第15話 2087年9月20日 全米連邦 チリ州 サンティアゴ市 貧民街

敢えて袋小路に入り込む美久里阿南北浜 狭い路地を次々抜けるも、

追随してはどんどん増えて来るコヨーテ紛い、ついに10体


美久里、先頭で歩みを速めては

「来ますね」

北浜、美久里を庇う様に

「やっぱり、俺達かよ」

阿南、最後尾でじりりと

「ああ、最後の観光案内所がまずかったか、旅行者の振りしたら、見抜かれましたね」

美久里、次々路地を抜ける

「そこは、織り込み済みです」

阿南、振り返っては

「しかし、唸りもせず、飼いならされてるな」

北浜、声を荒げ

「こんな都市部にコヨーテがいるか、本物じゃない、セキュリティーマシーンだ」

美久里、整然と

「静音駆動なんて、良く出来たお人形さん並に高そうですね」

阿南、後ろを振り返っては

「間合い詰められてます、走りましょう、」

美久里阿南北浜脱兎の如く駆ける


狭い路地を躊躇無く駆け抜けるコヨーテセキュリティーマシーン、のべつ幕無しに障害物に噛みついては砕く、ブロック、鉄柵、車、お構いなしに引きちぎる

一同一斉に電磁銃握り、振り向き様に放つも、コヨーテセキュリティーマシーンの簡易装甲に弾き返される

北浜、歯噛みしては

「電磁銃利かないのか」

阿南、舌打ち

「ちっつ、小さいがアンチシールド張ってる」

美久里、尚も速度を上げる

「この数、応戦するだけ無駄です、やはり逃げましょう」


いよいよ、貧民街の裏通りの高い壁に追い込まれる一同

美久里、目を見開き

「行き止まり、」

阿南、敢然に

「北浜行くぞ!」

北浜、阿南と息を合わせ

「おう、」

阿南北浜、ショルダータックルでブロック塀を突き破り、一同尚も走る


必死に走る美久里阿南北浜を尻目に、コヨーテセキュリティーマシーンが次々合流し50体へ

美久里、息が深くなる

「阿南さん、立て篭りましょう」

阿南、S&W:M&Pエレクトロを構えては牽制発砲

「駄目です、こいつらの顎半端じゃないです、倒さないと入って来ます」

リーダー格のコヨーテセキュリティーマシーンが飛び上がる

阿南、透かさず背後に手を伸ばし腰のサバイバルナイフを抜く 飛び上がるコヨーテセキュリティーマシーンの喉笛寸分違わずを切り上げ、顎が外れる アイセンサーにはシステムエラーの記号が漫然と

「有効だが、駄目だ、この数倒し切れん」

北浜、ワルサーP99エレクトロの残量確認僅かも

「駄目だ予備のバッテリーあと一つだ、こんな数倒せん」

美久里、S&WM49エレクトロの残量確認僅か、困り顔で

「すいません、こんな展開なんて、予備のバッテリー、プラザコーストに置いて来ました、」

阿南、ジリリと

「こっちはもう予備だ、サバイバルナイフで応戦する」


貧民街の通りの奥から、日本人の男と女

カジュアルジャケットの男、飄々と

「騒がしいね、どうしたの、」

不意に男が音も無く、コヨーテセキュリティーマシーン群に滑り込みが波紋が打たれる、一手二手三手四手見える筈も無く、瞬く間に真っ二つ及び切り刻まれて行くコヨーテセキュリティーマシーン群

