないで下さいよ、」

天上、熱り立っては

「ああ、もう向かっ腹立って来たわ、暫定政府なんて、冗談はよしこさん、あのまましつこい陳情の膨大さと来て、そのまんま受けてたら、私が新大統領になっちゃうわよ、」

最上、ただくしゃりと

「天上さん、こう見えて外面良いですからね、だからといって、アンダー40の春川置いて来て、ご用聞きさせていいものですか、」

天上、口を尖らせては

「仕方無いじゃない、里中、陳情の応対に打ち切れて、台湾まで下がったのだから、まあね、春川も良い勉強の機会よ、」

花彩、凛と

「あの、良い勉強も何も、グレートティモールの元閣僚さん達軒並み廃人では、事情聴取出来ませんよね、」

天上、自ら仰いでは

「まあ、そこは今や亡国の話だから無くても問題無し、ふう、」

渕上、悪戯な笑みで

「花彩さんは、依然と痛快ですな、天上さん相手に、ようきばりますわ、」

天上、渕上を見据えては

「渕上は煽らないの、誰が何と言おうと何もかも全て結果論で、全く問題無し」

最上、とくとくと

「本当、天上さんも、以前のパートナーの堂上さんって、辛抱強いですよね、」


不意の沈黙


渕上、口に手を当てては

「最上さん、それ言ったらあきません、」

ついに話題の口火を切る、島上

「おお、その堂上だ、とうとう見つからんか、とうとう死んだかあいつ、どう考えても死んだよな、そう、堂上死んだよな、いやー切ないな、せめて仲間内で葬式しないと行けないな、そう仕出しの予約入れないと、レストラン睡蓮で良いよな」

天上、ただお手上げの素振りに

「島上さん、レストラン睡蓮って、米上の系列店でしょう、そこまで死亡認定したいの」

渕上、歯噛みしては

「島上さん、本当何を庇うんですか、男の友情は持ち込まないでおくれやす」

天上、溜息混じりに

「そうそう、見つける見つかるも何も、隠れ場所一つしかないでしょう」

渕上、苛つくも嘆息

「茶番は結構、良いですか、堂上さん生きてる前提でお話しましょうか ご察し通り、皆さんいじわるしてる違いますよ、堂上さんの覚悟に心底惚れただけですよ、籍迄抜いて米上さんまで累が及ばんとの心遣いですよって」

天上、下を向いては

「まあ、米上なら、堂上倒れたら仇討ち絶対するわね、壮絶ね もっぱらの評判では堂上も宮武も死んだとあれば、矛を収めようも無いのが米上の悶々とするところね」

花彩、不意に

「ですが生きていれば、京都なんですか そんなに広いんですかね」

渕上、従容と

「それも昨年まで そうですな生きていればですが、今日迄音沙汰が京都で一切無い様でしてな それでも米上さん、一縷の望みに賭けては、京都始め各地を探しているそうですな」

島上、日本で発行部数1位の万世橋新聞を差し出す

「いや、敢えて言う、これなら、さすがに死んでるかもな」

花彩、新聞を受け取り一瞬で捲り上げては

「ふむ、4ページに渡って関門トンネル爆裂事故、”第三次世界大戦の爪痕が今も残る九州地方 問われる戦後復興”、これ本当に堂上さんが噛んでるんですかね あの遠目の画面では顔迄はちょっとですよ」