カジュアルジャケットの男、振り返り

「たく、度胸座るのもどうかだ、逃げてるなら悲鳴上げろよ、結構探しまわったぜ」

ロングスカートの女、腕組みしては余裕の笑み

「いいから、早く倒しちゃいなさいよ、こんな小競り合いに発展するなら、島上さん達に合流しないと」

美久里、切に一礼

「はー、助かりました」

男、コヨーテセキュリティーマシーンをキリッと見つめては

「実はそうでもないんだよね」

女、うんざりと

「高そうなセキュリティーマシーンなのに使い捨てなのね」

男、従容と

「さて絡み過ぎて、囲まれるかな」

女、ポケットから合金スローナイフホルダー展開しては、腰に当てる

「さてね、どうしようかしら」

沈黙を守るコヨーテセキュリティーマシーン群のアイセンサーのイジケーターが高速回転、何かを待つ様相


貧民街の路地と言う路地から、瞬く間にコヨーテセキュリティーマシーンが集結展開してくる、その数100体

男、憮然と

「後続のセキュリティーマシーンも投入か、やる気だね、って誰に追われてるの」

阿南、サバイバルナイフ構えたまま

「第三帝国だ」

男、事も無げに

「ふーん、第三帝国も張り切るね、本当に戦っていい相手なの」

女、手持ち無沙汰に合金スローナイフを、ホルダーに付いた強力砥石に撫でては切れ味を上げる

「シオン福音国が出て来るならこれなのね 大丈夫、全世界から第三帝国嫌われてるわ、存分に行きましょう」

美久里、不意に安堵の顔に戻り

「そちらも追ってるんですか、私一橋美久里と申します」

男、視線そのままで

「ああ俺たちは行きがかりね、俺堂上、隣りは上さんの米上」

北浜、意気揚揚と

「おお、上家衆の全米班か、ついてるな」

阿南、視線も遠く

「成る程、渕上嬢、九曜は確かに当たる」

米上、思い倦ねては

「何かよく分からないけど、ここは逃げるしかないでしょう、こんなに集めてどうするの」

堂上、くしゃりと

「そうだその顔知ってるよ、お前阿南だろ、これ位凌げるでしょう」

阿南、苦い顔で

「おいおい、この数、尋常じゃないだろ、構えてろ」


一斉にコヨーテセキュリティーマシーンから警報音、顎がこれでもかと大きく開く

阿南、歯噛みしては

「電磁砲も装備とはセキュリティーマシーン法逸脱してるぞ、ふざけるな」

堂上、喝を入れ

「これくらい凌げる、臆するな」

米上、自分の背に美久里を寄せる

「隠れてなさい、うっかり痣でも残ったら、取り除くのに時間かかるわよ」

美久里、趨勢を伺う

「はい、」


顎が大きく開いたままのコヨーテセキュリティーマシーンの群れから割って入って来る男

「へー意外と使えるね、これ本物のコヨーテより強そうじゃない ねえ噛み砕かれそうだよね、それより今は発射準備中だよね ねえ、申し開きあるなら聞くよ」

美久里、目が見開く

「あれは…宮武さん、」美久里の鼓動が早くなる「えっつ」頬が赤らむ

宮武、頬笑んでは

「ああ、そこのお姉さんは、どこかで見たね」

阿南、進み出ては

「ああ、谷地ビュッフェにで会ったぞ、貴様は第三帝国絡みで出て来たか」

北浜、威嚇しては

「日本人だよな、やはりその尾、武士なら、何故第三帝国に付く」

宮武、漫然と

「まあ止む得ずってね 細かい事は良いから、チリ州出ちゃって下さいよ、詳しい経緯はよく分からないけど目障りだから、こんなに出て来たんでしょう」コヨーテセキュリティーマシーンを一瞥

堂上、進み出る

「宮武と言ったな、俺が相手になる」

宮武、瓢げては

「ねえ、その刀持って出て来てどうするの、試合しちゃうの、尾が無いけど、本当に武士なの」

堂上、柄に手を乗せる

「俺の名は堂上、尾は訳有りだ、手を抜けよ、宮武」

宮武、柔らかく柄に手を掛ける

「あの堂上さんか、もちろん手を抜きませんよ ああ、名前覚えられてるなんて光栄ですよ、」

米上、声を枯らす様に

「それ止めなさい、その抜刀なら畿内でしょう、敵味方も畿内同士の果たし合いは現在禁止よ」

堂上、意に介さず

「気にするな試合だ」

宮武、不意に口角が戻る

「そう試合だよ」


貧民街の狭い路地裏 張りつめる空気、共に

「参る」


堂上と宮武共に一閃、一気に展開抜刀剣圧でコヨーテセキュリティーマシーンがドミノの様にあえなく倒れては勢い余って咆哮、電磁砲が飛び散っては集団帯電、軒並みコヨーテセキュリティーマシーンの電子回路がショート、剣圧と相まって貧民街のガラスとレンガが粉々になる

堂上、宮武とたばねを合わせたまま

「この手合い、凌ぐか」

宮武、ジリリと

「これでも抑えた方ですよ、抜刀したとあっては街の噂はそう簡単に消せないですからね」

堂上、吠えては右に抜けようとするも

「ならいい、手を引け、」

宮武追随、尚もたばねを合わせたまま

「引いたとあっては、かなり怒られますよ、無理、」

天上、吠えては合金スローナイフを強く握る

「ちょっと試合じゃないの!抑えなさい」

美久里、瞠目しては

「武士の試合ってこれなんですか」

米上、尚も声を荒げる

「二人共本気よ いい、この場は引くから止めなさい!」

堂上、尚も余裕で

「俺は引かないからな」

宮武、微かに押されるも、構えは怠らず

「とことん付き合いますよ」

美久里、躊躇せず脇に飛び出す

「ここまでとは厄介ですね、でも、」意を決して右手のS&WM49エレクトロ構え、続けざまに発砲

米上、立ち竦んだまま、尚も合金スローナイフを身構える

「ちょっと、武士に電磁弾効かないの、知ってるでしょう、止めなさい」

宮武、3歩下がり美久里の全弾丁寧に受けては弾き飛ばす

「お姉さん、邪魔、」

堂上、構えたまま、宮武を見据える

「もう撃つな、」

美久里、声を上げる

「堂上さん、今です」

一瞬の間合いに飛び込む宮武、すでに美久里の前

美久里、動けず

「早い、」

宮武、美久里の拳銃を持った右手を掴む

「お姉さん、本当可愛いよね」

美久里、表情変えず

「ここは、私の間合いです、」思いっきり宮武の額に頭突き、“ゴン”