島上、従容と

「花彩も、『あなたの向こうで』年末の特番と特別番組見たろ、真実なんて朧げなものだ だがあの剛刀、堂上しかおらんよ」

花彩、首をゆっくり傾げる

「ええまあ、そうですね」

渕上、毅然と

「辛うじて事故としての扱い方へと微妙でしたな 堂上さん、私闘禁止にも関わらず、あんな物騒な決闘、世間では9割方死亡でよろしい」

最上、くしゃりと

「和泉のおっさん、気になって関門トンネルの現場見に行ったら、刀の擦痕だらけで本気との事です ここまで無茶出来るの堂上さんと宮武だけでしょうね」

渕上、花彩に書状差し出す

「花彩さんはまだどしたな、和泉さんの報告書です」

花彩、書状を受け取っては、一気に捲り上げる

「ふむふむ、あの浮かんでいた原型の止めないのは、鞘が二つなんですね、それを回収 刀も見つけようもないとは、やはり折れたのものとすると、武士で縁起でも無いですね」

最上、視線を定め

「お互い三下でも無いのに、折れて捨てるとは、余程のエーテルの発露か」

花彩、食いついては

「テレビだと監視カメラの映像で顔迄判別出来ませでしたが、誰と戦ったんですか あのお姿、どうしても、やはり宮武さんなんですか」

最上、憮然と

「あの太刀筋、加賀さんの弟子、宮武に相違ないかな」

島上、くしゃりと

「そんな強いかあいつ、加賀さんとこの怠け者だろ、分からんもんだな」

天上、毅然と

「伸びるときは、そんなものよ、ただプレッシャーで伸びると、発動の要因がプレッシャーに偏るのが少々難ではあるわね、ケア大丈夫かしら」

島上、思いを馳せる

「でも鞘が浮かんだって事は、二人とも死んだんだろうな、今はむしろそうした方が良いのか」

渕上、釘を刺す様に

「それも問題でしてな、相討ちも畿内約定では掟破り、お得意の有耶無耶にしたいのですが、あの阿呆等の歴史に残る激闘、ここは白黒はっきりさせんと、さすがの順繰りの畿内番の早乙女さんでも、預かっては困り果ててましてな そこですがな、巧みなバランスが崩れる兆候も見られ、畿内の集会で話題になってるようですがな」

島上、前のめりにも

「せめて二人の死体上がればいいのだが、ここ失敗したな どうなんだ、今からでもどこかで身代りの義体調達して、死体浮かびましたの証拠写真を提出出来んのか」

天上、毅然と

「それ、生きていたら、公正証書偽造罪でしょう、もっとも死亡届出してなければぎりぎりセーフではあるけど」

渕上、苦笑しては

「兎に角生死不明が妥当ですな、やはり問題先延ばしにして、誰にも問えない形するのが無難でしょうな」

花彩、不意に

「堂上さん、宮武さん、ちゃんと合いたい人が待っていますよ」


押し黙る一同


最上、口火を切る

「世間の評判は兎に角、上家衆でははっきりさせたいですね 透視系、ローマの全リストにいないのですか」

天上、にべもなく

「それ欠番扱いで、リストから削除されてるわ」

花彩、尚も

「でも、堂上さん宮武さん強いですよ、多分生きてますよ、何としても探しましょうよ」

最上、不意に

「それでも不覚を取ってしまう時はあるのだけど、さすがに死体は上がらないとなると弱気にもなるな」

花彩、最上見据え

「最上さん、ここ、祈る所ですか、違いますよね」

渕上、にべもなく

「まあ生きていたら生きていたらで、関門トンネルの賠償責任問われますがな、この話題ちょいと保留にしておきましょう」


一同溜息のまま


徐に第十会議室部屋に入って来るハウル葉村草上、円卓の上席に着く

葉村学長兼支援部長、円卓の皆を見渡しては

「さあ、皆さん始めますよ」

草上、微笑

「改めて集まると、和むね」

ハウル、くすりと

「さて、上家衆全員招集の筈ですが、人が足りませんね」

渕上、熱り立っては

「ハウル、入って来て早々、それですか、何ですの、言いたい事仰山有りますから、心整えておくよって」

天上、制しては

「渕上も、ハウルはハウルで事情があるのよ」

ハウル、微笑

「さすが、天上ね」

渕上、尚も

「ええどすな、ハウルも、庇う天上さんも、存分にお相手しますで、」


緊迫する円卓の席


葉村、制する様に

「こほん、階上さんは日本で独自活動に付き欠席、楠上さん万上さんは今もナイジェリアで立て込んでいるので欠席です、米上さんは私事で長期欠席、堂上さんは申告で抹籍したものの堂上家から新たな名代が出ませんので当分席は空いたままです」

最上、思いも深く

「堂上さんの抹籍、潔いな、死んじゃう覚悟か」

天上、最上を見据え

「最上は真似しちゃ駄目よ」

花彩、不意に

「あの、私迄呼ばれて何の会議ですか」

天上、吐息ばかり

「おおよそ察しは付くわ」

渕上、凛と

「私一人の推挙ではないですからね、宗家と肝胆相照らしての事ですよって」

ハウル、溜息深く

「何がもつれて、この会議なのでしょうね 今の最強たる上家衆に果たして必要なのかしら」

渕上、怒りも露わに

「ハウル、その前に白黒つけましょうか、あの調書何ですの、送られて来るのが遅いと思ったら、ヒースローオールターミナルズ駅からのナイジェリアまでの付け足しの顛末、あなたは何がしたのですか、撒き餌ですか、私らは、」

ハウル、凛と

「渕上良いかしら、エバに関しては従来通り皆慎重に対処していた筈よ エバの率いていた国連特殊降下部隊の専横は、ローマ参画政府が何度も弾劾していたものの、紛争地に付き証拠不十分で国連内部でもお咎め無しの裁断 これを何時迄も許していては国境紛争地域が更に広がる筈よね」

天上、諭す様に

「ドミネーターに関しては、案件事前調査の段階でエバの名前も薄らと出ていたものの、証拠が無いから泳がすしかないでしょう 渕上、ここ聞き分けられるでしょう」

渕上、憤慨しては

「それがユーロ班の南米全域派遣ですか、言わば陽動ですか、成功して宜しかったですな、」

ハウル、毅然と

「国連を黙らすにはこれしか無いのよ、如何なる国も組織も搾取は罪よ、尚更世界を威力で統制するなんて理想からかけ離れているわ」

渕上、尚も

「そんなら何故、ドミネーター騒動で、今も国連の名前を出さんとです、さっさと国連を解散させたら宜しいですがな」

島上、窘める様に

「もう止めとけ、渕上、ハウルの詰めは3手上だ」

ハウル、微笑

「そんな渕上に朗報よ、国連の武闘派の大老達追い出したら、サンクトペテルブルク公国とベネルスクのスタッフで埋まったわ、お目出度いでしょう、これで国連を解散させる意味は無いわね」

渕上、怒り心頭に

「こことぞばかりに何ですの、国連を刷新させる為に、堂上さん、米上さん、美久里さん、あと宮武を、傷つける道理は何処にも有りませんで、」

天上、諭す様に

「国連だけじゃないわ、第三帝国も滅亡させたのよ、私達は精一杯やったわ、ここは言い難いけど止む得ない事もあるの」

渕上、うっすら涙も

「だからと言って、皆が引き裂かれるなんて、そんな切ない事有りますか、大人の事情を押し付けて迄、皆が胸の内に秘めるなんて、それを愛なんて呼べますの、切な過ぎて胸が張り裂けてしまいそうですわ」