宮武、思わず仰け反る

「ぐー」

堂上、苦笑

「やるな」

米上、堂上に必死に手招きしては

「やるなじゃないでしょう、こっちに来て袈裟斬りでしょう、」

北浜、刮目

「こりゃ瓦5枚いけるな」

阿南、ガッツポーズも

「確かにプロフィールに合気道は載ってたが、美久里さんやるな」

宮武、頭を抱えては

「すげーまだ星が見える」

堂上、呆れ果てる

「もういいや、気が失せた、」刀を仕舞う

美久里、はっとしては

「いけない!つい本気で、武士さんでは頭迄鍛えてませんよね、宮武さん大丈夫ですか」宮武の額を必死に撫でる

宮武、美久里に寄りかかる

「いや、もう駄目かも」

堂上、舌打ちしては

「宮武、離れろ、」

米上、合金スローナイフを逆手に構えては

「お兄さん、下衆な事したら、喉搔き切るわよ」

美久里、取り繕う様に

「いえいえ皆さん、先は長いんです、ここは穏便に行きましょう、ね」

宮武、美久里の肩を確と抱き寄せる

「そうそう」

美久里、顔を赤らんでは

「ですから、あのーー近いですよ」

阿南、烈火の如く

「貴様引っ込め、美久里さん、男に免疫無いんだぞ」

堂上、再度柄に手を掛ける

「宮武、今日は帰れ、決着は何れだ」

宮武、去り際に美久里の手を確と握り

「それじゃ、また、美久里さん」踵を返し、幹線の通りすがりの農作業トラックの荷台に飛び移る

美久里、嬉々と

「ふふ、やはり良い感じのお方ですね」

阿南、窘める様に

「銀行員で、惚れっぽいのは如何ですかね」

北浜、自虐ぽく

「美久里さんは、普通の恋愛出来ませんよ、って俺が言うかね」

美久里、まじまじと

「構いません、内緒にすれば良い事です」

米上、美久里に近付いては身なりを確認

「お姉さんもそうだけど、何か訳有りね それより武士はこれだから、全く、また暴れましたって報告書に簡単に書けないでしょう」

堂上、苦笑混じりに

「武士はモテて当たり前だ、そこから入らないと、警戒するでしょう」

米上、目を細めては

「そこも何かね、結構気苦労するのよね」

美久里、嬉々と

「ふむふむ、武士のお嫁さんも大変そうですね 米上のお話聞きたいですよ ああ申し遅れました私一橋美久里と申します」鞄の名刺ホルダー取り出し、慇懃に堂上と米上に名刺を差し出す

米上、一際目を輝かせては

「これも何かの縁ね、それはディナーにでもお話ししましょう、もう、のろけ話言いたくて堪らないのよ、ね、皆さんご予定は」

阿南、うんざり気味に

「またも上家衆か、もう渕上さんから誘われてる 美久里さんこちらは近いうち別の席にしましょう」

北浜、感慨深く

「上家衆に同時に誘われるなんて、どうかしてるぜ」

美久里、閃いては

「いえいえ、それならプラザコーストで一緒にディナーをしましょう そうだ、いっその事プラザコーストに移って来ませんか、堂上さん米上さん」

堂上、事も無げに

「ああ、プラザコーストならいるよ」

米上、思い描いては

「多分あれよ、ビジネス階とスイート階のセキュリティが別なんでしょう、会った事無いもの」

美久里、嬉々と

「ふふ、全米のイーストビジョンの経費が出るのとプラザコーストのタイアップで最上階です」

米上、意外そうに

「そう、お互い最上階で会った事も無いなんて、皆忙しいのね」

堂上、まじまじと美久里の名刺を見ては

「でも、一橋美久里さん、どこかで見た様な」

美久里、身を固めては

「私はニューヨークのしがない銀行員です、絶対窓口ではないでしょうか」

堂上、得心しては

「ニューヨークはまだ3回位だし、何だろう緊急融資でお願いした事あるのかな、でもなフォーマルの格好だった記憶もあるし、まあいいか」

美久里、強ばりながらも微笑

「きっと、それですよ、緊急融資ですよ、いやー覚えて無くてすいません それより、ね、今から米上さんののろけ話が楽しみですよ、ね」

米上、もじもじしては

「もう、皆の前でのろけ話なんて、凄い照れるわ、でも言いたかったのよ、もー」

堂上、首を傾げては

「いや、ニューヨークのかなり上の会合だったような、まあいいや」

美久里、たじろいでは

「はは、ふいー」深い溜息


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