ハウル、丁寧に繰り出す

「渕上、人間が試練を作り出す事なんておこがましいです、これは御心のままです」丹念に十字を切る

草上、透かさず

「ハウルは、こう見えて敬虔だよ、ちゃんと胸を痛めている」

渕上、ついに堰を切る

「何ですの、宗家、御心出されたら、信じざるえないでしょう、何ですの、それでも胸の痛みが消えませんよ」

ハウル、渕上を見据え

「『あなたの向こうで』何度も見たわ、彼等彼女等は神にしっかり導かれ、自ずと道開き、きっと集うわ、私には分かるの、ねえ渕上信じて貰える」

渕上、尚も

「ハウル、頭が切れ過ぎると、御都合主義が通りますな ああ、何て言えばいいのでっしゃろ、ここは、」涙が止めどなく

草上、くしゃりと

「渕上も、それを言いたいんだろ、神はちゃんと導くさ、」丹念の十字を切る

続く一同も十字を丹念に切る


逡巡する一同から切り出す葉村、バインダーの資料を捲っては

「さて、今回集まって頂いたのは溝端追放でも、第三帝国滅亡でも、国連粛正等の労いではありません」

草上、嬉々と

「本当に倒したのかい、あいつ、溝端を、凄いね」

渕上、目頭の涙をハンカチの縁で掬い

「宗家も他人事ですね、私が仕留めました、ちょっとは褒めてくれないんですか」

島上、飛び出す勢いで

「おいおい、米上がブチギレて追い込んだのがごっそり抜けてるぞ」

渕上、凛としては

「そこはいないから、今はよろしいです、」

ハウル、くすりと

「そうね、渕上がいなかったら、溝端五体満足で結界から出れなかったでしょうね、生きて証言させる為にも、よく頑張ったわ」

渕上、ぶすっとしては

「ハウルは、もっと褒めんと帳尻合いませんで」

ハウル、微笑

「大丈夫、穴埋めは新たな役職で補うわよ」

渕上、口を尖らしては

「乗せられてますな、」

天上、感慨深く

「溝端ね、とうとう倒したのね、階上に留守番させて応援に行く迄もなかったのは本当に幸いだわ」

最上、思い描いては

「俺なら勝てたかな」

花彩、毅然と

「どうでしょうか最上さん 溝端さんには、飛び道具しか有効ではありませんでしたよ、それにあんな狭い中庭で刀を振り回しては同士討ちが必須です 今回生還出来たのは米上さんの奮迅と渕上さんの大技あればこそです」

渕上、身震いしては

「まあそれもこれも、米上さんの繰り出すナイフが当たらないのが驚異ですな、恐ろしい使い手になりましたよって、ああ怖いですな」

島上、逡巡しては

「そこなんだよな、総掛かりも考えものなのか 前回はブルックリンを所構わず瞬間転移されては、先代達が追い詰めたものの、最後は溝端が怒り狂って原子崩壊で街が吹っ飛んだからな、所謂惨敗だったよな」

草上、改め

「いやいや、今でも武士は最強ですよ、敬意は払いますよ 倣っては最上でも行けるとこまで行けるんじゃないかな」

天上、草上をぴしゃり

「若者に甘いのは、如何ですよ宗家」

最上、思い描いては

「柔軟な斬撃か、確かに課題ですね」

渕上、ぶすっと

「宗家、誰それ最強って、もう、私は褒めてくれないんですか」

草上、頬笑む

「頑張ったね渕上、これからも頼むよ」

渕上、ピシャリと

「おおきに、無茶な派遣させたハウルは褒めんでよろしいです」

ハウル、嘆息

「全く、すっかり悪者よね」


葉村、一同見渡し

「それでは本題に入りましょう チリ州で多大な業務支援を行い、ドミネーターの設計図奪還、第三帝国の滅亡、ヒトラーの逮捕等に貢献した、松本花彩さんの処遇ですが、上家衆預かりとし一字拝領と致します 上家衆ゆかり以外から約200年ぶり選出となりますが、将来性を考えますと見事期待に応えうると思います、ここで異論が有りましたら手を上げて意見を述べて頂けますか」


ただ言葉を手繰ろうとする一同


葉村毅然と

「全会一致である必要では有りません、最後は宗家の裁量となります」

静まる一同からゆっくり手を上げる、島上

「いや、限りなく賛成だが、花彩はまだ若くないか」

天上、釈然と

「あら、それを言ったら私は高校生の時に上家衆に呼ばれたわよ」

島上、憮然と

「ここで、嘘発見機は良いんだよ」

天上、毅然と

「何それ、侮辱よ まあ、無理に盛り上げなくて良いから、島上さんは賛成しなさいよ」

渕上、頻りに頷く

「花彩さん、かれこれ5度の招集で実績は十二分、今更ですな」

島上、尚も

「だがな、学生には学生の輝ける時期があってな、それ見逃すと後々後悔するぞ」

天上、理路整然と

「島上さんの大言壮語も一理あるけど、私の経験上踏まえ、過保護では人は育たないわよ 島上さん、もう一端のおじいさんなのかしら」

島上、舌打ちしては

「天上よ、毎度毎度、その正論を押し通すのをどうかと言ってるんだ、聞けよ、俺の話も」

天上、凛と

「正論を何言って悪いのよ」

島上、悩まし気に

「つくづく天上も米上も相性悪いな、渕上は何で別なんだよ」

渕上、微笑

「それこそ、私は人間形成が出来てるからですな」

最上、不意に

「島上さん、天上さんと会話しようとするから拗れるんですよ」

天上、拳を握っては

「最上も、」

渕上、くすりと

「最上さん、大人ですな、きっと良いお友達になれますわ」

天上、歯噛みしては

「もう、早く組み替えしないかしら ああでも最上は放っておけないわ」

葉村、ただ呆れ果てては 

「これ以上は平行線ですね 宗家、ここはご判断を」

草上、容易くも

「いいんじゃない、花彩さん、これだけ愛されているなら、ようこそだよ」

葉村、手をはたと止めては

「字は如何しましょう」

草上、立ち上がっては巻物を広げる

「はい、これ 命名【閃上花彩】、皆震え上がるかな」

渕上、感嘆しては

「ほー閃上さん、すらっと言えますね、ええどすね、呪詛もするりと流せますな」

島上、くしゃりと

「宗家が決めたなら、仕方ないな」

天上、語気も荒く

「最後はこうなるのだから、島上さんも確と受けなさい」

島上、尚も

「天上、何事も話し合いは必要だろ」

渕上、嬉々と

「所属はどこですの」

草上、葉村に視線を送る

「所属ね、」

葉村、事も無げに

「ユーロ班の所属です」

天上、荒ぶるも

「葉村、ゆくゆくの話が違うでしょう」

最上、見据えては

「そうです、そこは俺達が花彩を見つけたんですから、卒業を持ってアジア班ではないのですか」

渕上、やんわりと

「ふふん、何をおっしゃいますの、天上さん最上さん 島上さんの言う通り学生の領分も守れますし、私らも散々もてなしているのですから、元は取らせて頂きますよって」

天上、毅然と

「ちょっと渕上、根回しは卑怯よ」

葉村、淡々と

「いいえ、過去天上さんからの威圧は有りましたが、渕上さんからの根回しは受けていません 戦闘能力がほぼ無い花彩さんは、現段階で安定地域の欧州所属は妥当です、混沌のアジア地域、野放しの全米地域、揺れ動くアフリカ地域にはとても送れません 何より卒業迄ラテラノ大学に在席して頂きませんと親御さんに申し分が立ちません」

ハウル、優しいまなざしで

「概ね良好ね、ここで閃上さんを何で上家衆に受け入れるか否かは受け付けません 何より閃上さんの動体視力は群を抜いています、筆舌に尽くしがたいです、論じるまでも有りません 是非共ローマ参画政府の為にご尽力頂きたいわ」

花彩、不安顔で

「そんな凄い能力ですかね」

島上、溜息混じりに

「花彩も散々活躍しただろう、まだ自覚ないのもどうかだぞ」

花彩、思案顔も深く

「まあ、他の方よりよりちょっと凄いみたいですけど」

島上、悩まし気に

「花彩、だからな、俺から散々パンダのぬいぐるみ巻き上げておいて、それは無いだろう」

渕上、苦笑しては

「あらまあ、島上さん、正式な対価どすよ」

天上、ついに立ち上がり

「ちょっと、宗家、一言よろしいかしら、花彩さんの所属にまつわる緊急提議を是非受けて頂きたいわ」

草上、ただやんわりと

「まあまあ天上、ご立腹ごもっとも だけど緊急提議は却下、また組み替えあるし良いでしょう、決して悪い様にはしないよ、」


一同怯む

「うっつ、」


天上、椅子にへたり込む

「本当、あの娘は無茶よ」

葉村、溜息混じりに

「はい、楠上さんの話題になると尽きませんので、ここで閉会させて頂きます」バインダーを勢い良く閉じる


草上、不意に

「その前に最後の質問だよ、閃上、君は何の為に戦うんだい」

花彩、悩まし気に

「強いていうなら、飢餓貧困我欲 でも己の中の死と戦いですね、それでは何故生きなくちゃいけないのかな」

渕上、従容と

「振れ方が極端ですな」

天上、頬笑む

「花彩さんが生きてるだけで、最低12人は嬉しいのよ」

島上、捲し立てては

「もっといるだろう、上家衆だけで一杯になるぞ」

草上、微笑

「ほら、見かねて助けてくれたよ、根は優しいんだよ皆」

花彩、凛と

「成る程、生きねばですね」

草上、尚も

「自分の言葉で言ってごらん」

花彩、立ち上がり

「はい、私の手で誰かが救えるなら、進んで戦いもしましょう」

草上、花彩を見据え

「戦いは好きかい」

花彩、困り顔で

「ここだけの話、どちらかと言うと苦手ですね」

草上、諭す様に

「いいかい、死んじゃいけないよ」

ハウル、溜息混じりに

「何か見えるんですか、宗家、」

草上、頭を掻いては

「どうかな、また大洪水来たら、それこそ皆死んじゃうしね」

葉村、話を打っ手切る様に

「草上さんは例え話が長いですから、程々に」

草上、尚も

「エデン計画、何時になったら全貌が明らかになるんだい」

ハウル、逡巡しては

「パーツを求めている様ですが、所詮は虚空ですよ」

最上、毅然と

「ブレインアーキテクツは確かに斬りました、手応えは確かです」

天上、続けざまに

「欠片は聖堂に鎮めてます」

草上、微動だにせず

「やっとあれをか、いやご苦労だったね」

渕上、感嘆しては

「エデン計画、ほー壮大ですな」

堪らず机を小突く、天上

「うっかりガフの部屋に入られたら堪らないのよ」

葉村、黒塗りだらけのバインダーの箇所を捲り

「そこはご心配無く、他のパーツは殆ど回収しています」

ハウル、思いも深く

「そうね、忙しい人ばかりで進んでいないかと思ってましたが結構です 宜しいですか一つでも悪用されたら大変ですよ、ここ肝に命じておきましょうね」

花彩、不思議顔で

「あの、エデン計画って、神話ですか」

ハウル、ただ頬笑んでは

「成就すれば神話かしらね そう、ローマ参画政府のお役目は多岐に渡ります、期待していますよ、閃上さん」

花彩、忽ち破顔

「はい」

草上、歯がゆくも

「エデン計画は自分の管理ではないかな、私では不満かい、ハウル」

ハウル、困惑がちに

「禄にローマの家に帰って来ないのに、それは不満も貯まります 今回の麦秋の大連衛星国際空港の様に手伝って貰った方が捗りますよ、これを機に単独行動を控えて頂きますか」

天上、ぴしゃりと

「ハウル首相、全てはお役目ですよ、個人的な見解はよろしくてよ」

渕上、目を細めては

「ここでえらい仲良しさん通すとは、和みますな、ハウル」

ハウル、微笑

「渕上も毒突くのかしら、さっさと身を固めなさい」

渕上、憮然と

「それがですな旦那候補さん達は、皆忙しいんですよ、ハウルと一緒とは、やっと気が合いますな」

ハウル、くすり

「独り身だと、口が立ち過ぎるわよ、渕上」

渕上、尚も

「これは失礼しました、ハウル、ただ言葉も少ないのは問題ある違います」

ハウル、まなじりを下げ

「首相って、そんなものよ」

渕上、苦笑混じりに

「それは、えらくお気楽ですな」

ハウル、苦笑混じりに

「見た目はね」

草上、そっと制する

「二人ともそこまで、渕上も結婚するなら、暇な方とをお勧めするよ」

渕上、前に乗り出しては

「さすが宗家、同意見ですな、仲よういきたいですからね どこぞにええ方いらっしゃいますか」

葉村、くすりと

「渕上さんのおかんから、中年は却下するようにと言い含められていますので、然りげなく私から都度お断り申し上げています」

渕上、くしゃりと

「お断りですか、あれ…、ちょっと待つどす、灰屋さんって、それも、」見る見る顔が変わる

葉村、見据えたまま

「ええ、灰屋さんは、あの齢で人口受精プログラムに参加されていませんので、それとなく言っておきました」

渕上、苛ついては

「はああああ、おかん生々しいですわ、灰屋さんも赤まむし飲ませたら、きっとギンギンでっせ」拳を固める

天上、くすりと

「昼間から下ネタは、よくないわ」

ハウル、興味津々に

「渕上、それでもおめでたいわね でもね灰屋さんにそっぽ向かれているんでしょう、今度内々で会食しましょう、そうしましょう」破顔

渕上、乗り出しては

「ハウルも、ええ事いいますな、早めにお願いしますで」

草上、ふわりと

「さっきまで、泣いていたのに元気だね」

渕上、偉丈夫にも

「ええ、恋愛で女は咲き乱れますで、早々に女っぷり上がった私を見れる事を約束しますよって、ほほ、」ただ高笑い

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